大阪市の土壌対策の支出は違法ではないか、の疑問から

出発点は夢洲の土壌改良への公金788億円支出

2021年の12月、松井大阪市長が夢洲の土壌対策に788億円を予算化するという報道がされた。これまで夢洲の用途変更やカジノ誘致について大阪市との質疑や協議を進めてきた仲間内で、これは従来からの土地売却や賃貸契約と異なり不平等であり※1、法的にも問題があるのではないか、という疑問が上がった。この時点では、過去の事例や実際にどのような契約になるのか全く不明だったため、その後の情報収集や、法的にどのような対策ができるかを弁護士に相談していくことを検討することになった。

※1夢洲などの埋立地の土地売却や賃貸では、契約後土壌汚染等が明らかとなったも大阪市は費用負担をしない「瑕疵担保責任の免責」条項を加え、一切の負担はしてこなかった。

2021年1月21日、夢洲の104カ所でのボーリング調査が発表された。IRカジノ予定地で基準値を超えるヒ素やフッ素が検出され土壌汚染が明らかとなった。しかし、夢洲の1区は一般廃棄物・産業廃棄物、2区・3区は浚渫土砂・陸上発生残土によって埋め立てられてきた。2区・3区の浚渫土砂や建設残土等にも廃棄物や汚染物質は含まれていることは以前より明らかであった。今更汚染がわかったかのような市の説明には、とぼけているとしか思えない悪意が感じられた。

2月16日、IRカジノの基本協定書締結が発表された

  • 2022年2月16日、大阪府は「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備等基本協定書の締結について」を報道発表した。大阪府と大阪市がカジノ事業者である大阪IR株式会社と、IRカジノを国に申請するための契約書を結ぶに至った。この時点では、基本協定の概要(A4 2ページ)しか公表されておらず、「土地課題対策の実施・費用負担」として

  • 土地課題対策費用(地中障害物撤去、土壌汚染対策、液状化対策に要する費用)は、2022年2・3月市会で債務負担行為の議決が行われることを条件に市が負担

  • 土地課題対策費用は、実施協定の締結後、土地引渡し及び建設着工が行われた場合に、債務負担行為(事項・期間・限度額)の範囲内で、支払期日に実施協定が有効に存続していることを条件に、市が合理的に判断する範囲で支払うものであることを事業用定期借地権設定契約等で規定

という記述しか確認できなかった。
3月には大阪市会が開会され、基本協定の議決が行われる。議決が通るという前提で、基本協定書の問題点を検討しなければならない。以前より、住民監査請求や訴訟で相談している弁護士の方に、具体的な相談を始めた。

この時点で大阪府・市は全文公開は考えていなかったようだが、市会議員や市民からも公開をもとめる声が上がり、3月に入ると、協定書の全文の入手が可能となるにいたり、協定書の問題点の検討ができるようになった。
相談を進める中で、土壌対策による市の支出は、違法な財政行為になるのではないかという結論に至り、大阪市とカジノ事業者が契約する定期借地権契約等を止めるための法的措置を取ることとなった。

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