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【灘中学校2020年度入試(1日目)算数第9問】一方向性の問題

今回も灘中学校2020年入試第1日から、算数第9問を取り上げようと思います。

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(灘中学校・高等学校、2011年8月28日、Saoyagi2撮影、Wikipediaより)

[問題] 下の図において,AB, CE の長さはどちらも 8cm で,印 〇 をつけた角の大きさは等しいです。このとき,四角形ACDE の面積は三角形ABC の (A) 倍です。 

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さてこの問題、皆さんはどのように感じるでしょうか?方針が立ちますか?

正直なことを言うと、私は少々手間取りました。

この問題は答えを言うとあっけないです。だからと言って、決して易しくはありません。

今回のタイトルにある「一方向性」とは、答えの側から見ると易しいけれども、問題の側から見ると難しい、という状況を表現していると思って下さい。(正確には一方向性関数をご参照ください。)

この手の一方向性というのはときどき見られます。例えば。

100桁の素数が2つあり、その積 N が与えられたとします。

N を 2以上の整数の積の形で表せと言われたら、計算機で求めようとしてもとてつもない時間がかかります。ましてや人間ではお手上げです。

(ちなみに、この問題は量子計算機が実現されれば高速に解くことができます。)

ですが、最初にあげた2つの素数が提示されたら、N を計算するのは計算機なら易しいです。人間の手だと面倒ですが、それでもできなくはない。

素数の話は暗号に応用がありますが(RSA暗号)、今回の問題は別に応用などありません。その意味でつまらない問題ですが、入試にとってこの手の問題は差が付きやすいので注意が必要です。

今回、ヒントとなっているのは角度と辺の両方で同じものがあること。ということは、二等辺三角形がカギを握っているような気がしてきます。そう思いながら考えていくと、次のようなことが思い浮かびます。

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三角形ABCと三角形ACEを一方を逆にして辺ACで貼り合わせると、実は8cm , 8cm, 14cm の辺からなる二等辺三角形になります(9cmの辺と5cmの辺がまっすぐになる理由は分かりますか?)。さらに、三角形CDEと同じ三角形を2個用意して辺DEで貼り合わせると同じ大きさの二等辺三角形ができます(上図)。

このような図を描いてしまえば、これらの三角形は全て高さが等しく、違うのは底辺のみなので、面積比は底辺の長さの比となります。ということで答えは (9+7)/5 = 3.2 倍です。

繰り返しますが、今回の問題は言われてみれば簡単ですが、決して易しい問題ではありません

三角形ABCと三角形ACEから二等辺三角形に気づくかどうかがカギで、カッコで書いた部分=9cmの辺と5cmの辺がまっすぐになる理由が分からないために自信をもって二等辺三角形になると断言ができない。そこがこの問題の難しさです。

与えられた情報をどう使うか、それを見抜くのが大切で、そのような観察眼を根気よく養ってください。一朝一夕では身につきません。

ちなみに、9cmの辺と5cmの辺がまっすぐになる理由ですが、もしならないと仮定すると、三角形ABE(CBE?) そのものは二等辺三角形で、〇がついた角が同じなので、9cmの辺と5cmの辺と辺BEでできる三角形(下図の青い三角形)が 5cm = 9cm の二等辺三角形にならなければいけなくなり、おかしなことになります。(青い三角形が辺BEの下に出来たとしても同じことが言えます。) ですので、9cm の辺と 5cm の辺はまっすぐにならなければいけません。

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