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詩「そこは死者の国」

ねえ、決して届かないものばかり
ほしくなるのは何でだろうね
掴んだ途端に消えるものばかり
好きになるのは何でだろうね
いつだって目の前でバスが出る
眠りの向こうは無味無臭の現実

叱られて泣きながら雨の中
子猫を元の場所へ捨てた日に
バカみたいな世界線で
自分を切り売りする未来が
見えちゃったんだ
見えちゃったんだよ
神様に包まれるなんて
問題外の門外漢
それが、それが、それが、アタシ

「泣いてるの?」
「泣いてないよ。むしろ笑ってる」

「怒ってるの?」
「怒ってないよ。むしろ愛してる」

放課後の教室は死者の国だと
ずっとずっと後になって知った
愚かなキスと惨めな抱擁が
アタシの記憶のタトゥーを増やす

だって夕陽が綺麗だったから
いつかは何もかも終わるのだから
あげても良いかなって思ったんだ
アタシもくれるのを待ってたんだ
宝石みたいにキラキラしていて
絶対に裏切らない何かを
いけ好かないアイツらが
首からぶら下げてる
手首につけてる
指にはめてる
唱え続けてる
得体の知れない何かを

(すべて罠だったんだね、アンタの)

あれからずっと閉じ込められてる
夕陽がこびり付いた放課後の教室に
アイツらはみんな大人になって
アタシだけが取り残されてる
ほしかったものも
してほしかったことも
行きたかったところも
生きたかった頃のことも
全部忘れて、忘れたことすら忘れて
夕陽が綺麗な死者たちの国で
アタシの影だけが立ちつくしてる


※久しぶりに「もとこ」が詩を書いたので、これも久しぶりにnoteへ投稿してみました。今日の夕方、故障したAAAヴンダー(自転車)を修理してもらっている時に浮かんだ即興詩です。タイトルは谷山浩子のアルバム「ここは春の国」の影響だと思います。このアルバムと次の「時の少女」あたりの谷山浩子が一番好きです。作品と全然関係ないけど。

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