『ブラック・ロータス』(凋叶棕)の考察(ネタバレ)


」5曲目の曲で示しているのは、「自分の老いを感じて、外法の道を歩んだ聖白蓮」、そして現実の描像としては「プロジェクトに何らかの問題が発生し、誰も止めることなく、外法の手段をとっていった」ということではないかと思います。

なお、ロータスは蓮の英語です。そして、蓮には

蓮は泥より出でて泥に染まらず

というように周囲の悪い環境に汚されること無い気高さの象徴ではあります。しかし、それが黒くなった=汚れていったという曲です。

背景概説

東方Projectは自らの作品の設定や音楽をもとに一定のガイドラインのもと自由に二次創作することを推奨しています。

この曲の登場人物である聖白蓮はざっくりと平安時代の女性で、特殊な術で不老長寿をえたという設定でお読みいただきたいです。

歌詞分析


今際のときにさえ
その道を説くこと
その心に幾ばくかの影 在れば或いはと

ここでいう今際の時というのは問題が発生してプロジェクトが失敗=死に接するときです。プロジェクトが失敗しそうなときに誰かが道を説くことがあれば、或いは外法の道を歩まなかったのかもしれない。

​いとしきその名を呼び
どれほど惜しんでも
その声が此方を向くことは 終ぞ此の時
ありはしなかった

曲では誰か他人の名を呼んでいるよう歌っていますが、何かしら想定通りに行かなかった。結果がこちらを向いてくれなかった。

せめて 最後には 応える言葉を
一言二言さえあれば
あるいはそれが かなしむ胸中
取除いて くれたかと
嘆きの哭 呼びさますことも
できずに 届かぬ距離を錯覚う

少しでも想定通りに行くことがあればよかったのだが、その様子もない。想定に比べてあまりに遠い。ただただ悲しいのと先がどうなるのかが不安となる。

私はこうして独りになっていった。

想定から遠くて孤立感をつのらせていった。

もう、誰もいない。独りになる。
それが恐ろしいのかと。自問えば。
そうでもあり。そうではなく。
ただなぜか戦慄く手の。
わけのわからぬまま。止められなく。
その衝動に埋もれながら。
私は何を怖れている。

とにかく恐怖とざわめく衝動に駆り立てられる。

握り締めていた手を
開いて見つめれば
見る影無く枯れ細った手に 老い白んだ髪

老いていったということを示す内容ですが、プロジェクトとしてみれば、自らの始めたプロジェクトは想定違いの醜いものだったということを示しています。

私はあなたほど
強くも無ければと
この心に幾ばくかの影 振り払うなど
できはしなかった

あなたというのは先にプロジェクトを成功していった人たちでしょう。後から述べる伝記には失敗から学んでいった話もあるでしょうが「影」を追い払うことができなかったと。影というのは外法を選ぼうという自らの悪意でしょう。

考察

現実に照らし合わせてということですが、気になる人物がいます。鋼の錬金術師のショウ・タッカーと、STAP細胞事件の小保方晴子氏です。

鋼の錬金術師のショウ・タッカーというのは、作中で人語を話す動物を作ったという研究者です。ですが、人語を話す動物というのは、禁忌である、動物と人間のキメラだった。まさにこの場面ですね。

小保方晴子のSTAP細胞事件というのは2014年に起きた研究捏造事件のことです。

(小保方晴子氏は)2014年1月末にSTAP研究を発表し、「リケジョの星」「ノーベル賞級の発見」として一躍時の人となるが、STAP論文や博士論文において様々な研究不正の疑義が発覚。2月17日に理化学研究所やネイチャーが本格的に調査を開始。3月28日に早稲田大学も博士論文について調査委員会を立ち上げ、3か月程で報告を行うと発表した。

なお、「」頒布は2014年8月のC86です。つまり、STAP細胞事件の直後に「屠」配布がされているということです。後述しますが、他にも強い敵に立ち向かう英雄としての様子『心強きもの』、散々ちやほやされるが、その後の転落 『げんきになったときのうた』、誰か愛しかったはずの人を巻き込んでの死『しあわせのことば』といい、「屠」は小保方氏の様子を下敷きにしているようにも見えます。

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