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その6 起こり始める

 (どういうこと……?これが本当なら、この陀羅尼は一体誰が言葉にした?)

色々と調べてみても、‘’釈迦が呪文の類を否定していた‘’ことは真実のようだった。                               

(別の誰かがこの単語を選び並べた。それが釈迦以前のことなのか伝播の途中のことなのかはわからないけれど、他の教えとともに仏教として日本に持ち込まれたんだ。)

そう理解した頃、私は体調を崩し寝込むことが多くなっていた。家族のために継続して何かをすることができなくなった。漢方薬を服用しつつ何とか自宅にて過ごしていたが、腹部の断続的な痛みがあった。
半年ほど経ったある時、あまりの痛さに音を上げ病院に駆け込んだ。
胃潰瘍だった。医師の言葉が今も心に残っている。

「パニック障害もあるの? …ちゃんと言いたいこと口にしてる?」

……言いたいことは言っていると思っていた。この時はまだ自分に起こっていることが理解できていなかった。

そしてこの事と前後して。
当時下宿していた子供のとある行動に、私が疑念を持つ…ということがあった。とにかく電話で話をして疑いは晴れた。けれど自分の感情が収まらない。その感情にとても奇妙なものを感じた。この状況ではあまりにそぐわなかったからである。子供の心は理解できた。何ももう疑うことなどない。本来、どんな行動を取ったとしてもあの子の心を疑うなんて、冷静になってみればおかしいことだと思った。 

(この感情は何?)

私はその感情の元に深く入っていった。