先輩の秘密-#2-

翌日、私は昼過ぎから学校に向かった。
いつもサボっているわけではないが、たまに気分で遅刻していく。
校庭についた時、ふと屋上を見上げた。

昨日、あんなとこでしちゃったんだ…。

ちょうど私たちが交わった場所は隠れて見えないが、一歩場所を間違えれば下から丸見え。部活動の生徒や先生たちに見られていたらと思うとゾッとするが、それと同時に少し興奮している自分がいた。

教室に入ると、昼休憩だった。
「ももちゃん遅いじゃん!これ、先生が職員室に持ってこいって言ってたよ」
クラスで唯一仲の良い夢香だ。
プリントを手渡され、私はそのまま職員室に向かった。

「おぉ、栗原!来たか。お前サボんなよ、今大事な時期だろ」
そういえば大学受験の季節に差し掛かる。うちの学校は大して偏差値は高くないが、進路に向けてそれなりに勉強する生徒は増えてきた。

「うざいな。いいよ別に、受かる大学しか行かないし」
「お前な!そんなお人形みたいな顔して先生にうざいとか言うなよ!泣くぞ?!」
「あー、うざ」
担任としばらく喋っていると、廊下の端から男子生徒が1人こちらに向かってくるのが見えた。朝日だ。黒縁メガネに目にかかるような前髪をおろしている。やはりメガネ姿は少し地味だ。
この学校であいつのメガネを取った姿を見たことのある生徒は何人くらいいるんだろうか。ふとそんなことを考える。

朝日も私に気づいたのか、目があうが挨拶するでもなくそのまま職員室へ入っていった。

無視か。なんで私がドキドキしてんのよ…

いつのまにか心臓が高鳴っていたことに気がついた。
あんな明るいところで恥ずかしい姿を見られたことと、手や唇の感覚がまだ残っているせいだ。

「じゃあな!明日は遅刻すんなよ!」
「はいはい」
私は職員室をあとにした。

今からどうしよっかなー
なんか授業受ける気分じゃなくなっちゃった。屋上行こうか…あ、またあいつ来たらなんか変な感じだよね。今日はやめとこっかな。

そんなことをボヤーっと考えていたら後ろから声がした。

「せーんぱい」
振り返るとやつがいた。
「おはよ」
私はぶっきらぼうに返す。少し緊張してる自分が嫌だった。

「昨日は楽しかったですね。ちゃんと帰れました?」
人懐っこい笑顔を無邪気に向けてくる。まるで昨日は一緒にお茶をしたかのようなテンションだ。

「余計なお世話」
私は思わず顔を背ける。

余裕そうで腹が立つ。

「気持ちよかったですか?またしてあげますよ」
「こんなとこでやめてよ!誰かに聞かれたらどうすんの」
悪気なさそうにする朝日をキッと睨んだ。

「はは、先輩可愛い。じゃあ小さい声で喋りますね」
そう言って朝日が前傾姿勢になって顔を私の耳元まで近づけた。スッと長い指で私の髪をすくい、耳にかける。

「昨日、すげーエロかったですよ」
低くて甘い声が鼓膜に響く。
私は思わずバッと体を離した。耳元が熱くなるのを感じる。

びっくりした、なんなの今の声。

「あれ、先輩顔赤いよ。照れました?」
楽しそうに笑う朝日。
どんだけ女慣れしてんの?私、後輩だと思ってだいぶ甘く見てたけど。このままじゃ、完全にペース飲まれちゃう。

私が黙っていると
「今度は”俺の”でいってくださいね」

そう耳元で囁いてにっこり笑い、去っていった。


私は呆気に取られ、しばらく彼の後ろ姿を見つめていた。


—-To Be continue—-

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