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財政課を卒業された皆さんへ

財政課を出られると思ったら次は人事課?
企画,財政,行革,人事
いったいいつになったら現場に出られるの?
#ジブリで学ぶ自治体財政

この春の異動で財政課を離れた皆さん,ご卒業おめでとうございます。
過酷な長時間労働に耐え,現場,議会,首長等多方面からの重圧に耐え,心身ともに無事で任務を終了されたことをお喜び申し上げます。
責任重大な役割から解放されて肩の荷が下り,ほっと一息されている方もおられれば,新たな課題を与えられ,このいばらの道はいつまで続くのかと恨み節を口にする方もおられるかもしれません。
いずれにせよ,財政課で培った経験を活かし,持ち前の精神力と責任感で新たな職務に精励していただきますようお願いいたしますが,過去に財政課にいた者としてただ一つ,財政課卒業後に心掛けていただきたいことを皆さんに私からお願いします。
それは,財政課にいたからこそ知りえた内情,特に自治体財政の実情について,本当に職務上秘密にすべきこと以外はなるべくオープンに,特に職員同士であればできるだけ理解できるよう,情報を共有していただきたいということです。

私もそうでしたが,財政課に異動するまでは財政の“ざ”の字も知らず,なぜ財政課が少しくらいの予算増額に目くじらを立てるのか,なぜ二言目にはお金がない,財政が厳しいというのか,全く理解していませんでした。
毎年同じだけの金額がかかるはずの経常的な経費に5%も10%もシーリングをかけ,削れるはずのない予算を削れというその神経を疑い,血も涙もない連中だと不信を募らせていました。
必要なはずの予算が計上されず,どこの誰が言い出したかもわからない予算がつき,いつ誰がどうやって優先順位を決め,予算をつけることを決めているのか全く分からず,無力感を感じていました。
そんなブラックボックスの予算編成プロセスに突き合わされ,予算要求にあたって膨大な資料と説明を求められ,さんざん苦労させられた挙句に現場の気持ちを逆なでする厳しい査定を受け,仕事への情熱も財政課に協力しようという気持ちも失せ,やる気を失っていました。

私だけでなく,全国の自治体で多くの職員が多かれ少なかれそういうマイナスの感情を抱き,毎年繰り返される予算編成の中で無駄な労力を割き,勝者のいない暗闘を続けているこの悲劇とも喜劇ともいえる状況を,財政課OBの皆さんのお力で何とか変えていただきたいのです。
私は係長で5年,課長で4年財政課に在籍しましたが,財政課が他の職場から嫌われている理由も十分に理解し,その裏側にある財政課の影の努力や現場に厳しく当たる本当の理由が知られていない,伝わっていないことにもどかしさを感じ続けていました。
財政課は憎まれ役にならないといけない,これは必要悪だ,と言う先輩もいましたが,財政課を卒業した今こそ,財政課と他の職場とのでディスコミュニケーションが実は職員のエネルギーを奪いモチベーションを低下させ,本来発揮できるはずのパフォーマンスを低減させているのではないかと思って胸に手を当ててみてほしいのです。

今回の異動で,財政課から異動して着任した職場では,「〇〇さんが財政課から来てくれたから,もう財政課に切り込まれずに思い切り予算要求できるよね」などと“歓迎”された方もおられたでしょう。
事実,財政課を卒業したとたんに腹いっぱい予算要求して,財政課に残った後輩たちに先輩風を吹かせてプレッシャーを与えるよからぬ先輩もおられますが,そういう役回りを演じろということでは決してありません。
財政課の業務を経験した者として,財政課と現場の間で起こっている情報の非対称によるコミュニケーション不足を解消し,「財政課はこういうことを考えている」「財政課はこういう場合はこういう判断をしがち」といった情報を現場で共有しながら,共通の理解に立ったうえで自分たちの必要な経費,実現したい施策について財政課と折り合いをつける方策を考え,時には実際にその交渉役として財政課と相対する「対話」の橋渡し役をぜひお願いしたいのです。

財政課にいた時のことを思い出してください。
どうして現場は財政が厳しいという現状を理解しないのか。
どうして市民,議会の理解が得られない,バランスを欠いた施策を行おうとするのか。
現場は財政のことがわからない,部分最適に走り全体最適を考えていないと財政課の職員同士愚痴をこぼしていたことを思い出してほしいのです。
では,あなたは財政課で,現場の無理解を埋める努力をしてきましたか。
してきたとしても,その声に現場が耳を傾けてくれましたか。
財政課に在籍している間は,立場の壁に阻まれてなかなか現場との意思疎通,情報共有が進まないというもどかしさを感じませんでしたか。
立場が変わり,財政課を離れた今こそ,財政課で知りえた内幕,現状を現場で共有し,財政課にいたときに現場に知ってほしかったこと,理解してほしかったことを伝えることができる立場にやっとなれたと考えてほしいのです。

財政課だけに自治体財政のすべてを担わせることには無理があると,財政課時代に考えていませんでしたか?
現場がもう少し財政のことを理解し,自律的に予算編成や執行にかかわってほしいと思っていませんでしたか?
皆さんの財政課卒業には,そんな意味があるのではないかと私は思います。
財政課を卒業したからと言って,財政のことを嫌いにならないでください。
あなたはもう「財政」から逃れることはできないのです(笑)
一人の千歩よりも千人の一歩。
財政課に集められた一握りのスーパーマンたちにすべてを委ねるのではなく,末端の現場まで組織全体で課題を共有し,同じ目標に向かってそれぞれの持ち場でできることをやっていくことができる組織づくりのために,財政課卒業生の皆さんができることがあるはずです。

よりよい自治体運営のために。
財政課に残された後輩たちのために。
ひょっとしてまた財政課に舞い戻ってくるかもしれない自分自身のために。
皆さんの今後の健闘を期待いたします。

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