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令和5年度杉並区予算案に対する意見開陳(性の多様性、パートナーシップ制度についての意見を含む)

自民・無所属・維新クラブの小林ゆみです。会派を代表し、議案第20号 令和5年度杉並区一般会計予算 並びに各特別会計予算 及び当委員会に付託されている各関連議案について意見を申し述べます。


今般、岸本区長に区長職のバトンが渡されてから初の当初予算編成となりました。
我が会派は、令和5年度一般会計予算のポイントとして、
1つ、当該年度の区財政の状況について。
2つ、予算編成において、事業の無駄を省き、歳出削減に努め、行財政改革に取り組んだか。
3つ、個別施策の内容の是非について。
以上、主に3つの視点を持ち、区長が所信表明において「区長に対してクリティカルであり続けてほしいと思っています。」と述べられたことも踏まえ、厳しい目で予算審査に当たってまいりました。


はじめに、1つ目の視点である財政面を見てまいります。
令和5年度の一般会計の歳出予算規模は、前年度比81億100万円増となる2107億円と示され、当初予算規模としては最大となりました。
区の施策に影響を与える燃料費の増加などの増要因はあれど、年々膨れ上がる財政規模を楽観視して良いことの理由にはならず、既定事業のボリュームが大きくなることに伴って税金の使い途に関する自由度が年々減っていく現状には、懸念を抱かざるを得ません。


歳入について申し上げます。区の基幹収入である特別区税は前年度比25億9143万円余増の705億6788万円余であり、このうち特別区民税については、ふるさと納税制度による流出46億3000万円余を考慮しても、前年度比25億5904万円余の増という見込みとなりました。
区民税の増収要因について質問をしたところ、令和5年度の納税義務者数は34万1995人と、今年度と比べ700人程度増加する見込みであること、また、企業収益が堅調に推移していることから所得の増加を見込んだ結果によるものと確認をしております。

次に、特別区税に続くもう一つの歳入の柱である特別区財政交付金については、前年度比35億円増の497億円を見込み、この要因については、堅調な企業収益による市町村民税法人分の増を踏まえての算定であると確認しました。

基金について申し上げます。
令和5年度当初予算の編成において、今年度に引き続き財政調整基金を取り崩すことなく基金残高の維持に務めた点については、これまで我が会派が求めてきた方針と合致し評価を致します。
施設整備基金については、当該年度は積立を行わず26億6800万円の取崩しを行いますが、これは区立施設再編整備計画(第2期)・第1次実施プランに基づいた、学校等の施設の改築等経費に充てるためのものと認識しています。
区債については、令和5年度は学校改築など計6事業に54億1300万円の建設債の発行を予定しております。
しかしながら、当区は標準財政規模に対する積立基金残高は52.2%で23区においては最下位であるうえに、標準財政規模に対する区債残高は25.87%で23区中9番目に借金の比率が多いという現状のもと、決して少なくない負担を今後区民に強いることになります。

令和5年度は総合計画・実行計画の見直しがあり、それに合わせて「財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方」についても見直されることになりますが、今後の財調基金の在り方及びその基金の積み立て目標額については、財政調整基金の年度末残高350億円の維持に努めるという現状の考え方よりも後退しないよう求めます。また、施設整備基金についても着実に積み増し、併せて区債発行については、今後の金利上昇の懸念から適債事業を見極め、慎重な発行を求めるものです。

令和5年度当初予算における当区の財政状況を見てまいりましたが、財政規模の拡大には懸念を抱くものの、堅実な予算となっていると評価します。


次に、2つ目の視点である行財政改革への取組について申し上げます。

予算案における既定事業等の見直し、廃止、整理統合・縮小による、予算要求額における歳出削減への取組について見ていくと、その削減額は、令和3年度は17億9,930万円余、令和4年度は4億8,983万円余でしたが、令和5年度は2億3322万円と、これまでと比較すると物足りなさが目立ち、見直された事業の中には、コロナ関連事業の廃止による6154万円余の縮減も含まれております。見直された事業の数を見ても、令和5年度予算案では事業の見直し、歳出削減努力には熱意を感じられませんでした。こうした努力不足とも言える状況下で、財政調整基金に余裕があることを理由として新たな事業を実施したいと言われても、賛同できません。令和5年度のように、納税義務者数の増や企業収益の増など、区財政にとってプラスの要因が見込まれる時こそ、行革の取り組みを前進させるチャンスなのではないでしょうか。変遷する社会状況を踏まえ、一つ一つの施策が区民にとって本当に必要なものであるかを絶えず再考し、全庁的に歳出削減の取り組みに注力することを要望します。

次に、予算審査の3つ目の視点である、個別施策の内容について申し上げます。

令和5年度当初予算案には、就学援助について、物価高騰の状況等を踏まえ当面の対応として認定基準額を1.3倍まで引き上げ、準要保護認定対象者の拡充を行うことが盛り込まれています。今このタイミングで行う理由として、物価高騰に賃金の上昇が追いつかず、実質賃金が下がっているためと質疑の中で説明がありました。
ただ、物価高騰の影響を理由として今般就学援助の拡充を予算計上した区は23区中杉並区のみであり、さらに質疑の中でご紹介いただいた保護者向けアンケートの回答にもあったように、世帯の平均所得が上昇しているのであれば、今本当に必要な支援であるのか疑問に思います。予算審議の中で、物価高騰が収束し実質賃金が上昇した場合に就学援助の引き下げをするか質問したところ、煮え切らない答弁が返ってきました。それゆえ就学援助に関しては、物価高騰を理由にして自身の区長選挙公約を実現することを優先しているように感じられるというのが率直な感想です。

また、就学援助の認定基準額を引き上げるのであれば、学校給食費の保護者負担軽減などの区独自施策の必要性についても疑問を感じるところですが、「聴っくオフ・ミーティング」のテーマに学校給食費無償化を選ぶなど、杉並区としては是が非でも継続・拡大していきたい施策であるということが読み取れます。
しかしながら、学校教育のための予算は、本来であれば公教育の質向上など本質的なところに第一義的に割かれるべきであり、代表質問でも我が会派から述べたように、経済的支援のみを掲げて子供の学びの支援と言われてしまうと、公教育の価値や目的についての区長の認識に不安を抱かざるを得ません。
私は8年前、予備校講師として勤めた経験から「塾に通わなくても質の高い教育が受けられる杉並区」を公約に区議選に出馬し、以来公教育の質向上のための取り組みを区に提言してまいりましたが、塾代助成など、私の思いとは逆行する区の施策の方針に頭を悩ませてきました。
昨年区長が交代し、公教育の質向上に関する取り組みの充実を期待しましたが、新たに予算計上されたのは就学援助の拡充などの経済的支援であり、直接子供たちの学びを充実させる内容とは言えず大変残念に思います。

高齢者分野では、補聴器購入費助成を新たに開始することが示されました。
予算委員会における質疑でも指摘しましたが、歩行補助器具や眼鏡など、身体機能の衰えに伴って必要となるあらゆる器具の購入費助成の皮切りになってしまう可能性があります。行政が一度サービスを始めると、サービスを打ち切ることや補助金額を減少させることは容易なことではありません。福祉系施策は実績に応じて補助も増加させる例が多いですが、だからこそ、新たな助成を創出する際は、今後の区の財政状況や、景気動向等のリスクを考慮し、本当に必要な支援であるかについてじっくりと時間をかけて検討する必要があります。本施策については、来年度に拙速に進める必要性が感じられません。

そして、個別施策の一つとして、議案第12号 杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例と、その中において示されたパートナーシップ制度にも疑問が残ります。以下、この条例案についての疑問点と問題点を7点述べます。

・現在、国として同趣旨の法整備の検討中であること
・東京都の同趣旨の制度の方が、杉並区が実現を目指す制度よりも対象者が広いこと
・条例ではなく議決を必要としない規則で、パートナーシップ制度の申請要件などの重要事項が定められること
・民法750条、752条、刑法184条など、婚姻関係にある夫婦が果たすべき義務や責任は発生しないにもかかわらず、夫婦向けサービスが受けられるようになること
・何が差別行為に当たるかは区長が判断するということ
・診断書や公正証書など、性自認について証明する書類等の提出は区として必要とせず、自己申告制であること
・カリフォルニア州やスコットランドなど海外で発生している、自身の性自認を偽って行うトラブルや犯罪行為を誘発しないことの証明ができないこと

以上述べた議案第12号についての疑問点や問題点が質疑において解決しなかったため、不安が払拭しきれず、結果的に区民の中に分断や混乱を招いてしまっています。私が7年前、区議会一般質問において警鐘を鳴らしたように、今回の区の取り組みによって何の非もない当事者が誤解され、無用な対立を生み出すという結果となってしまい、憤懣やるかたない思いです。

以上、申し上げた個別施策の例から、今後区が展開するばら撒き施策の芽が見られ、パートナーシップ制度については制度の内容に疑問点や懸念点が多く見られました。
補聴器購入費助成など、予算としての額が小さいということを隠れ蓑にして、今後大きく拡大していこうと言う意図が見え隠れしています。予算委員会における答弁でも、区長は何かにつけて「この条例(制度)を大きく育てていきたい」と仰っておりました。しかしながら、地方自治法138条の2に定められているように、議会で議決された条例は、執行機関が条文に沿って確実に管理・執行する義務があり、育てるものではありません。条例を育てるという考えは、執行機関として自治法の定めから逸脱しており、認識として誤っています。
また、年々拡大する区の財政規模やパートナーシップ制度を含む数々の制度の内容のみを考慮しても、区としての取り組みには、「小さく産んで大きく育て」られては困るものが多く存在します。区民福祉の増進という視点で見てある程度までは納得できることもありますが、制御不能となる前にここで一旦立ち止まるべきではないでしょうか。

以上、令和5年度一般会計当初予算案について、我が会派は、財政面、行財政改革への取組、個別施策の内容という、大きく3つの観点から予算審査を進めてまいりました。
財政面では概ね良好な状況ではあるものの、行革に関しては努力不足感が否めないこと、個別施策の内容については、ばら撒きの芽が散見され将来世代への責任に欠けること、また性の多様性に関する施策の内容に多くの疑問と懸念が残ることから、議案第20号 令和5年度杉並区一般会計予算に反対いたします。

議案第21号 令和5年度 杉並区国民健康保険事業会計予算について、当初予算の段階では、法定外を含むその他一般会計繰入金は約25億1700万円、前年度比11.6%、約2億6300万円の増となり、質疑において納付金の増が主な理由であると確認しました。
区として引き続き国保料の適正な賦課徴収に努め、法定外繰入の段階的縮減の対応を図ることを要望し、その他各特別会計と併せ、安定的な制度運営の必要性から賛成を致します。

議案第29号、議案第30号の両補正予算は新型コロナワクチン接種や、国民健康保険被保険者の負担軽減等に要する係る経費についてなど必要な経費を計上した補正予算であると理解をしますが、本予算である議案第20号がまだ可決されていない現段階では賛否を示すことができないため、本予算の賛否が決まり次第、瞬時に賛否の判断を致します。

その他、当委員会に付託されている関連議案のうち、議案第12号 杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例 については先述の理由から反対し、その他全てには賛成を致します。


以上、令和5年度一般会計当初予算及び各特別会計 並びに当委員会に付託された各議案について、我が会派の意見を申し上げてまいりました。以下、岸本区長就任後初の当初予算の審議に当たり、気になった点について2点申し上げます。

まず、将来世代への責任について申し上げます。今般、区はいわゆるばら撒き施策も含む、杉並区政において過去最大規模の予算を編成しました。また、区長は我が会派の代表質問への答弁において、「気候変動問題に取り組まないことは、私たちの子や孫からジャスティスを奪うこと」と、気候変動問題に取り組まない人を大変強い言葉を用いて非難しました。
区長は、未来を生きる子供たちの幸福のためには、自治体が学校給食費などの援助をすべきである、また全ての人が環境問題に取り組むべきであると考えているようですが、一方、我が会派が未来の子供たちのために重視していることの一つとして、選択の自由を守ることがあります。
冒頭、財政規模の拡大について言及しましたが、財政が堅調であることを理由に区が担う業務の幅を現在のペースで広げていくと、税の使い途が制限され、自由度が失われます。
そして対話を重んじると言いつつ、特に区長の思い入れのある環境問題やジェンダー平等など、特定のイシューに関して区長の中に揺るがない正解があり、それ以外は認めないという意思が予算審議の過程で感じられました。本来であれば、政策判断の過程においても、意見や方策の多様性が重視されるべきではないでしょうか。
私たち会派としては今後も、現在、そして未来を生きる人々の自由を守るために、必要な提言をしてまいりたいと思います。

次に、区長のジェンダーの認識についても、一言申し上げます。区長は3月8日に公開されたBBCニュースの動画の中で、インタビューに答える形で次のように英語で発言され、日本語字幕が付いています。
Issues like climate change, diversity, you know, gender equallity has been challenged by the kind of old politics or like... , you know, boys' club.
「気候変動や多様性、ジェンダー平等といった問題が、古い政治、男性限定の会員クラブに取り組みを阻まれています。」

boys' clubについて、インターネット上のウィクショナリーというサイトでは、
a male-dominated organization, especially in business, that excludes or mistreats women
と説明されており、私なりに日本語訳をしてみると、「特にビジネスの場における、女性を排除する、或いは虐待するような、男性に支配された組織」となります。区長が今回のような内容で国内外に発信することは、就任時から区長を支え、可能な範囲で区長の思い描く区政の姿を実現しようと日々尽力していらっしゃる区の男性職員に対し失礼に当たり、同時に、杉並区、そして日本という国を貶める発言になってしまってはいないでしょうか。

また、動画版には含まれていませんでしたが、BBCニュースの日本語で書かれた記事を読むと、「『私は政策について議論がしたいのに、区議会では多くの時間が、批判や個人攻撃で無駄にされてしまうのです。』攻撃の大半は岸本氏のジェンダーに対するものだ…」とあります。
区長自らが所信表明で、「区長に対してクリティカルであり続けてほしいと思っています。」と述べられた以上、今後も区議会から厳しい目で区政運営をチェックされることについては、受け入れる必要があると思います。私含め、この議場にいる議員は、現在、そして未来を生きる人々により良い杉並区を残したいという思いで日々議論を重ねていますが、その中にたとえクリティカルな意見があったとしても、その批判的な目は当然ながら、区長個人や女性というジェンダーに向けられているのではありません。真剣な政策論議を、「ジェンダーに対する攻撃」という言葉で片付け論点をずらしてしまうことは、区として発展できるせっかくのチャンスを逃してしまい、あまりにも勿体なく、区長が目指す、対話や議論が活発な社会の在り方とは真逆の方向を向いてしまっています。対話や議論とは、区長の考えに賛同する意見ばかりを聞くことではありません。反対や批判の中にある多様な意見にこそ耳を傾け、議論すべきではないでしょうか。

そして私自身に関しても、岸本区長に関しても、女性であるからこそ注目や共感を集め、票を投じてくださる方がいらっしゃった、という面が少なからずあるのではないでしょうか。同じ女性政治家という立場から、女性であることのマイナス面をクローズアップして内外に発信するのではなく、日本という国においては女性だからこそ注目される、周囲に大切にされることもあるというプラス面も認識したうえで、職務に当たられることをお願いしたいと思います。


結びに当たりまして、予算審議に対し答弁を下さいました区長はじめ理事者の皆様、資料作成に御協力をいただいた職員の皆様、また正副委員長に対して感謝を申し上げ、自民・無所属・維新クラブの意見と致します。

令和5年3月14日
杉並区議会議員 小林ゆみ

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