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詩「ファミレスの中と外」

寂しさが窓を叩くファミレスで
僕と恋人は神さまの話をした
さらに永遠や海や隠花植物について
お互いの意見を交換した

やがて寂しさが無知を経て憎悪となり
ついには絶え間ない銃声に変わった
僕と恋人は合わせ鏡と歴史について
外の騒音に負けぬ大声で激しく議論した

そうやって時間をつぶしたけど
窓の外の殺戮は終わらない
そもそも、いつ始まったのかさえ
憶えている者はほとんどいないだろう
もしかした僕たちが生まれる前から
ずっと続いていたのかも知れない

やがて中年のウエイトレスが
ニコニコしながらやってきた

「私の息子も殺されたんですよ」

彼女はそれだけ言うと
召集令状をテーブルに置いて去った
僕は肩をすくめると
恋人に「さよなら」を告げて
入口のドアへ向かった
(なぜか少しだけ眩暈がした)

「安心して、今日は私の奢りだから!」

そう叫んでさっきまで恋人だった女が
僕の母親そっくりの微笑みを浮かべた

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