悲しみの中での手続き
夫が亡くなった途端に私は遺族代表として、葬儀の手配やら遺産相続やら関係各所への連絡に追われた。
仕事も失った上に最愛の夫も失い、私には生きる希望などなかった。
でも夫の後片付けを私が最後までやってあげたい。
これまでずっと私を助けてくれた夫への恩返しがしたかった。
手続きは山ほどあった。
役所や年金事務所での手続きだったり、各銀行での解約手続きだったり、車や家の相続、クレジットカードの解約、そして現役社員だった夫の退職手続きもあった。
その手続きにも必要なのが死亡診断書。
夫が除籍された戸籍謄本や私が世帯主になった住民票も必要となることがほとんどだった。
目を向けたくない書類を手続きの度に見なければならなかったり、死因や死亡日を答えなければならないことも多く、本当に辛い作業だった。
でももしかしたら、やらなければならないことがあったことで少し気が紛れていたのかもしれない。
家で何もしていないとすぐに涙がでてきてしまった。
朝起きる度に、また夫のいない一日が始まることに涙、夫がいた日から遠ざかることに涙、私はまた目覚めてしまったと思い涙。
夜は夜で、夫が倒れた時のことを思い出して涙、これからのことを考えると涙、夫と二度ともう会えない事に涙。
涙ばかりの日々。
外出しても、夫と行った場所を見るだけで涙。
いよいよ私もおかしくなってしまったかと思うくらい泣いていた。
でも私の生活にはヘルパーさんや看護師さんの出入りがある。
人の前では泣くのは我慢していた。
看護師さんはそこを見抜いていたのか、少しづつ私の気持ちを吐き出させてくれて、泣かせてくれた。
さすが看護師さんだと思った。
看護師さんがいつも「大丈夫だよ」とか、「よく頑張ってるよ」と言ってくれたことが私の気持ちを少し楽にしてくれた。
私がこのように悲しみに暮れていた頃、もう一人支えてくれていた人がいた。
義理の母だ。
息子を失うということがどれだけ酷なことか、私は子供がいないからわかることは出来ない。
お母さんからしたら、私が夫と過ごした期間なんてほんの一瞬だろう。
そんな私でさえもこんなに辛く、苦しいのに、お母さんの気持ちを考えるととても胸が痛かった。
義母は、夫が亡くなってからしばらくの間、泊まり込みで私に寄り添ってくれていた。
夫の話をしながら一緒に泣いたり、笑ったりする時間は私にとって救われる時間だった。
夫を心から愛し、失って心から悲しんでいる者同士、共感し合えたのが良かった。
1人で家にいるのがものすごく不安で恐怖だった私は義母が泊ってくれることが嬉しかった。
私はまだ手続きなどで気を紛らわせることができていたが、義母はずっと悲しみに囚われているようだった。
お母さんの心のケアができたらと思って見つけたのがグリーフケアを学べるオンライン講座。
いつかこの講座で学んで、お母さんを元気にしてあげたいと思った。
様々な手続きも半年ぐらいかけて終えることができた。
税理士さんには最後のチェックをしてもらったが、それ以外の手続きを自分の力で終えることができたことに少しだけ自信がついた。
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