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日記:1月19日〜25日 炎上ウィーク

*7日分の日記をまとめて更新しています。初月は無料です。

1月19日

 自分が2日前に書いたTweetが炎上している。最初の2日間は、「主人って言葉は嫌だけど、じゃあなんていえばいいんだろう?」という和やかなディスカッションのような雰囲気だったので、それをリツイートなどしていたのだが、ある種の人たちにTweetが見つけられてしまい、そこから恐ろしい勢いで攻撃のリプがつくようになった。「押し付けられた!」と怒っている人たちが秒速で登場する。これまで、こうしたリプにもなるべく返事をするようにしてきたけれど、生半可な返事はできないし、この頻度でやってくると、追いつかない。しかも、これに対応していたら、仕事の時間が食われてしまう。とりあえず、それにあてる時間がないので、放置することにした。
 ちょうど、数日前に「Tall Poppy Syndrom」(オーストラリアで、出る杭が打たれる現象をこう呼ぶらしい)の話題が出ていた男友達のTから、「自分はポピーの被害者だと思うか?」という質問がテキストを受け取っていた。現実の世界で、出る杭が打たれるというカルチャーを体験したのは、高校くらいまでだ。コントローリングな環境にいたことはあるが、だいたい「コントロールできるタイプではない」と理解されて、放っておいてもらえるという感じだったのだ。それ以上コントロールしようとしてくる人とは袂を分かつしかない。「現実にはほとんどないよ」と答えたそばから、あ、そういえば自分のTwitterが今炎上しているのだったと思い当たった。
 自分にぶつけられる悪意にげんなりしているときに、インスタを開くと知らないイラストレーターさんが私の似顔絵を描いてくれててアゲ。こういう時、やっぱ神様っている?とか思っちゃう。
 今日は、サガティーズ(ニューヨーク州北部)で行われるバースデー・パーティに、キキちゃんと行こうとしているのだった。キキちゃんが来るのを待っていると「オイルマン」(ヒーターを管理する業者さん)のヴィニーから電話があった。前の晩にヒーターが壊れたときに来てくれたのだが、部品が足りないということになり、今から行くよ、ということだった。「きみんちの大家さんは、お金の使い方が慎重だからね、昨晩の分はチャージしなかったよ」という。うちの大家さんは、商売があまりうまくない。最近はいろんな修復があって、大変らしい。それでも良心的に運営してくれている。感謝である。そこに隣人のハロルドもやってきて、管理人のマーヴの弟が亡くなったということを教えてくれた。これを機会に、月末に引っ越しをするつもりでいるらしい。マーヴは心の友である。1年ほど前から「ブルックリンとオレの関係もそろそろかな」などと言っていたので、驚きはないが、ここ数ヶ月、すれ違い続けていたので、ちょっぴり寂しい気持ちになる。電話しよう。
 キキちゃんが到着して、アップステートに向かう。おにぎりを持ってきてくれた。これからするケータリングの仕事の試作だという。サランラップを使いたくないので、紙で包んでいるが、くっつくかどうかの確認をしたかったのだと。そういえば洋服屋をやっているジュディは最近溶けるプラスチックのような素材を発見したと喜んでいた。みんながそれぞれ小さな努力をしている。
 バースデー・パーティが行われる場所は、ウッドストックの近くだった。夕方からのパーティに行く前に、キングストンやウッドストックに暮らす友達の顔を見に行こうと思っていた。最初の訪問先は、グレースとタイヨンダイの家。何年か前からウッドストックまわりで夏を過ごすようになっていた二人は、最近いよいよこのあたりに家の賃貸リースを結び、本格的に腰を落ち着けた。電話の通じない林の中の家だ。引っ越しをしてから一度も会えていなかった。グレースは、最近は彫刻のインスタレーションをメインに活動しているが、もともとはフォトグラファーで、よく一緒に旅をしたした。選挙の年になると、2008年と2012年の大統領選挙前にアメリカ一周を2度したことを思い出す。その話をしていたら、グレースが「今年も9月くらいに行こうよ」と言い出した。少し前に、私もそのことを考えていた。「殺されたりしてね」とグレースが笑う。今、アメリカはとてもピリピリしている。けれど行ってみたら意外と普通だったりするのだ。ちょっと考えてみよう。
 グレースたちに別れを告げて、別の家を訪ねようと思っていたが、息子が中耳炎で泣いているから今度にしようと連絡があって、そのままスーパーに寄って、けんちゃんとアキちゃんの家に。今日はけんちゃんの誕生日なのだ。事前に「村人と狼」という心理ゲームをやるんだと言われていた。子供たちは、家の中でベビーシッターと過ごし、大人たちは焚き火を囲んで、ゲームをやる。寒さに負けない遊びへの貪欲さが好きだ。みんなの中に隠れている狼を探し当てるゲームである。もちろん外は寒い。楽しむために寒さもいとわない大人たち。途中、クリスマスツリーの樅の木を焚き火に放り込むと、驚くほどドラマチックな炎が立ち上がり、バースデーソングを歌った。
 パーティーを終えて、ききちゃんと車に乗り込み、私の山の家へ。極寒で冷え切った部屋を温めつつ、ウィスキーのお湯割りを呑むことに。途中、キキちゃんにTwitterを見せる。「ひえー、すごいヤカラ感だねえ。でもゆみさん、こういうの、お金でももらえないと割にあわないよ。立ち向かう必要ないよ」。だよね、と返事をして、二人でストレッチ。

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