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日記:2月9日〜13日 京都・淡路島・東京・釧路・阿寒

*日記を、7日間ずつ更新しています。初月は無料です。

2月9日

 京都Hotel Nodeのイベントの主催者であるゆうくん(中村優)に「翌日は空けておいてください、大人の観光案内します」と言われていて、夜の街でも案内されるのかと思ったら、集合時間はなんと午前10時。前の晩、深夜まで遊びに付き合ってくれたゆうくんとよしえちゃん(北村淑恵)の二人が、すっきりした顔で迎えにきた。元気だなあ。
 最初に案内してもらったのは、即成院。平野雅章さんという住職さんが案内してくれた。即成院は、現世も極楽浄土であるという考え方だという。新年に喉を使いすぎて、とおっしゃるので、どんなお経を読まれるのかと思ったら、オペラか、というほどの迫力とボリュームの美声で、聞いているだけで、トランス状態に入りそうになった。
 その後、泉湧寺で、天皇家が使っていたという内側をご案内いただき、その後、八坂神社に。八坂神社は、伊藤博文の時代に、寺から神社になることを決めたという。内部を案内してもらったら、寺だった時代の名残がそこここに残っている。そういえば、前夜、山本奈央先生が、二礼二拝一礼も「伝統」だと思っている人が多いけれど、それだって伊藤博文が決めたから導入されたのだ、という話をしてくれた。「伝統」というものは、想像以上にふわっとしている。ずっとそういうものなのだ、と思っていても、意外と最近のことだったりするようなことがある。自分は子供の頃、神社やお寺でちゃんとできない子供で、よく怒られていたため、いまだにこういう場所に入るとちょっと緊張するのだが、あれはなんだったのだろうか。


 よしえさんが、神主さんに「麻のことを書いている人を連れていく」と話してくれていたようで、八坂神社で神具に使われているという麻を見せてもらう。やはり、神社でも国産の麻を入手するのは難しくなっているという。


 大人の京都案内を経て、絶品のキュウリサンドを食べ、その後、左京区の下條ユリちゃんの家に。ユリちゃんが何年もかけて改装した山の上の古民家。ユリちゃんは、ホホホ座の階上で荷物の整理をしているということだったけれど、何度か泊まったことがあるので、カギのありかもわかっている。ちょうど、夕暮れ時の良い陽が入っていて幸せな気持ちになった。
 友の家に上がり込み、夕日を眺めながら軽く昼寝などをして、コーヒーをゲットし、ホホホ座の上に最近オープンしたリソグラフの印刷所hand saw pressで、永岡裕介さんと待ち合わせ。ポパイがリニューアルする前に1年ほど続いた連載「Good to see you」でイラストを描いていてくれて、今回、私が京都にいることを知って連絡をくれたので、ぜひ会おう!ということになったのだった。
 hand saw pressの話は、TransitやAtlantisの編集長を務めた加藤直徳くんから聞いていた。行くと、小田さんが、美味しいコーヒーを淹れてくれた。聞くと、ずっと行きたいと思って、グーグルマップに印をつけていた東京のヴィーガンレストラン<なぎ食堂>のオーナーでもあった。小田さんは、最近、東京の家を畳んで京都に戻ってきたのだという。小田さんは、リソグラフの印刷機を車に積んで、本屋をまわることを考えている。そういえば、私も今年は、夏に日本の本屋をまわる日本一周旅行をしたいと思っていたが、オリンピックやら個人的な財政難で難しいかな、などと思っていた。いいなあ。やっぱりがんばってやってみようかな。
 リソの印刷所に置いてある素敵な印刷物を見ていると、自分も手書きでなにか作りたいなとか、絵を描きたいななどと思い始めてくるから不思議である。ちなみに、字は汚くて有名だし、絵も下手くそなのだが。
 永岡さんに、台湾のことを根掘り葉掘り聞いた。去年、香港に行き、中国政府が香港の民主化運動を制圧したら、次は台湾がターゲットになるのではないかとクリエイティブ・コミュニティが怯えている、そんな話を聞いたので、台湾と香港のジンを作りたいと2月末に行く予定にしているのだ。香港の民主化運動を見て、台湾も刺激を受け、それが最近の選挙に反映された。香港の一連の民主化運動が起きる前は、台湾にも一種の無関心や諦めムードが広がっていたけれど、香港の刺激を受けたようだ。一方で、台湾の人たちの、中国大陸蔑視には目にあまるものがある、と永岡さんが教えてくれた。市民と政府が一緒くたになることもよくあるし、敵の敵が味方になるというのもよくある話ではある。実際、日本でも、ネトウヨたちが香港を応援していたりもする。話を聞いていて複雑な気持ちになった。


 夜は、ホホホ座でユリちゃんとトークをすることになっていた。しばらく左京区に住んでいたユリちゃんは、2年ほど前にニューヨークに帰ってきたが、それでも京都の家は維持していて、随分前から、「同じときに京都にいたらトークをしよう」と決めていたのだ。掃除を終えたユリッペと、ホホホ座に降りていく。
 そこには山下さんがいた。ホホホ座が、なんというか、本の聖地のような場所だということは、物を書く人の多くがわかっていると思うけれど、そのホホホ座をやってきたのは山下さんと松本さんで、松本さんとは何度かおしゃべりしたことがあるけれど、どういうわけか、これまでいつも訪ねるたびに山下さんは不在だった。「山下くんはしゃべらない」のインパクトが強すぎて、用事があるわけでもないのにアポを取ることに躊躇していたのだった。想像してたより、ずっとニコニコした人だった。


 売る本を並べ終えて、近くのモンパン食堂へ。トークの前に、腹ごしらえを。昨晩の京都の姿とは対照的な左京区のほうの京都の姿。自由で、独特で、ちょっとおかしい。必要以上にフレンドリーでないのも、逆にほっとする。
 ユリちゃんとは、前夜のトークと差別化をするために、ジン「ホピの踊り/沖縄の秘祭」をベースに、旅の話をした。ユリちゃんがところどころに付箋をつけてくれて、自分の文章を少しだけど朗読した。自分の文章を声を出して読むなんて初めてのことだ。恥ずかしくて死にそう、と一瞬思ったが、読んでみると、なかなか良いことを書いている。書いたそばから忘れてしまう自分。すっかり忘れていた。
 本もジンも想像以上に売れ、荷物を片付けて、山下さん、ユリッぺ、愉快な仲間たち、前夜の主催者ゆうくんと飲みに行った。疲れているなと思ったが、呑み始めたら元気になってしまい、またもや3時。ああ、またやっちゃった。

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