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日記:3月26日 ロックダウンと議会の対策

東京はこれからロックダウンに入るのだと、公然と囁かれている。同時に、そのロックダウンは、来週末まで始まらない、と聞く。

なぜ、今すぐやらないのか。なぜ、政府やトップの決断を待っているのか。

アメリカがロックダウンに入ったとき、議会ではすでにコロナ対策が検討されていた。とはいえ、政府がどんな保証をしてくれるのかはわからなかった。それでもアメリカは、ロックダウンに入った。イタリアの状況を見て、経済を止めないと同じ状況が起きる、とジャッジしたから、みんなとにもかくにも経済活動をやめたのだ。

アメリカの議会は、これまで3度にわたり、コロナ対策法案を通過した。ひとつめは、3月6日に通過した、CDCを始めとするコロナ対策にあたる省庁に緊急予算を与える法案。ふたつめは、ペロシ下院議員とムニューシン財務長官が、普段の違いを乗り越えて立案し、3月14日に通過した法案で、検査を無料にすること、労働者に2週間まで有給で病欠を与えることを義務付けた保証(アメリカ政府が、有給の病欠を義務付けたのは史上初めて)、みっつめは、昨晩(3月25日)深夜に通過した、景気刺激法案で、納税者への現金配布、失業保険を拡大し、その対象をフリーランサーにも広げる措置、企業への貸付や支援が大きな柱になった。議会は、これが最後の対策法案になるとは考えていない。機を見て、さらなる対策を講じるつもりだ。未曾有の危機に、このスピード感でこれだけの法案を通したことは、大いに評価できる。



参考までに書いておくと、トランプ大統領がヨーロッパからの渡航者を制限することを決めたのが、3月11日で、非常事態宣言を出したのは13日だった。非常事態宣言が出て、ふたつめの法案が通った時点で、世の中の空気がガラッと変わった。ニューヨークは、15日に公立学校を閉鎖すること、16日にバーとレストランを閉めることを決めた。つまり、16日以降、アメリカでは、医療・食品・流通といった「エッセンシャルな事業」とリモートワーク以外の経済活動は、行われていないことになる。

私はとはいうと、16日、17日は仕事の予定が入っていた。16日に予定されていた仕事は、3人でできる仕事だった。私が被写体に話を聞き、一人が写真を撮る、というだけの仕事である。お互いから2メートル離れたまま、やることのできる作業である。それども、週末、「やるべきだろうか」と考えた。「全員が、自分が感染者であるという前提で行動しろ」と言われるようになったからだ。それでも、1)接近せずにできる、2)写真を撮る人の仕事を奪いたくない、という理由で、やろうとした。結局、当日の朝、被写体と相談をして、撮影は中止し、インタビューは、電話でやることになった。電話で話をして、彼には、難病指定の持病を抱えていて、「ハイリスク」にあたる息子がいる、ということがわかった。

友の一人は、予定されていた撮影に、真っ先に「オレは行かない」と宣言した。「どんな日給だって、コロナにかかるリスクを背負う価値はない」と。やっぱり彼も持病を抱えている。持病がある、家族が持病を抱えている、老人と同居している、老人とエレベーターを共有している・・・そういう可能性を考えれば、誰だって、コロナにかかったら命を落とすかもしれない人と、近くに暮らしているのだった。

アメリカが、まだグズグズしていた頃、ニューヨーク・タイムスの記者が、コロナウィルスへのアメリカ国民の反応を、AIDSの感染が広がった80年代のアメリカ国民の様子に比べていた。爆発的に感染しているのに、多くの人たちが、どこか遠くの世界のことだと考えていた時代、有名俳優のロック・ハドソンがAIDSにかかったことで、国民は初めてAIDSのことを脅威ととらえた、というエピソードだ。そして、その時期は、思わぬ勢いでやってきた。みんなが知っている有名人や政治家たちが、どんどん感染しているからだ。

予想通り、トランプ大統領は、もうすでにここに来ている不況が選挙の悪材料になることを恐れて、すでに国境を再開したいという意思を示している。自治体の様子を見ていると、そんなことは少なくとも今。考えることすら現実的でないことがわかる。

アメリカが取った方式が正しいのかは、もちろんわからない。けれど、ひとつ言えるのは、経済を救おうとアグレッシブな措置を先送るする間に、コロナウィルスは恐ろしい勢いで感染していたのだ。

ニューヨークの市長は、市民の半分が感染する可能性を警告している。ニューヨークの感染者数が、ピークに達するのに、あと5週間かかると言われている。

みなさん、お願いですから、真剣に受け止めてください。中国から、イタリア、アメリカ、そして世界の各地で、「自分は大丈夫」と思った人たちのおかげで、感染が広がったのだから。出かけないでください。出かけるときは、共有のものに素手で触らないでください。人との距離は開けてください。手はしつこく洗ってください。顔は触らないでください。どうか、自分がキャリアとして、人に渡してしまう可能性があることを知って行動してください。

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