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履歴書②ひつじ、フリーターになる

今から20年前、私が20歳のころは「フリーター」という立ち位置は世間では、まだまだ肩身の狭い物だったように思います。少なくとも私はそう感じていました。「フリーターです」とは恥ずかしくて堂々と言えなかったような記憶もあります。2018年の現在、私の中でフリーターは最強なイメージで本当に頼もしい時代になったな~と感じています。

前回の「ひつじ専門学校へ行く」でも書いた通り、友人たちがみな就職という選択をする中、私はフリーターという道を選びました。そして20年前、フリーターになるという選択をした事は私にとっては良かったな、と感じています。そんな生活は京都で約5年間続きました。その5年間の中で印象に残った事をポイントで書きたいと思います。

勇気が出なかった

専門学校を卒業した。晴れて自由にはなったもののやりたい事がある訳でもない私は自由過ぎて不安は常にあったように思う。専門学校時代から働いていたケーキ店のアルバイトをしばらくは続けていた。特にお菓子を作りたいという情熱もある訳ではなく、将来こうなりたいという事もなく日々の生活のためにぼんやりと働いていた。

相変わらず、アートやファッションには興味がありそれに関連した雑誌などはよく読んでいた。洋服も相変わらず作っていて少ないバイト代は食費、家賃と布代に消えて貯金など全く出来なかったから本当にお金が無く危機が迫った時は相変わらず母に頼るという、本当に甘えた生活をしていた。

そんなある日、いつものように本屋さんに行くと「広告」という雑誌にふと目が止まった。その雑誌の表紙に気づいた瞬間、ドキドキするような違和感を感じた。その表紙には当時の最新のラブドールがモデルとして写っていたのだ。

いわゆるダッチワイフと呼ばれる類の人形なのだが、表紙のそれは今まで漫画などで見知ってイメージする空気人形のようなダッチワイフなんかではなく、ぱっと見た感じは例えば街中のベンチに置いてあっても何の違和感もなく通りすぎてしまうようなリアルな完成度で、まるで普通の女の子にしか見えないのだ。まさに「リアルなドール」だった。

迷わずその雑誌を買い、ラブドールについて書かれているページを隅々まで何度も読み返した。今でも見出しの一部を覚えている「ダッチワイフと呼ばないで」だった。そこには老人や障害者などの性的な問題を解決するために作られている人形というような事も書かれていた。書かれている内容にもなるほど、とも思ったがそれよりもそのリアルさに強く惹かれた。

「私もこれを作る人になりたい!!」と強く思うくらいの衝撃を受けた。その後、まずはそのラブドールを作っている会社が出しているラブドールのパンフレットを取り寄せた。そしてそのラブドールが出演している映画もレンタルビデオで借りて観たりしてそのラブドールの事で知れる事は可能な範囲で調べまくった。

これを作りたいというドキドキする気持ちが膨らむ一方で、もう一人の自分が問いかけた。「何やってるの、そんなの無理に決まってるじゃない。親に安くない専門学校代を出してもらったくせにラブドールを作りたいなんて言えるの?」と。次第にその囁きは大きくなっていき美大を出ていないから、周りに言いづらい仕事だから、と出来ない理由を次々と作りあげ、結局その囁きにあっけなく私は負けてしまった。

結局私はラブドール職人にはならなかったけれど、現在も日々、進化しているドール達は今見てもわくわくするし、情報は今でもチェックしているし、出会えた事は本当に良かったと思っている。

色々なバイトをする

その後、ケーキ屋さんも辞め他のバイトを転々とした。主に飲食関係だった。当時はカフェブームが始まったころで京都にもおしゃれなカフェが少しづつ増えていて、そんな場所で働くおしゃれ女子に憧れて募集があると面接に行くものの、一度も合格する事は無かった。仕方なくおしゃれではない喫茶店で働いたり、お皿洗いのバイトなどしていた。その頃はホールの仕事とキッチンの仕事を両方やる事が多くて、私は自分はホールよりもキッチンで作る方が楽しいな、と感じていた。一番苦手なのはお会計で、レジを打つのも苦手だし暗算は昔から本当に苦手だ。今も出来ない。

そして、もう一つ苦手な物が見つかった。「おじさん」である。お皿洗いのバイトをしていた時、料理人は年上の男の人ばかりで動作やしゃべり方も荒いのが怖くていつもびくびくしていた。喫茶店などでは、お客さんで来るおじさんも妙に馴れ馴れしい人もいたりして、それもうまく対応が出来ず嫌だった。

それで、何を思ったのか・・・私はそれを克服しなければこれからの人生困るな、と勝手に感じて荒療治として「スナック」でバイトをしようと考えた。もうおじさんからは逃げられない場所に自分を追い込んだのだ。

それにフリーターだからという甘えを無くして、正社員でなくてもお金をちゃんと稼いでみたいというのもあった。

次回に続く。。。






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