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詩「バイオスフィア3」

いつまでも終わらない夕焼けを
スマホ越しに見ている間に
柱時計は腐敗し過去には蛆が湧く
曲がり角の向こうには妄想が潜み
躊躇わない愛という最凶の暴力が
可愛らしい獣の頬袋を満たしていく

そんな句読点の位置にも迷う三月

振り返ればいつだって懐かしい青春の屍たち
みんなゾンビになる覚悟はあるんだよって
三日でへし折れた初恋の無邪気な笑顔
そこには確かに生命の痕跡があって
観測者は実在しない恋人の面影を連想する

自分で自分を抱きしめると永遠が生まれる
その秘密を売り歩く男が半透明になっていく
「いまは戦争がブームだからさ、しよ?」って
隣の席の男子が下心も隠さずに囁くけど
それって殺し合うことがブームなのかな?
それとも殺し合うのを手のひらの上で眺めつつ
『ぼくのかんがえたへいわへのみちすじ』とかを
また手のひらの上に還すのがブームなのかな?

くだらない人がくだらないって吐き捨てた場所に
いつまでも居座ってくだらないって連呼してる
そんな最高にくだらない演奏をいつまで続けるの?
それって病気だよって誰か言ってあげなよ
アタシ? アタシは母の遺言でそういうの触れないの
もちろんママンは今日も元気だけどさ

なにひとつ満足に完結させられない大人たちが
魂のドーピングに頼って無駄に延命している
顔を持たない未来が教室の片隅で揺れてるのを
誰もがチラ見しながらも答案用紙を埋めていく
でも来年は夢の賞味期限も切れちゃうことだし
アタシたちも死んでないふりをやめて
そろそろ掘り返さないといけないよね
クラスの中でいちばん生きたかったサトミを
持ち寄ったUSBと共に埋めたタイムカプセル

まあ
それでも夕焼けは終わらないんだろうけどさ



※先月、B-REVIEWに「もとこ」名義で投稿したもの。他の記事でも何度か書いている通り私の書く詩は「降ってくる」タイプなんだけど、もとこの書く作品は本当に予想が出来ないし意味も分からない。それでも彼女が書いたものは大切にしてやりたいと思っている。


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