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【開成中学校2021年度入試算数第3問】読解力が全てのような問題

さて、今年の開成中学校の入試問題、算数はこの第3問で終わりです。少ないです。しかしこの問題、めちゃめちゃ長文で、理解するのに時間がかかるかもしれません。難易度は不明。理由はのちほど説明します。

640px-開成中学校高等学校

開成中学校・高等学校
2006年9月25日、SANDO撮影、Wikipediaより

問題

(注) 問題文では①と⓪はどちらも四角で囲まれた1と0ですが、フォントの都合で①と⓪を使わせていただきます。

① と ⓪ のいずれかが書かれたカードがたくさんあります。

はじめに A 君と B 君は同じ枚数のカードを手札として横一列に並べています。審判(しんぱん)には ⓪ のカードが1枚渡(わた)されていて,「スコアスペース」にはカードがありません。

次のような「操作」を考えます。

A 君と B 君はそれぞれ手札の右端のカード1枚を出し,審判は最後に渡されたカードのうち1枚(はじめは ⓪ のカード)を出します。これら合計3枚のカードを次のように移します。
・3枚とも ⓪ の場合は,
「スコアスペース」に ⓪ のカード1枚を置き,審判に ⓪ のカード2枚を渡します。
・2枚が ⓪ で1枚が ① の場合は,
「スコアスペース」に ① のカード1枚を置き,審判に ⓪ のカード2枚を渡します。
・1枚が ⓪ で2枚が ① の場合は,
「スコアスペース」に ⓪ のカード1枚を置き,審判に ① のカード2枚を渡します。
・3枚とも ① の場合は,
「スコアスペース」に ① のカード1枚を置き,審判に ① のカード2枚を渡します。
ただし,「スコアスペース」には古いカードが右に,新しいカードが左になるように置いていきます。

A 君,B 君,審判は,A 君と B 君の手札がなくなるまで上の「操作」を繰(く)り返(かえ)します。
審判に最後に渡されたカードが ① 2枚ならば A 君の勝ちです。
審判に最後に渡されたカードが ⓪ 2枚ならば B 君の勝ちです。
いずれの場合も「スコアスペース」に置かれている ① のカードの枚数を,勝者の得点とします。

例えば,下の図のように,はじめの手札が3枚ずつであるとして,A 君の手札が ⓪⓪① で B 君の手札が ①⓪① のとき,最終的に「スコアスペース」には ①①⓪ が置かれて,審判に最後に渡されたカードが ⓪ 2枚なので,B 君の勝ちで得点は 2点になります。

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(1) はじめの手札が 4枚ずつであるとします。
A 君の手札が ⓪①⓪① で B 君の手札が ⓪⓪⓪⓪ のとき,最終的に「スコアスペース」に置かれているカードを答えなさい。

(2) はじめの手札が 6枚ずつであるとします。
A 君の手札が ⓪⓪①⓪⓪① で B 君の手札が ⓪①⓪⓪⓪① のとき,最終的に「スコアスペース」に置かれているカードを答えなさい。

(3) はじめの手札が 6枚ずつであるとします。
A 君の手札が ⓪⓪①⓪⓪① のとき,B 君が勝ちで得点が 6点になるには,B 君はどのような手札であればよいでしょうか(答えは一通りしかありません)。

(4) はじめの手札が 6枚ずつであるとします。
A 君の手札が ⓪⓪①⓪⓪① のとき,B 君が勝ちで得点が 1点になるには,B 君はどのような手札であればよいでしょうか。すべて答えなさい。ただし,解答らんはすべて使うとは限りません。

(5) はじめの手札が 6枚ずつであるとします。
A 君の手札が ⓪⓪①⓪⓪① のとき,B 君が勝ちで得点が 2点になるには,B 君の手札は何通りありますか。

解答解説

この問題の「操作」が何を意味しているかが分かれば簡単ですが、おそらく理解するのが難しかったのではないでしょうか。

一言で言ってしまうと、「操作」は単なる二進数の足し算です。そして、審判が渡されるカードは繰り上がりを表しています。

それさえ分かってしまえば (1) ~ (5) まで時間はかかりません。瞬殺です。

(1) ⓪①⓪①
(2) ⓪①①⓪①⓪
(3) A の手札の 0, 1 を入れ替えればいいので、①①⓪①①⓪ となります。このとき、スコアカードは①①①①①①となり、審判が最後に渡されたカードが⓪となります。
(4) 二進数で⓪⓪①⓪⓪① 以上の数で ① が1つである数は ⓪①⓪⓪⓪⓪ と ①⓪⓪⓪⓪⓪ の2つのみです。足してこの数になるように B 君に手札を持たせればいいので、⓪⓪⓪①①① または ⓪①⓪①①① となります。
(5) 二進数で⓪⓪①⓪⓪① 以上の数で ① が2つである数は
・⓪⓪①⓪⓪①, ⓪⓪①⓪①⓪, ⓪⓪①①⓪⓪
・⓪①⓪⓪⓪①, ⓪①⓪⓪①⓪, ⓪①⓪①⓪⓪, ⓪①①⓪⓪⓪
・①⓪⓪⓪⓪①, ①⓪⓪⓪①⓪, ①⓪⓪①⓪⓪, ①⓪①⓪⓪⓪, ①①⓪⓪⓪⓪
12通りあります。このそれぞれに対して B の手札が決まるので、答えも12通りとなります。

感想

この問題は、情報系の学科の出身者が読めばバカバカしい問題に思えるのですが、実際の受験生が読んだときに二進数の足し算と気が付くかどうかは、塾講師ではない私には判断できません。

その意味で、この問題の難易度をつかみかねています。まあ、差のつきやすい問題だとは思いますが。

ちなみに、⓪⓪①⓪⓪① = 9で、(2) は 9 に ⓪①⓪⓪⓪① = 17 を足して ⓪①①⓪①⓪ = 26 が得られています。(3) は ①①①①①① = 63 から 9 を引いて ①①⓪①①⓪ = 54 が得られています。すべてこんな感じです。

(1) と (2) は単なる作業なので、書いてある通りに「操作」を行えばできたのではないかと思います。問題は (3) 以降となるでしょう。

それにしても、第3問は二進数に慣れ親しんでいるかどうかで大きな差が出る問題で、偏った知識が点数に大きく差が出る点で入試に適切な問題だとは思えません。

(まあ、このレベルの受験生は二進数を習っているとは思いますが。)

さらに、算数の能力というよりはマニュアルを読む能力の問題であり、趣味の悪い問題だと批評せざるを得ないです。

今年の開成中の算数の問題は、差はつくのかもしれませんが、全体的に見てパッとしない問題、つまらない問題が続きました。去年の問題の方が工夫がなされていたと思います。

あくまで個人的な印象ですが。

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