居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P30
2.野崎 颯 居酒屋ランチタイム⑩
トレイを片づけた後、ボク達はもう一度電車に乗った。
うどんを食べた方の電車じゃない電車に乗ってみた。
だって他の電車の中も見てみたかったし…
でも、うどんを食べた電車の中とほとんど変わらなかった。
違う所は椅子の色。
うどんを食べた電車は椅子が赤かった。
そして今回乗ってみた電車の椅子は青い椅子だ。
ボクは色の違いなんて気にしない!
空いている席を見つけたから肘掛けからテーブルがどうやって出てくるのか肘掛け周辺をよく調べた。
確かにテーブルの出し方の説明がイラスト付きで書いてある。
えっと…こうかな?
こうするのかな?
書いて有る絵を見ながら肘掛けの一部を引っ張ったり回したりしてみるとさっきと同じようにテーブルが出てきた。
「お母さん。テーブル出せた」
ボクは嬉しくなってお母さんに報告する。
「ん。よくできました」
お母さんがほめてくれたのでボクは何回も出したりしまったりを繰り返して遊ぶ。
優香もすぐにできるようになって出したりしまったりして遊んでいる。
何回か出したりしまったりして遊んで仕組みがわかった頃、お母さんが声をかける。
「そろそろやめなさい。他のお客さんが乗ってきたら大変だからね」
ボクたちはあわててテーブルをしまったままにした。
「ねぇねぇ、お母さん。どうやったらイスがクルッて回るの?」
「え? あぁそれはね…」
お母さんはイスの背もたれの部分を指さす。
「ここに方法が書いてあるの。わかる?」
テーブルを出す方法と同じようにイラスト入りの説明が書いてあった。
そして他のお客さんの迷惑にならなさそうな席を選んでゆっくり回して見せてくれた。
運良く他のお客さんもまだ近くに居なかったからボクと優香も何回かイスをクルッと回して向かい合わせの席を作ってみる。
なんか楽しい!
「さあ、もういいでしょ。ランドセル買いに行くよ」
お母さんがちょっとイライラしながら呼ぶ。
少し名残り惜しかったけどボク達はイスから離れた。
何の気無しに電車の外を見る。
窓の外に書いてあったのは富士山だった。
「お母さん! 富士山! 富士山が見える」
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
2.野崎 颯 居酒屋ランチタイム⑪
へ続く
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