ショートショート　未来の私へ

ハロー聞こえますか？

貴方への手紙はこれで5通目になります。
1.2通は渡したけれど、3.4通目は渡せていないね。
ここで5通目になる手紙を貴方に、したためます。


私ね、ちゃんと好きになった。
ちゃんと好きになれた事が嬉しかったよ。
事実を受け入れて認めて、それでも好きでいれて、幸せだと思った。

だからあの時、貴方が私のために泣いてくれた事、嬉しかったよ。
今思うと、あの時に荷物を手放して、抱きつくべきだったかもと思う時が沢山ある。

未来の私のためだと思い込むようにして生きている今、
私はぽっかり穴が空いているようです。

きっと楽しすぎたんだと思う。
合いすぎたんだと思う。
匂いも声も、考え方も、仕事の顔付きも、酔った後のふにゃふにゃの笑顔も、
作ってくれた料理も、触ってくれる体温も、
愛過ぎたんだと思う。
こんなに想えるなんて幸せすぎたんだと思う。

きっとこれから、
似た匂いを電車で感じては、目で探して、
あの歌を聞けば、声を思い出して、
誰かと手を繋ぐ時には体温の違いに違和感を抱いて、
あの和菓子も今食べたらそこまで美味しくは感じないんだろうな。

それでも私が今の道を歩むのは、
何故なんだろうかと、自問自答を繰り返す。

きっと答えはすぐに出ない。
連絡したい思いを無いことにする事が正しいのか、私のこれからの幸せに繋がるのかも分からない。

でも私の幸せを願って見送ってくれた貴方がいるから、私は幸せに成らなければならない。
それが最大の愛だと気づいたから。
私はあの時とは違う涙を流しながら、貴方と歩む道とは違う道を選ぶことにする。


分かるのは数年後か、数十年後か、死ぬ前かも知れない。
何が正解かも、今の私には分からない。

ただこれだけは分かる。
好きだった、じゃない。
きっとこれからも嫌いにはならない。

沢山の好きをありがとう。
貴方がてっぺんに幸せになれますように。

ハロー私、聞こえますか？

貴方は今、幸せですか？

チョコレートに牛乳