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鬼ヶ島~瀬戸内国際芸術祭2019~

昨年の夏、瀬戸内国際芸術祭2019に行ってきた。
まず高松に着いてから真っすぐ北に20分、フェリーに乗って鬼ヶ島と呼ばれている女木島を訪れた。

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芸術祭出品作品も大変魅力的なものが多くあったが、何よりも鬼ヶ島大洞窟に心惹かれた。

その大洞窟は、1930年に小学校教師をしていた橋本仙太郎氏によって発見された。桃太郎伝説を研究していた橋本氏が当時瀬戸内海を荒らしていた海賊たち=鬼の根城が女木島の大洞窟だと発表した。

洞窟の内部は暗く湿っていて、低い洞穴形状が400mほど続いている。

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もちろん入るときに、昔この地方に伝説上の鬼が存在していたと信じていたわけではないけど、実際内部の説明を読むと、「人間」の生活が色濃く残されていた。知性も感じられるし、統制のとれた人間関係がそこにあったことを想像させる。地下水貯蔵のための部屋としている点、最奥の一番広い部屋をトップの部屋としている点などがその例だ。

写真は撮れなかったが、仏間もあった。キャプションを読むと、鬼たちが祀っていたものではなく、後世の人々が鬼によって殺された犠牲者の冥福を祈るために安置されたものだと記してあった。想像に過ぎないが、鬼が実際に異国から来た人間だったとして島の人々がそれを認めてしまったら、子どもや若い女の人がさらわれたときに警察などを介入させて争うことになる。そうなったときのリスクを考えて鬼によってさらわれた、だからしょうがないと納得させるために鬼の仕業だと伝えていたのではないか。
ただここが負の遺産というわけではなく、女木島の人々が色んな衝突や摩擦を経て、多くの民話や祭りなどの文化芸能を発出してきた歴史がある。カラフルで、強いパワーを感じる島だった。

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※木村崇人『カモメの駐車場』2010,2013

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※リョン・カータイ+赤い糸『ウェディング・ショップ』2019

芸術祭出品作品を鑑賞しているとき、ボランティアに参加している中高校生の女の子たちと雑談をした。岡山からボランティアをするために学校の同級生数人でフェリーに乗って手伝いに来ているという。
昔からあるお祭りのような感覚で、知り合いの先輩が手伝っていたから自分も自然に手伝うようになっていたと言っていた。

先述の大洞窟も、広州の採掘技術によって出来たものだという調査がある。瀬戸内海は昔から貿易と人的交流の要だった。「他者」を受け入れる土壌が備わっているのだと思う。

次の芸術祭は2年後の2022年。その頃にはまたどういう方向に世界が変わっているか分からないけれど、女木島をはじめとする小さな島々から、人が常に動いて交流し続けることの意味や視座を学ぶきっかけとなればいいと考える。


#瀬戸内国際芸術祭

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