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歯医者という安全基地

親子で通っている歯医者がある。開院したときから利用しているので、かれこれ10年になる。子どもの預かりをしているので、次女は生まれたときからお世話になっている。歯科医も、歯科衛生士も、同じ方に診ていただいている。

もともとの歯医者の雰囲気(医師の人柄というか)なのか、とても明るい。活気があるというよりも、なんでも話せる、という雰囲気だ。患者との雑談も、よく聞こえてくる。

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不登校以来、歯医者の予約はもっぱら午前中だ。午前中は比較的取りやすいので、開き直って子どもたちの予約も午前中にした。

前回も午前中、今回も午前中ということで、「学校は早退ですか?」と聞かれたので「いや、休みました。」と答えた。

帰り際、「もしかして、学校はずっとおやすみしてる?」と質問された。まぁ、聞かれるだろうなと思ったので、「そうなんですよ、不登校で。」と答えたら、「午前中に入っている子は、だいたいそうなんですよ。」と笑顔で返ってきた。

もう10年通っている歯医者だ。信頼関係もある。わたしは、とても安堵した。

少し雑談がてら歯科医にも事情を説明してみたら、「最近、女の子でそういう子、多いんですよ。大人なんでしょうね。学校や先生が合わないんだろうなと思います。でも、いまは学校に行かなくてもインターネットで勉強できたりするし、いいと思いますよ。」と。

実は、学校でカウンセリングを受けているときよりも、歯医者で治療しているときのほうが、子どもたちはのびのびしている。次女は特に顕著で、緊張もせず、わたしと話すときのようにリラックスして話をしているのだ。

学校の先生と話しているときとは、明らかに態度が違う。緩んでいる。歯の治療をしているのに、だ。

わたしは、キャンプ地ならぬ、「ここを安全基地とする!」と叫んでしまいたかった。

医師が、「不登校のこと、お子さんに対して聞いても大丈夫ですか?」と聞いてきた。わたしは子どもたちの様子から、この歯医者なら大丈夫だろうと思ったので、「きっと、大丈夫だと思います。」と答えておいた。

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帰路、子どもたちに聞いてみた。「歯医者さんで学校(不登校)のこと、聞かれるのってどう?」と。返ってきた言葉は「あそこは保育園みたいに楽しいから大丈夫!いろいろ話せて楽しいし!」と返ってきた。

安全基地が、ひとつできた。

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医師の言葉がわたしをほぐしてくれた。
「不登校のお子さんは、治療中いろんな話をしてくれます。親や学校とは関係ない場所だからこそ、話せることがあるんでしょうね。安心して、午前中に予約を取ってください。」

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