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92歳母の引っ越し②住み替え先が見つからない!

ようやくサ高住を見に行ける。

2020年コロナ禍となり、老人ホームやサ高住の見学は一時お預けとなった。

しかしその年の秋頃、感染状況の落ち着きをにらみつつという感じで、母の自宅近くのサ高住2件から、見学できるというお知らせをいただいた。

母はこの頃まだ、自分がどこかに住み替える必要があると感じていない様子だった。寝たきりにでもならないかぎり、自宅に住み続けられると思っているらしかった。

あまりショックを与えてもいけないので、私一人で見に行くことにした。

介護が手厚いと閉鎖的、自由度高いと買い物難民に。

1件目、メゾンA(仮)は、比較的介護寄りのサ高住。
個人の居住スペースに、浴室やキッチンがないタイプ。
このタイプのサ高住で資料を送ってもらった物件の中では、個室の面積にゆとりがあること、新築で設備が良さそうなこと、また近くに公園があり環境が自宅周辺と似ているので、母も気に入りそうだと思い、見学をお願いしてみたのだ。


メゾンAがあるのは、私鉄の最寄り駅から徒歩10分くらいの閑静なエリア。
入口に植え込みがあり、おしゃれなホテルみたいな外観だ。玄関フロントもホテルっぽい(ちなみに、母は旅行やお泊りが大好き)。
担当の方が出迎えてくださり、資料を見ながらシステムや料金の説明の後、館内を見学させていただいた。

新築後1年経っていないので、空室も3割ほどあるとのこと。居室を2部屋見せていただき、共用部分の食堂を、メニューを含めて見せていただいた。

居室は6畳程度の明るいワンルームで、もちろんバリアフリー。洗面台とトイレが付き、車椅子でも使いやすい仕様になっている。
壁際(ベッドから使えるところ)とトイレの中に緊急ブザーがあって、もしもの時にはすぐに職員が駆けつけるというシステムだった。

居室も食堂も、母が好みそうないい感じのインテリアで、食事メニューも栄養バランスと嗜好性も考慮した申し分ないものだった。

この施設は介護事業者が運営していて、介護度が重くなっても、必要な介護が十分に受けられるということがメリットだった。
利用料金は、ざっくりといえば

賃料+光熱費+食費+介護レベルに応じた個人負担金

という感じで算出されるのだが、介護レベルが「要支援」の場合は月々7万円追加の費用が発生する。
太字の部分だけで月額26万円、介護費用や個人的な出費を加えると35万円を超える。
夫の遺族年金のおかげで、専業主婦にしてはまずまずいい金額をもらっている母だけれど、月々使える金額は20万円弱。貯金を取り崩していけば、年間150万円以上のマイナスになってしまう。これはちょっと無理でしょう。

さらに「無理」と思ったのは、

  1. 買い物や通院、散歩など、あらゆる外出に必ず職員が付き添い、安全に万全を期す

  2. 面会は玄関わきのロビーで、ビニールシート越しに30分まで(コロナ対応のため厳しくなっている)

  3. 郵便物・配達物・贈り物等はフロントがすべて預かって確認

など、外部からの出入りを完璧にシャットアウトしていること。確かに、安心・安全に暮らせるかもしれないけれど、これは優雅な監獄かも。と思ってしまった。好きな時にぶらっと散歩に出かけたいとか、どこかでちょっとお茶したいとか、母は言いそうだ(たとえ歩行器でも)。

歩行器で散歩中、ちょっとひと休みの母。
自宅近くの公園で。

2件目、メゾンB(仮)は、メゾンAとは対照的に賃貸寄りのサ高住。

自宅近くのバス停から2停留所のところにあり、私なら歩いても行ける。
五日市街道沿いなので、立地はちょっと騒がしいかもしれないが、裏には公園が広がっている。それは、自宅近くで母がよく散歩していた公園の続きなのだ(善福寺川公園です)。

今住んでいる自宅から公園まで200mくらいしかないのに、この狭小道路がなぜか交通量が多い。特に近年はスピードを上げてやってくる自転車が怖くて、母は一人で公園まで歩けなくなっていた。 
メゾンBはすぐ裏側が公園なので、散歩に出やすいかもしれない。

パンフレットで見た感じでは、1DKのマンションみたいな間取りで、特にサ高住らしさはない。「自由に暮らせる」といううたい文句が気になって、見学をお願いした。


玄関で出迎えてくださった方は、このサ高住の運営者というよりは、複数のサ高住の賃貸事業を展開している不動産会社の営業担当の方だった。

メゾンBも、築年数の浅いモダンな建物で、いくつかある空戸の借り手を探しているという説明だった。

さっそく部屋を見せていただく。普通の賃貸同様、各戸が独立した住宅なのだが、入口に段差がなく、車椅子でも出入りできるようになっている。室内も、トイレやバスルームを含め、オールバリアフリーの設計。
必要な場所に手すりが設置され、照明器具のスイッチも、車椅子で手が届く位置にある。
メゾンA同様、緊急ブザーが各所に設置されている。
こちらの施設にはフロントに24時間対応できる職員が配置されていて、緊急の場合には必要な手配をしてくれるということだった。

メゾンAと違って、収納がたっぷり取られ、キッチンもあり、生活の場という感じが強い。入居条件は60歳以上であることだけ。介護が必要な場合は、個別にケアマネを介して介護事業者と契約する必要がある。つまり、在宅介護ということになる。

かかる費用は、

賃料+共益費+サポート費

で、賃料については部屋数・広さや設備のちがいにより様々なバリエーションがある。こちらの施設では、太字部分の合計で19万~24万円の範囲だった。

メゾンBは、入居者として自力で問題なく生活できる高齢者を対象としているようだった。
食堂も併設されているが、提供できるのは昼食と夕食だけで、必要な場合にあらかじめ申し込んでおくシステム。シェフは通いなので、お休みの日もありますとのこと。
つまり、食事は自分で賄えるのが基本ということらしい。

これでは、自力で買い物ができない母は相変わらず宅配に頼らざるを得ないし、冷蔵庫の中がカオス状態も改善されないだろう。
確かに、今住んでいる自宅よりは安全で快適に生活できそうだ、が。


メゾンBの設備がなかなか良く、快適に生活できそうだったので、室内をあちこち撮影した写真を母に見せてみた。
立地も説明し、各戸の平面図を載せてあるパンフレットも同時に見せた。

「どう?なかなか暮らしやすそうだよ。こういうところに引っ越すことも考えてみたら」
しかし、母の答えは
「なんで私がそんなところに住まなきゃならないのよ」
でした。


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