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なぜお役所仕事はダメなのか

自分が責任とらなくていいからって
お前ら好き勝手するなっての
この機が沈む時は一蓮托生
自分だけ助かるなんてことはないんだぞ
#ジブリで学ぶ自治体財政

「お役所仕事をやめさせろ」という挑戦的なタイトルで始まった「お役所仕事」撲滅一掃への道。

これまでは今までどこかで聞いたような話をなぞってきましたが,そろそろ本題に入りましょう。

「お役所仕事」をやめさせるための“三つの「める」”。
自覚のある者には「誉める」ことが,自覚のない者には「決める」ことが公務員の行動変容を促すとしてきましたが,「決める」だけでは実効性を持たずに掛け声倒れになってしまうことが危惧されます。
そこで,作った仏に魂を入れる三番目の「める」について語ることになるわけですが,その前に皆さんに確認しておきたいことがあります。
「お役所仕事」はなぜ撲滅一掃されなければならないのでしょうか。
お役所仕事は決して仕事をしないわけではなく,形式的で時間がかかり,実効の上がらない仕事ぶりのことを指します。
この非効率な仕事ぶりが社会に許容されてきたのは,行政サービスの提供に他の選択肢がなく競争によるサービス主体の淘汰が起こらないこと,また公務員の身分や給与水準が保障され,サービスを担う者の淘汰が起こらないことが原因と考えられてきましたが,本当にそうでしょうか。
また,今もその状態は継続しているのでしょうか。

お役所仕事の代表例である「縦割り」「たらいまわし」は組織間の連携が空疎になることで起こる現象ですが,非効率であるばかりでなく,組織のはざまに課題が漏れ落ちるリスク,またうまく連携しないことで情報が輻輳し判断の誤りを導くリスクが存在します。
「四角四面な対応」「居丈高な上から目線」は役所の言っていること,やっていることは正しくても,感情的な対立を産むことで事案の推進に要する労力や時間を余計に費やすことになりこれも非効率ですが,それだけでなくそこで生まれた感情の対立からくる不信や不満が役所全体への反発感情となって長く残り,他の施策事業にまで影響が及ぶリスクをはらんでいます。
判断を回避し責任を逃れようとする「横並び」や「事なかれ主義」は,自らが決すべき重要な判断の好機を逃し,獲得できる利益の逸失あるいは避けられた災厄の害を被ることに対し,覚悟のないまま臨んでしまうというリスクがありますし,経済観念や市場を俯瞰する意識に欠け,リスクテイクと利益獲得とのバランス感覚のない「経済オンチ」は,様々な危機に瀕する自治体の経営リスクそのものです。
「お役所仕事」撲滅は,それが達成されればより高質なサービスを提供できるというプラスアルファの要素ではなく,それが達成されなければ自治体経営を危機にさらす脅威,リスク要素としてとらえなければならないのです。

最低限の品質を備えたサービスに付加するプラスアルファの価値については,競争性のある市場ではどれだけその価値を付加して高めるかが競争であり,独占市場であればそれがなくても最低限の品質で受け入れてもらえます。
しかし,リスク要素は最低限の品質として備えるべきものであり,他と競争すべきものではありません。
独占市場であっても商品から排除されなければならない因子であり,むしろ,他のサービスを選ぶことができない独占市場であればなおのこと,リスクを内包したサービス流通は避けられなければならないのではないでしょうか。
「お役所仕事」は自治体経営上のリスク要素,「お役所仕事」しかできない公務員はそのリスクの元凶であるとすれば,それがこれまで排除されずにお役所の慣習として生き残ってきたのは決して競争による淘汰がなかったから,付加価値がなくとも独占市場で競争せずにサービスを提供できたことが理由ではなかったのではないか。
その存在をリスクととらえずとも,そのリスクが顕在化してもそれを飲み込んで乗り越えていくことができる経済的,時間的,精神的余裕が,自治体にも社会全体にもあったおかげで「お役所仕事」は温存されてきたのではないかと私は思うのです。

翻って今,私たち自治体,自治体職員にその余裕があるでしょうか。
厳しいと言われて久しい自治体の台所事情に加え,行革の名のもとに人減らしが進み,どの自治体でも人も金も余裕はありません。
多岐にわたる市民ニーズへの対応はかつてのような画一性を許されず細分化し,毎年のように発生する大規模災害やコロナ禍への対応などもあって,自治体職員が担うべき業務量はむしろ増えているような感覚です。
ひとたびリスクが顕在化した場合に生じる新たなコスト,労力を引き受ける余裕など想像もできない過酷な現場がそこにあります。
一方,役所の外側にも「お役所仕事」が持つリスクを引き取る余裕はありません。
今後回復することのない少子高齢化と長年続いた経済の低迷は,私たちの社会から相互に協力しあうという心の余裕を奪いました。
自分さえよければいいという独善,他人が自分よりも便益を享受することへの嫉妬,なぜ自分だけが困窮するのかといういらだちが至る所に地雷のように仕掛けられ,いつどこで起爆装置が作動するかわからないような状況で,とても「お役所仕事」によって生じる非効率や感情的対立,あるいは自治体が犯すかもしれない経営判断の過ちの尻ぬぐいをするほどの余裕はないのです。

世が世なら「お役所はこれだからダメなんだ」と笑いながら揶揄するだけでよかった「お役所仕事」は,今や排除すべき経営リスクとして不気味な存在感を現わしています。
自治体の余裕の有無によってはこの撲滅一掃は一刻を争う急務であり,「誉める」ことによってじわじわと環境を醸成していくのを待つことができない場合には,法令や計画等で「決める」ことで職員,職場の行動を外側から規制し,行動変容させるしかありません。
そのうえで,決めたことの形骸化を防ぐには,先ほどから述べているなぜ「お役所仕事」は排除されなければならないかということへの理解,「お役所仕事」撲滅の魂を根本に据え,人手不足と厳しい財政状況の中で,今以上にサービスの質を高めるために,優先的に取り組まなければなりません。
さりとて,自治体が担うべき業務,公務員がやるべき仕事はたくさんあり,どれも大事なことばかり。
では,「お役所仕事」撲滅の魂を込めて組織を挙げて優先的に取り組むために必要になる第三の「める」はいったい何でしょうか。

すいません。1回分まるまる引っ張ってしまいました。
第三の「める」は次回以降に。To be continued!

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