履歴書⑪ひつじ再びフランスへ逃亡する。part.2
香ばしい小麦粉の焼ける匂いがして、明け方目覚めた。そうだ、私はパン屋の2階で眠っていたんだっけ、と思い出す。数週間前は日本の鎌倉市のパティスリーで毎日、毎日、朝から晩まで働いていたのに、今はフランスのラングドック地方の片田舎のパン屋の2階のベットで眠っている。当たり前だった日常さえちょっとした行動で簡単に過去の思い出となる。
ベットから起き上がり、簡単な身支度をして一階に降りると、厨房ではJJ(ジャン・ジャック)が慣れた動作で忙しなくパンの仕込みをしていた。そして厨房の奥に