ニュージーランドの女性首相とヘイト
この旅のなかで、一瞬の日本における外国人体験をした。熊本のホテルにチェックインするときに、英語のブッキングアプリの画面を見せたら「在留許可証かパスポート」と言われたのである。あー、スーツケースの中に入れちゃってるし、国内旅行なのに、パスポートを見せる必要あるんだろうか? 一応「日本人なんですけど」といいながら、代わりになるIDを財布の中に探し、保険証を取り出そうとすると、急に慌てて「お客様!申し訳ございませんでした!大丈夫です!」と言われ、紙に住所と電話番号と記入するだけで終わった。態度の変わりっぷりとか、何か釈然としない。
もうひとつ、この旅の最中に起きたことに、ニュージーランドの銃乱射事件がある。ウェイとJPが、フェイスブック・ライブで配信されたgo-proの実況中継の録画を見てしまい、悄然としていた。自分はそれを見たいかどうかを自問自答し、結局、見ないことにした。ヘイトからは目をそむけまいと思ってきたけれど、わざわざ見る必要のないものもあるのだと考えた。目を背けるべきでないのは、この世の中にこのレベルのヘイトが存在するという事実だ。白人が持つはずのものが、移民によって侵害されていると考える白人男性が武器を取って殺戮行為に及んだ。そこにあるのは歪んだ権利意識である。
ニュージーランドの首相ジャシンダ・アダーンのスピーチに涙した。彼女のヘイトを断固として拒否する姿勢、標的になったイスラム教徒コミュニティとの寄り添い方に惚れ惚れした。最近、母親にもなった38歳のこの聡明な女性を、首相に選ぶ国が、この地球上に存在するということに勇気を得た。
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