【開成中学校2020年度入試算数第1問】何を見、何を読む？

突然ですがタイトルに問題番号を入れることにしました。

先週までは西の雄、灘中学校の入試問題を解説したので、今度は東の雄、開成中学校の入試問題を見ていきたいと思います。まずは2020年度入試の算数第1問です。

開成中学校・高等学校
2006年9月25日、SANDO撮影、Wikipediaより

問題

まっすぐ進む 2つのロボット A と B があります。2つのロボットは，下のような指示が書かれた 5枚のカードをそれぞれもっていて，カードがセットされた順にスタート地点から1分間ずつその指示に従って進みます。

カード①：毎分 30cm で進みなさい。(このカードは2枚あります)
カード②：1分間停止しなさい。
カード③：毎分 45cm で進みなさい。
カード④：毎分 60cm で進みなさい。

例えば，カードが①，①，②，③，④の順にセットされた場合，スタートから 2分間で 60cm 進み，そこで1分間停止し，その後 1分間で 45cm 進み，その後 1分間で 60cm 進みます。このようなロボットの進み方をカードの番号を用いて＜11234＞と表すことにします。

今、2つのロボット A と B を同じ方向に進めたとき，A と B の間の距離(きょり)をグラフにしたところ下の図のようになりました。このとき，ロボット A の進み方として考えられるものをすべて答えなさい。ただし解答らんはすべて使うとは限りません。

解答解説

今回の問題は割とよくあるグラフを読み解く問題です。開成中学校の受験生はこんなところで手こずってはいけません。

グラフにはロボット A と B のどちらが先行しているかが書かれていないので、仮として最初に先行する側を a で表し、残りを b として表します。もちろん、(a, b) = (A, B) の場合もあるし、(a, b) = (B, A) の場合もあります。

また、グラフには距離の軸に数値が入っていませんので、1つの目盛が何cm であるかを求める必要もあります。それがこの問題で重要な点です。

以下では距離の単位として cm の代わりに 目盛 を用います。すると、グラフから次のことが言えます。

・0～1分では a は b より分速2目盛速い。
・1～2分では b は a より分速3目盛速い。
・2～3分では b は a より分速1目盛速い。
・3～4分では a と b は同じ速さ。
・4～5分では a は b より分速2目盛速い。

ここで注意してほしいのは、1～2分の間に b は a を追い抜いているので、以降は距離が大きくなる時には b が速く、小さくなる時には a が速いことになります。

さて、カードで実現できる速さの差は 0, 15, 30, 45, 60cm  の5種類であるので、距離の1目盛＝15cm であるということが分かります。(2目盛と3目盛も5種類の数値になければいけないため。)

あとは、考えられるカードの組合せを並べていって、カードの枚数の条件に合うものを選べばいいだけです。

・0～1分では (a, b) = (①, ②)または(④, ①)
・1～2分では (a, b) = (②, ③)
・2～3分では (a, b) = (①, ③)または(③, ④)
・3～4分では (a, b) = (①, ①), (②, ②), (③, ③), (④, ④) のいずれか
・4～5分では (a, b) = (①, ②)または(④, ①)

さて、カード①以外は 1枚ずつしかないので、3～4分以外は次のように決まります。

・0～1分と4～5分は、一方が(a, b) = (①, ②)でもう一方が(a, b) = (④, ①)
・1～2分は、(a, b) = (②, ③)
・2～3分は、(a, b) = (③, ④)

このとき、a と b が余っているカードはどちらも①なので、3～4分は (a, b) = (①, ①) となります。

以上をまとめると、(a, b) = (＜12314＞, ＜23411＞)もしくは(＜42311＞, ＜13412＞) となりますが、ロボット A は a と b のどちらにもなりうるので、＜12314＞, ＜23411＞, ＜42311＞, ＜13412＞が答えとなります。(どのような順番で書いても正解です)

この問題は最初の問題ということもあって難しくありません。できれば数分で解きたいところです。

実際、この原稿も下書きなしで初見で書いていますが、ほとんど考える箇所(かしょ)はありませんでした。解くためのメモすら書いていません。上で書いたことが全てです。

なお、開成中学校の入試では算数の解答用紙に計算過程などをすべて書くことを指示しているので、多少の部分点はあると予想しています。ただし、きれいに書く必要はないでしょう。メモ程度に考えていいと思います。