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佐久間裕美子のMyLittleNewYorkTimes

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書籍化したMy Little New York Timesから1年前の今日の日記と今年の日記を対にして不定期にお届けします。
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2020年6月の記事一覧

6月29日 香港のことを思う

このところ、ずっと香港のことを考えている。 こんなに無力感を感じることがあるだろうか。 チベットの独立運動は根こそぎ断絶されて、新疆ウイグル自治区で起きていることが「虐殺」と表現されるようになって、そして1945年まで自治を与えられていたはずの香港の民主主義を維持する運動がついに息の根を止められようとしている。

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6月26日 ブルックリンに帰還

仕事場の引っ越しやら何やらで、ついにフェイズ3に入ったNY市に戻ることになった。最近40歳のバースデーを迎えたばかりの女友達に連絡をしたが、「ウッドサイド(NY州北部)にいる〜」と返事があった。そういえば金曜日だし、週末、郊外に出かける人たちがいるのも納得だった。北部の山のほうは、すでにフェイズ4に入っているのだ。 ウィリアムズバーグに暮らすNちゃんとOsakanaというレストランでちらし寿司をテイクアウトして、マッカレンパークで食べた。世の中の大半の人たちはマスクをしてい

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6月25日 マスクをめぐる政治分断

経済再開を急いだ州は、ことごとくコロナウィルスの感染者数をどんどん増やしている。それも、20代、30代、40代の若年層に集中している。 ここへきてまた感染者数が広がった理由が、屋外のデモではなくて、屋内、特に人の家での集まりによるものだということは、超党派の研究機関NBERによる調査結果でも出ている。 それなのに、この日経新聞のこの見出しはどうだろう。

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6月24日 フェイスブック問題

コロナ時代がやってきて、ソーシャルメディアが、ミスインフォメーションを撒き散らす大統領に対する対策に乗り出した中、Facebookが何もしないという問題に対するカウンターが、ついに起きた。 しかし、この問題は、どうやったら改善されるのだ、と思っていたら、ついにボイコット運動に火が点いた。それも、ユーザーからではなく、企業が、広告を引き上げるという形のボイコットだ。これまでのところ、パタゴニア、REI、ノースフェイス、などといったアウトドア系アパレル会社や、ベン&ジェリー、映

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6月23日 黒人女性たちのこと

今日はニューヨークとケンタッキーで準備選が行われた。大統領選の候補選びはほとんど結論が出てしまっているが、ケンタッキーの民主党準備選に注目が集まっていた。 ケンタッキーは、上院院内総務で、アメリカの裁判所の保守化を成功させたミッチ・マコノルの州である。打倒マコノルに民主党が用意したのは、エイミー・マクグラスという元軍人でレズビアンの白人女性であるが、ブリアナ・テイラーが殺される事件が起き、BLMが活発化したにもかかわらずマクグラスが運動と距離をおいて批判を受けていたところに

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6月22日 キャンセル・カルチャー 2020年

また最近、CancelCulture系の言葉がトレンドに登場してくるようになった。週末には、#CancelYaleがトレンドしていた。 私が人生の2年弱を過ごしたイエール大学は、レイシスト大学である。ということは、これまでみんなこっそり口にしてきたことであるが、今、それが公言されるようになった。 これまでもマイノリティ学生が他のアイビーリーグに比べて少ないという批判は常にあったし、地元の黒人コミュニティを搾取しているという声もあった。アンチ・アジア人バイアスで教育省の捜査

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6月19日 Juneteenthと奴隷制の歴史

6月19日はJuneteenthである。ニューヨークでは大規模のマーチが行われ、各地でもお祝いやデモが行われる様子がソーシャルに流れてきた。奴隷の解放や自由を象徴するイベントとはいえ、奴隷の解放や自由を象徴するこの日がこれだけ盛り上がるのは、現代史上初めてのことだろう。 日本との意識のギャップにおののく日々ではあるが、日本語でも、早速ジューンティーンスを説明するコンテンツが出ていて、ちょっぴり心強い。 ジューンティーンスは、奴隷だった黒人が自由になった歴史事実を祝う日だけ

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6月18日 レイシズムと差別について考える

なぜ、日本人が#blacklivesmatter について知る必要があるのか、なぜレイシズムについて考えるべきなのか、ということを伝えたい、伝えないといけないと思うことと、自分がそれを伝えることができる能力というものの間にはやっぱりギャップがあって、日々、葛藤している。 差別はない、日本には関係ない、という声を見るにつけ、心が重くなる。日本で暮らしながら、差別を体験している人がたくさんいることを知っているから。そしてときどき、意識のギャップを前に、無力感に押しつぶされそうに

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6月17日 レイシズムと資本主義

BLM2020年バージョンが進行しているからこそ、新しく見える世界がある。今、できつつあるナレティブにはいくつもの線があるが、そのひとつは「資本主義は人種差別でできている」という考え方だ。 差別、というと、特定の人種を下に見たり、特定の人種の権利が、マジョリティの権利より小さいことだけかといえば、そうではない。たとえば、ある大企業の役員の顔ぶれを見に行ったときに、白人男性しかいない、ということがよくある。白人の男性たちが牛耳っているのだから、それ以外の人間も、白人男性が決め

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6月16日 初めてトランスの権利を認めた最高裁判断について

相変わらずBLM方向からは、たった19歳だった女性アクティビストのオルワトイン・“トゥイン”・サラウさんが死体で発見されたり、白人至上主義団体のアクティビティが盛んな地域で黒人男性の絞首死体が続けて発見されたり、読んでいるだけで胸が張り裂けるような事件が続いている。そして、これまでどれだけの事件が、メディアやパブリックの関心を集めきれないまま闇に葬られていったのか想像すると背筋が寒くなる。 この一連の事件については、また改めて書くとして、今日は、久しぶりにお祝いに値する昨日

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6月15日 晒される白人特権

2020年のBLMが始まって、これまでもときどき登場しては大拡散してきたレイシストのビデオがタイムラインに流れる頻度が上がった。 たとえば最近は、トーランスというカリフォルニアのアジア系人口の多い地域で、こんな映像が拡散した。 ワークアウト中のアジア系女性が白人の女性が罵倒されるビデオを見て、胸が痛くなった。なんという悪意だろうか。ワークアウトの様子をたまたま自分で録画していたために、白人女性が一方的にやってきて、口撃を始める様子がよくわかる。この女性は、トーレンスでアジ

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6月12日 警察改革とシアトルの自治区

警察改革が、思わぬ速度で進んでいる。 ニューヨークは、警官のチョークホールド(喉輪攻め)を禁止し、これまで不祥事の情報開示を妨げていた悪法を撤廃した。 サンフランシスコも警察改革を発表した。 軽犯罪への対応を逮捕のかわりに違反チケットにするとか、危険の少ないケースには対応しないとか、警察と市民の軋轢を減らす対策、警察の予算を削減して、病院にまわすなどの対策などが、幅広い地域でどんどん採用されていく。このスピード感、なかなかである。

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6月11日 BLMとコーポレート・アメリカ

今回のBLMは、いつもと違う。毎日、自分の目の前で、バリバリと音を立てて社会が変わっていく。もちろん反対側からは必至の抵抗が続いている。 こういうときには、コーポレート・アメリカの反応を注視するようにしている。この手の運動が起きるとすぐに連帯するプログレ系の会社は、今回はさらに踏み込んでいる。Nikeは、黒人以外の人口に「背を向けるな」というメッセージを出しているし、ベン&ジェリーにいたっては、白人至上主義撲滅のイニシアチブを取っている。そのメッセージは「Silence i

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6月10日 Defund the police

ここのところ、blacklivesmatterから始まった闘いは、defund the policeという具体的な要求に形を変えている。 警察から資金を取り上げるーーおそらく日本から見たら、ずいぶんラディカルな考えに聞こえるだろう。 そもそも警察というものは、自治体や州がそれぞれ運営するものなので、予算もそれぞれの税金から捻出される。早速、こちらも暴力的な警察が名高いLAでもLAPDの予算大幅削減カットが決まり、ニューヨークでも市長が予算削減に応じる意向を示している。先日

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