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ピカソとフリーダ(フリーダ・カーロの日記#13)

フリーダはピカソと1939年にパリで知りあいました。ピカソはフリーダの作品を賞賛し、親愛のしるしに手型のイヤリングを贈っています。メキシコでは病や事故の快復に感謝して、手や足など身体の一部を型どった「ミラグロ(奇跡)」と呼ばれる奉納物を祭壇に捧げる風習があるため、こうした身体の部位を型どった飾り物はよく見られます。フリーダはこのイヤリングを大変気に入っていたようで、1940年に製作した「エレッサー博士に捧げる自画像」に描かれているフリーダの耳には、ピカソからの贈り物であった手型のイヤリングが描かれています。

Stable Diffusionより(イメージ画像)


ピカソといえば、彼は牛頭人身の怪物ミノタウルスを描いていますが、この日記では、フリーダも女性の裸体のミノタウルスらしきものを描いています。牛頭は2つの顏がそれぞれ左右に描かれています。美術史家でフリーダの研究者のサラ・M・ローは、この牛頭はローマの双面神ヤヌスのようにの入口と出口、つまり過去と未来をそれぞれの牛の横顔が見つめていると解釈しています。左面の過去は自信に満ち溢れた強い女性像のフリーダ、右面はローマの支柱の上でバランスを欠き、手や目が剥がれ落ち「私は壊れている」というコメントと共に描写した自身を予知しているかのような未来描写となっているのです。

バラバラになった手足は、次ページの「予期せぬ現象」でも続きます。体の部位が至る所に不自然に散りばめられているのです。第三の目を持つ女性の右には巨大な耳、その下には逆さに吊るされてぐったりとした赤い顔の人物、膝のあたりに突如として現れる瞳、乳房そして性器。「予期せぬ」と題しているように、自動描画として無意識に描いていったものなのかもしれません。


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