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セフレ以上、恋人未満の結末。短編小説

LINEの音が鳴る。ああ、彼からかも…。

もし、そうだったなら。きっと私は"焦らす"様なことは出来ずに、すぐに笑顔で返信をするだろう。

そんな事は無い。理解している。

大きな期待を寄せつつ、待ち遠しい様な、でも、もしそうなら困る様な。
ハラハラやドキドキとはまた違う、期待を胸にLINEをチェックする毎日を繰り返す。

白黒の世界からカラフルな世界へ連れて行ってくれるLINEを、私は毎日心待ちにしている。



ああ、もし彼からなら嬉しい。"けれどー"

そう、私達の中は"けれど"が付くような関係で、私が望んだ関係では無かった。



この人が、好きだ。   

そう気付いてしまった時には遅かった。私は彼の沼に入り込んでしまっていた。

あれから会っていない日を指折りで数えては、「私から連絡しても良いかな?したら迷惑かな?」と毎日1回以上悩む。
「好きだよ」と抱きしめられる妄想も、匂いや肌感覚のリアル感が薄れてきて飽きてきた。


こんな悩まされてる彼と例え上手くいっても幸せになれないだろう、そう頭では分かっている。
が、どうしても、どうしても、会いたい。話したい。抱きしめられたい。



頭では理解しているが心は納得出来ていない。
分かっては、いる。
また会ったところで、私は幸せにはなれない。





彼の日常に私は居ない。これが"彼の普通"なのだろう。
でも、どこか、どこか淡く、心の中で願っている私が居る。

例えば
1回でも私を思い返すことは無いのかなとか。
結局ピザ一緒に食べれていない事覚えてるかなとか。
私みたいに会いたいと思わないのかなとか。





ひと月前のあの頃を懐かしく思う。
友達の様な、でも女扱いをしてくれる関係。

映画は勿論、美味しい料理屋に連れて行ってくれるし、車で送迎までしてくれる。

久しぶりの恋に落ちた私が彼を好きになるには十分過ぎる理由だった。


腕組んだり、手を繋ぎたいな。
家に上がるのって軽い女にみえるかな?
付き合ってもないのに、LINE毎日したらウザがられるかな?


そんな事を思っては、脳内の天使と悪魔が囁いた。
"どうせ恋人にはなれないんだから、そんな後で自分が傷つく期待をするな"と。



それでも、彼の全てが心地よく、
もし彼も私に好意があると嬉しいな、彼女に選んで欲しい期待を寄せていた。



それが失敗だったと後から気づいた。

私からの好意があるのを感じたのだろう。
簡単に、偽りの、好きや可愛いを繰り返され、
私の望みとは間反対の
男性的に言う性欲処理の相手として、私は選ばれた。


ああ、私、彼にとってはただのセフレなのだ。

そう実感した頃には、身体を重ねただけの情が残り、まるで鎖で繋がれた"偽りの好き"を信じきってしまっていた。




LINEの音が鳴る。
彼からなら嬉しいな。"けれどー"

けれど、私は彼と身体の関係になりたいわけではない。
それを望んでいない事をきっと理解されてる彼なら
私には連絡してこないだろう。


だからこそ悩む。
優しさに包まれて終わる関係、これで本当に良いのか。


ああ、私は今日も夢を見る。
あの頃みたいに捨てられる夢ではない。
「ピザ食べに行かない?」と誘われるLINEが来る期待の夢。
抜け出せない関係。
これが、セフレ以上、恋人未満の結末である。







チョコレートに牛乳


セフレ以上、恋人未満。
より続編の短編小説になります。


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