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五城目小学校・0-100歳の学びの場・小学校をつくるまでの道のり・「まちづくりをしよう」と思う人が現れないことを目標に。

五城目小学校


認定NPO法人全国こども食堂支援センターむすびえ&NPO法人ETICが開催してきた「居場所づくりは地域づくり」の登壇者が一同に秋田に集まりました。3日間五城目町の居場所や地域づくりの実践を見ながら議論しながら過ごしました。前回の記事はこちらから。今回が3日目の記事。

最終日は、①五城目小学校②がっこちゃっこにいきました。

五城目小学校についてここでは書きたいと思います。

五城目小学校

五城目小学校のホームページ:https://www.goshou.net/

五城目小学校についての記事:https://nanmoda.jp/2021/03/10991/

五城目小学校は、〝越える学校〟を町民の手で作ったということで知られています。この「越える」ということはどういうことか。

地域に根ざしながらも校舎の境界を越えて子どもたちが地域に飛び出し、町民が学校に参加するという意味も込めています。年齢の境界を越えて大人たちが再び学び出したり、地域の境界を越えて、世界中とつながったり。大人も子どもも学び合うことを目指しています」ハバタク丑田俊輔さん

https://turns.jp/38393

この丑田さんが経営するハバタクの会社そのものが「共創的な学び」を中心とした事業を展開をされています。秋田滞在3日間丑田さんから語られる言葉を聞いてきたのですが、「共創的な学び」について語っていらした言葉や街中で見てきた景色をそのまま『学校空間』にした場合どうなるのかーそれがそのまま「可視化」されているように感じました。

「入りやすい」「関わりやすい」でも「安全」な0-100歳の学び場


0-100歳まで学べる学びの場

まず、学びが小学生に閉じていない。0歳から100歳以上でも通える学びの場を学校と街で実際に実現をしています。あとは、塀がない。ガラス張りにし人の目がどこを歩いていても入るようにしてセキュリティを高めるという発想でつくられています。どこまでも明るくて、開放的。中と外がシームレスにつながっていて、「入りやすい」「関わりやすい」でも「安全」をハードとソフトで工夫をしていました。

また、年間のべ1800人参加する講座が学校の中で行われていて、30コースあるとのこと。そのコースの1/3は学校の授業を町民に開放するというもの(例えば小6の子どもたちの発表を町民の皆さんが聞ける等)、残りの2/3は市民向けの講座。地域の誰もが利用できるメディア棟の中には地域図書館があって、電源やWifiも使えるのでお仕事で利用をしている方々もいるそうです。


学校に到着。入口にてまずオリエンテーション。真ん中にたっているのが生涯学習課主査猿田和孝さん。今回説明をしてくれました。丑田さんがその右。左が前の記事に書いた柳澤さん。

小学校をつくるまでの道のり

五城目小学校は、この五城目町で唯一の小学校。築五十年を超えた現校舎の老朽化に伴って、建て替えるにあたって住民のワークショップを3年実施し、構想をつくってきたそうです。そのワークショップの道のりがこちらの写真の通り。

学校ができるまでのワークショップの過程がこのようにスゴロク風にまとまっていました。分かりやすい!

写真で文字が見えにくいかもしれませんが、多くの回が日本の様々な分野代表する方々を講師として呼んで(例えばゲストとして「まちライブラリー」の創設者である磯井純充さんと友廣裕一さん等)「視野を広くする」「違う角度から事象状況を見る」ということをしてから議論をするという構成になっています。

ワークショップが、ただ「話そう!」とか「説明」ではなく、創ろう!とか探索とかそういう内容になっているのもわくわくしますね。託児付きのものもあったそう。合計10回行われ、1回あたり20-150人の参加があり、のべ
1000人が参加したとのこと。8000人人口の町ですごいですね。。。

空間の工夫


こちらが音楽室

驚くのが、音楽室にバルコニーをつけてほしいというリクエストがそのワークショップの中ででてきたとのこと。リコーダーの音などを是非外でふいてほしいと。こどもたちがここにいるということが感じ取れる幸せがあるからとのことでした。「騒音だ」ではなく、それを是非聞かせてほしいとバルコニーが実現したというのはあまり聞いたことがありません。

また、教室はどこも壁もドアもありません。


こどもたちも撮影OKとのこと。

このように廊下を歩いているとすべての教室の中がとてもよく見えます。廊下にまたがって机がおいてあったり、廊下スペースに机があったりして、こどもたちの中ではその廊下にあるスペースに座って集中したり、少しクールダウンしたりという子もいるそうです。

五城目小学校の特徴はこちらの教室。段々になっていて、この場では発表やプレゼンなどをしているそうです。地域の方向けの講座もここで行われることが多いとのこと。

いろんな場所でいろんな姿勢でいろんな景色で学べる


こうやって座るだけでなく横になることもできてしまいます。(リクエストして寝っ転がってもらいました。笑 ありがとうございます)


図書室

図書室は可愛い椅子が並んでいます。椅子のデザインはとてもこだわりがあるとのこと。座りやすくでデザインが素敵です。

図書館内の籠るスペース

このような畳コーナーもあり。

スタバのカウンター席のような席もあり


こちらも

スタバといえば、教室の廊下には「ファミレス」のような席もありました。

左奥の机と椅子がどことなくファミレスっぽい空間イメージをしたそうです。いろんな空間で座って学ぶ、調べる。そういうのが選べるようにするという発想ですね。

小学校のレイアウト全体像はこちらの通り。

全体レイアウト


コモンズという土壌が豊かであるほどに、つながりの資本は増えていき、商いが成立しやすくなる

町民参加型でどうしてこのような学校が実現したのか。様々な要因がもちろ絡みなっているのでしょうが、まずは猿田さんの言葉を借りるとこの土地の立地と歴史と産業と朝市という文化がつくってきた町民性。

「500年以上続く朝市があるということは、そこで商売するためにさまざまなことを受け入れてきたはずです。今、移住者の方が増えて朝市plus+が開催されたように、何かが加わりそれが町になるという繰り返しを受け入れてきたのでしょう。
五城目町小学校の取り組みを住民参加で実施できたのも、もともと五城目町の皆さんが教育に熱心だという町民性があったからこそなのだと思います」(猿田氏)」

https://www.potluck-yaesu.com/magazine/20231227/1564/

加えて、やはりこの2日間見てきた様々な人が「やりたい」ということを言いやすい雰囲気になってきた、という土壌もあるのでしょう。その土壌についてのヒントがこちらの記事に丑田さんの言葉でありました。課題ファーストではなく、遊び(プレイフル)ドリブン。

あまり『地域課題を解決する』といったイシュードリブンではじまっていない気がしますね。それよりもプレイフル(遊び)ドリブン。儲けが先ではなくて、誰か強烈な遊び人が言い出しっぺになり、そこに楽しそうだからと仲間が集まってくる。

それが結果的に地域共有資源のコモンズ(入会地)のようになり、そこで生まれたつながりの資本(ソーシャル・キャピタル)がさらにいろいろな活動がやりやすくさせる。そんな循環が今の五城目町にはあるように思います」
「「さまざまな取り組みが飛び火して連鎖していくには、その環境のなかでつながりの資本が張り巡らされている必要があります。また、今起きている現象が植生だとすると地中には豊かな土壌がある。この土壌の部分がおそらくコモンズなのだと思います。

資本主義的な考えでは、コモンズなんて遠回りのように感じられるかもしれません。でも、中長期的に見ればコモンズという土壌が豊かであるほどに、つながりの資本は増えていき、商いが成立しやすくなるのだと思います」(丑田氏)」

https://turns.jp/38393


混ざる装置、マイノリティ性を双方から学ぶ教育留学


小学校は段々と地域外にも開かれていって、区域外就学制度を活用した「教育留学」の仕組みで日常的に県外から様々な子育て世帯が滞在しているそうです。こうすることで地域を越えた学び合いが起き始めているとのこと。それがまたこの町の子どもたちが高校になり秋田市や町外にでていったときに今度は自分たちがマイノリティとしてそこに入るときにどう振舞うかどう共に学ぶかということの力にもなるということもおっしゃっていました。


廊下の奥では、先生が廊下のどまんなかで何かのまるつけをしていました。廊下の概念が何かから考えさせられます。

課題を見出す視座があるから課題になっている。「まちづくりをしよう」と思う人が現れないことを目標に。

3日間秋田県のこの五城目をまわっていて感じたことを、丑田さん自ら言葉にしていたので、そこをまず引用します。

NPOが社会課題の解決を目的としているように、まちづくりに取り組む組織は、町で課題設定して取り組んでいます。課題を解決することで、最終的にNPOは解散することが目標であるように、まちづくり組織は幸せにくらせる地域で課題がなくなれば必要なくなると思います。

 課題に取り組めば、新たな課題が生まれるように、決して終わりのないプロセスだとは思います。一方で、課題を見出す視座があるから課題になっていることも自覚しなければいけません。まちづくり組織は地域で人々が幸せに生きているのであれば必要ないことであり、1人1人がしっかりと地域で役割を果たし政治に関わり民主主義が機能すればまちづくり組織は不要になります。

 課題を作り出さないように、まちづくりをしないように、まちづくりを目指さず地域の一人一人が主人公として幸せに活動できる状況において「まちづくりをしよう」と思う人が現れないことを目標にすえ、これから活動できたらと考えています。

https://www.jamco.or.jp/jp/symposium/30/8/

『最初は行政が主導して取り組んでいたのですが、結局遊びや楽しさを生み出していくのは難しく、やっぱり人なんだという結論に至りました。指定管理の制度を使い、思いのある人にお任せすることで、楽しくやってもらえればいい。そう考えています」(五城目町役場 まちづくり課 柴田浩之氏)』

https://www.potluck-yaesu.com/magazine/20231227/1564/

まちづくりという言葉を使うときの「主語」「目的」があまり考えずに使ってしまっているということに気づかされます。まちづくりをする人がいなくなることを目標とし、まちづくりをしないように活動をする。それをもとに行政の役割や連携についても繰り返し対話が重ねられていることを感じます。

遊ぶように学ぶ。それを0歳から100歳までが何度でもいつからでも学べるようにする。ハードもソフトも当たり前の考え方を「越えてみる」。そうすることで、いろんな発想が取り入れられたり化学反応が生まれて、この土地での学びが日本中世界中とつながっていく。その土地ならではの歴史と文化と土地の魅力をいかして、人の力が引き出されていくようにファシリテーションしていく。グローカルリーダーの育成はこういう土壌の上にできていくんだなというのかと、実感しました。

「世界一子どもが育つまち」へというスローガンが、つぶやきのように使い始めいつの間にか五城目の街中のみんなの一つの合言葉になっていく。世界一子どもが育つというのは、『子どもに学ぶことを強要するのではなく、世界一子どもも大人も学ぶことを楽しんでいる』ということという理解というのがとってもしっくりくる街でした。