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嫉妬はしても「仕方ない」ー嫉妬インタビュー3 ミツキさんー

「嫉妬インタビュー」とは、夢乃くらげがいろんな人に「あなたにとっての嫉妬とは何ですか?」ときいているインタビューです。

今回、インタビューさせていただいたのは30代のミツキさん。

一乗寺ブックアパートメントというシェア型書店にて、棚主をされています。

元々、面識はあったのですが、しっかりお話しするのは初めてでした。ミツキさんはクリームソーダを食べつつ、インタビューしました。実はインタビュー中に何かを食べるのは、わたしのインタビューではよくあることです。それくらい緩くやっております。

今回はどんな話しが聞けるのか。ワクワクしながらインタビューを始めました。

最初はみなさんに同じ質問をしているんですけど、そもそも嫉妬しますか?
昔は結構あったんですけど、最近はあんまりしなくなりました。徐々にしなくなって、30代に入ってからはほとんどないです。

昔はどういうときに嫉妬してましたか?
よく覚えているのは、大学院のとき、同じコースにめちゃくちゃみんなから可愛がってもらえるタイプの人がいたんです。天然っぽいところをみんなにいじってもらえたりして「いいなぁ」って思ってました。「嫉妬」としてパッと浮かぶのはそれですね。

子どものときはどうでしたか?
子どものときは、嫉妬なのか羨ましさなのかよくわからないけど、不愉快な感じがあってモヤモヤしていました。「なんであの人だけ」みたいなものがこびりついていたので、嫉妬だったのかなと思います。

「不愉快な感じ」っていうのは「相手のいいところを奪って自分のものにしたい」という気持ちがあったということですか?
そうですね。不愉快の元は自分が持っていないものを持っているということだと思うんですよ。「羨ましい」だと自分も手にできそうなんだけど、「嫉妬」だと自分には届かないから不愉快になるみたいな。

30代に入ってから嫉妬が無くなってきたということでしたが、環境の変化などはありましたか?
確かに仕事が変わったりしたけど、それはあんまり関係ないと思います。

実は若いときに「30歳になったら死ぬんだ」と思うようになった出来事があったんです。
高校生の時なんですけど、ある日、ワンダーフォーゲル部の先生がすごく暗い顔をして教室に来たことがあったんですね。理由は登山仲間が落雷で亡くなったから。その亡くなった方が30歳くらいで。
それを知って、普通は「かわいそうだな」と思うところ、わたしは「一瞬でパッとキリの良いところで死ねるのっていいな」、「長々と生きても仕方ないし、やりたいことがあるわけでもないし、30ってちょうどいいんじゃないか。30歳になったら死のう」と思ったんです。

でも、30歳になっても自動的に死ぬわけじゃないし、急に消えるわけでもないしって思ってたんですけど、30歳になってリセットがかかったような気持ちになりました。いろんな感覚が変わってきたと思うし、嫉妬もその中のひとつなんだと思います。

30歳になって自分の人生がリセットされて、わかりやすく変わったところってありますか?
30歳までは、できるだけ人に影響を与えないように生きていこうと思っていたんですよ。無害な人間になりたくて。良い影響を与えるならともかく、悪い影響を与える人になりたくないなとずっと思ってました。
だから、あんまり人に関わらないほうがいいし、目立たず記憶に残らないほうがいい。できるだけひっそりと過ごすようにしてました。空気になりたかったんですよね。いてもいなくてもいい人くらいのほうが、安心だし楽だなって思ってました。

でも、30歳くらいからは「結局、悪い影響も与えているだろう」と思うようになって。「わたしが何の気なしに言ったことで『認められた』とか『否定された』とか他人は思っているんだろうな」って思うと、影響を与えないのは無理だから、「影響を与えないように」とか、そこら辺を捨てたりしました。

30くらいまでそういう生き方をしてくると、急にやりたいことが出てこない気がするんですけど、どうですか?
やりたいことはいまだによく分かってないですね。そのときの突発的な思いで動いてしまう感じなので、やりたいと思っていても5秒で飽きることもあるし、気付けば「やりたい」と思ってなかったのに5年くらいやってるということもあります。やりたいことをやるというか、直感で動けるようになりました。

これまではしんどくても仕事を続けなきゃとか、頑張らなきゃとか思ってたんですけど、「別にいつやめても良いじゃないか」っていう感じになったりとか。実際に1年で仕事やめたこともありましたし、嫌な言い方をすると無責任になったなぁと思います。

今のほうが楽だったりしますか?
確かに人の顔を見て動いていた時より、身体も心も軽くはあるんですけど、その分、不安定なので「重荷が取れた」というほどの楽さではないかなと思います。
これはこれで、落ち着けないからしんどいみたいなところあるし、落ち着こうとしないようになってしまっているので、いつでも揺らぐっていう不安みたいなものはあります。

今は嫉妬しないってことでしたが、全くしないですか?
ごくごく限定的にします。
他人に対して「同族」っていう感覚がなくなったんですけど、嫉妬って自分に似ている人にしかしないと思うんですよね。同じようなレベルで、同じような属性を持っている人間だから嫉妬する。でも、「結局、人って全部違うしな」と思って「同族」と思える人がいなくなったんですよね。

比べたりすることもなくなりましたか?
比べはするんですけど、でも「あの能力が欲しい」とか「ああいうふうになりたい」とかじゃなくて「違う世界の人間だしな」みたいな感じのほうが強くなっちゃって。「手に入るもの」っていう感覚じゃなくなったというか。同じ社会にはいるけど「あの人の世界とわたしの世界は違うんだ」、「違う世界のものを欲しがっても無理だよね」。そんな感覚になってきています。

その話を聞くと孤独な感じがするんですけど、そういうものは感じますか?
孤独感はすごく強くなったなと思います。30歳までは「自分がしんどいのをわかってほしい」とか「自分が頑張っているのを認めてほしい」とか、むちゃくちゃ思ってたんですけど、今はそれを思うのと同じタイミングで「まぁ、無理だしな」みたいなものが出てくるようになりました。すごい世界が閉じていってる感じがしますね。

「閉じてる」っていうのは人と自分が違うという前提があって、どっちかっていうと自分の方に興味が向いてるという感じです。もともと内向的ではあるんですけど、自分の中に世界がある感覚がするんですね。だから、「閉じてる」っていうのは、その世界を自分で覗きに行くみたいな感じに近いです。でも、発見とかがあっても言う対象がいないんですよね。この世界には自分しかいないから。

だから、インタビューとかで話せるってなると、自分の中から出てきたものを伝える機会があるんだって、ちょっと嬉しかったりしました。

周りに合わせたりしていた生き方ってしんどかったなと思いますか?
しんどいはしんどいですね。でも、自分なりに安全な方を選んだ結果、それだったような気がします。他人の感情の中まで踏み込んでいったりすると、自分が傷ついたり、感情の波に耐えきれなくなっちゃうとこがあるんです。今もそうなんですよ。なので、映画とかドラマとか見れなかったりします。そういうことを考えると、踏み込まないでいいラインが周りに合わせることだったのかなって思います。

今は人に対する興味ってどうですか?
相変わらずないんだろうなっていうのがすごくあるんですけど、面白いと思うことは増えて、「こういう面白い人がいるんだな」って、それくらいの関心は持てるようになってきてます。
関心っていう中では、かなりライトなほうだと思うんですけど、全くないわけじゃなくて少しは出てきてるのかなと。他の人の世界が面白く見え始めたみたいな感じですね。

精神的な余裕が出てきたんですかね?
なんていうか、そういう感じではないですね。やっと「他人にも自分にも世界がある」っていうところまで理解が進んだっていうのが正しいのかな。逆に「その人に世界がある」と思ってしんどくなることもあるんですけど。
「余裕」っていうと俯瞰的に見れてるイメージがあるけど、そういう感じではないかなと思います。

30歳ってすごい節目だったんだなと思うんですけど「それまでは頑張ろう」みたいな気持ちはありましたか?
「頑張ろう」はなかったです。ただ、30歳まではすごく惰性だった気がします。30歳になったら死ぬから。「30歳で死ぬ」ってなったら「30歳までに何をやろう」ってなるんじゃないかと思うんですけど、わたしはそこまで頑張っていたわけじゃないので。
30歳になってからは「30歳になったら死ねる」というのが「いつでも死ねる」に変わって、乱暴な言い方をすると「いつでも死ねるから何やってもいい」みたいな感じになりました。

30歳までは「そこまでは生きる」だけど、過ぎてからは「死んだら死んだでそういう人生だったんだな」っていうふんわりとした感じがしますね。
ふんわりはしてるかも。ふんわりした感じの根底は「どうでもいい」ってことなのかもしれないです。「別にもう死んでいてもおかしくないんだし、どうでもいいか」みたいな。
30歳までにできなかったこともあるけど「できるのかな?できないのかな?」と思ってたのが、30歳超えちゃったら「できなかったね」って思うようになりました。「いろいろ悩んだけど、できなかったら仕方ないよね」って。

あと、30歳が区切りに関しては、「女の子になりたかった」っていうのも大きいと思います。思春期の少し前から女の子になりたい欲が強くて、女の子らしい字が書けるようにとか、女の子みたいな声が出せるように練習したりとかしてたんですけど、そのときのイメージが「女の人の盛りは30歳まで」みたいな感じで、当時は「結婚するなら30歳まで」とかっていう話はよく聞いたし。そういうのも影響しているかもしれないです。でも、別に女の子になれるわけでもないし、男であろうが女であろうが関係ないんですけどね。

30歳になってから何年か経ってますが、この何年かの間に「30歳過ぎて良かったな」って思うことはありますか?
結構、ありました。30歳の時に保育士養成の専門学校に転職して、専門学校の先生なんで前に出ないといけなくなったんですよ。授業で前に立たないといけないのもあるし、他の高校に出向いたりとか、いろんな保育園に行ったりとか。イベントを企画してやるとかっていうのもしてたんで、ハロウィンになったらお菓子配るとか、仮装したりとかもして。30歳を超えてタガが外れたというか、それのおかげで楽しめたっていうのは、あるにはあります。外に出てキャラを出して遊べるようになったっていうのは、30歳超えてからなのかな。

もし、明日死ぬってわかってたら何をしますか?
それ、よく聞かれるんですけど、何もしないと思います。普通にいつも通り生活するんじゃないかな。前は「身辺整理しておこう」とか「最後だからお手紙書こう」とか考えていたんですけど、今は「明日死ぬよ」って言われても「明日死ぬんだ、へぇー」のまま終わらせていきそうな気がします。
明日死ぬってなったら相手にどう思われるかとかない次元になっちゃうから執着を捨てられるし、「わたしの世界は明日終わるけど、君たちは自由に生きてくれ」みたいな。そんな感じになっちゃうかもしれないです。

他のものに対しても、執着心はないですか?
たぶん、むちゃくちゃ執着はあるんですけど「執着しても仕方ないよね」って思っている自分がいます。なんだかんだ言っても自分の世界を認めてもらいたいし、好きになってもらいたいっていうのがあるから、一緒にいたいとかっていう気持ちもめちゃくちゃあるんですけど、結局、「自分の世界は自分にしかわからないし、自分しかいないし、他人と完全に理解できるものではないから仕方ないよね」っていう気持ちがあります。

最後に言いたいことがあればお願いします
いろんな人がいていいよねって思ってもらえたら嬉しいです。今ってどうしても能力とか、お金を持ってる持ってないとか、そういうところで見ちゃうと思うんです。そっちの方が理解しやすくなっちゃってるから。その人の奥の方まで見ようとか、考えを知ろうとかしなくてもやっていけるってすごく思ってて。
でも、いろんな感覚の人がいるし、自分みたいな個性的な人もいていいっていう感覚をみんなが持てたらもっと楽だろうなっていうのがあるので、そういったことを感じてもらえれば嬉しいなと思います。


取材を終えて

今回の取材で印象的なのは、執着はあるけど「仕方ない」と思うところでした。矛盾しているけれど、それが人間味を感じさせて良かったです。
それと、執着はすごく強いものだと思っているので「仕方ない」でコントロールしているのは珍しい気がします。葛藤なのに葛藤と言うほどの強い感情には聞こえない感じがしました。

これはまだミツキさんが自分の嫉妬について、感知していないだけなのかもしれませんが、嫉妬で苦しんでいる人から見れば羨ましい状態のようにも思いました。
また、諦めているという感じではなく、「仕方ない」と思って流しているような感じも独特で、ミツキさん特有の感情の流し方、付き合い方みたいなものがある感じがしました。

なので、「いつ死んでもいいや」という気持ちにも、ネガティブさはあまり感じませんでした。ミツキさん流の感情との付き合い方に照らし合わせると、そういう言い方になるだけなんだろうなと思います。
今回もすごくその人らしさが見えるインタビューになって面白かったです。

「嫉妬インタビュー」では、随時、インタビューさせてくれる人を募集しています。あなたの嫉妬をぜひ聞かせてください。詳細はSNSのDMからお願いします。

今回、インタビューさせてくださったミツキさん。本当にありがとうございました!
少しずつ記事を更新していく予定なので、良かったらまた読みに来てください。それでは、またお会いしましょう。ばいばい。

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