ポイ捨てタバコ/短編小説
トラック男が手にしていたタバコは、
灰をポンポンと何度も落とされ、最後には窓から放たれた。
火が点いたままのタバコは、
次にその道路を走る車の風にのって遠くへ飛ばされ、
またその後ろを走る車によって踏み潰された。
円柱でトラック男の精神を救っていたはずのタバコは、
平たい火の消えた、ただのゴミとなってしまった。
*
先ほどのトラック男は3時間後にはまたタバコを手に取り、数分後には慣れた手つきで窓の外に放り投げた。
同じように、後ろの車たちによって火は消され、ゴミとなる。
彼は1日で道路に4本もの吸い終わりそうな、火の点いたままのタバコを窓から投げた。
*
先程まで第一線で、今世紀最大の力を魅せてくれていた白いタバコは、
瞬く間に裏切られ、いつの間にか黒く平たいゴミとなった。
こうなれば厄介だ。
ゴミとなったタバコを触りたいと思う者は少ない。
きっと捨てたトラック男でさえも、黒いタバコを拾おうとはしないだろう。
このタバコの行方は、限られてくる。
何度も踏まれ、雨を凌ぎ、道路にへばりつくのか、
呆気なく排水溝に落ちるのか、
汚い物だと思われ人に踏んですらもらえないのか、
数ヶ月後にボランティア団体によって拾われるのか。
ゴミとなったタバコには選ぶ権利はない。
ただ願いとしては、
早く誰かによって拾われ、ゴミが集まる場に運ばれ、普通に捨てられる事だろう。
---
「またタバコの吸い殻被害だ」
そう母は呟いていた。
私の家は大きな道路に面しており、家の前にタバコの吸い殻が転がっている。
家の前に、だ。
私の家は禁煙者ばかりでタバコを触ったことがない者もいる。
それなのに、誰かによって、家の前を汚される。
きっと風で飛んできたんだろう。
仕方ないか、と母は毎日掃除をするが、しない日が訪れた事は無い。
道路に落ちていることも許せないが、
母の大事に育てている植木に吸い殻を入れるのは、人としてどうかと思う。
もし息子の筆箱にタバコの吸い殻が入っていたら嫌だろう?
分かりきっている事を「ゴミ箱探すの面倒くさい」欲で、他人の植木に捨てるなんて、腹立だしい。
私の家に嫌がらせをしたいのなら、もっと堂々としたら良い。
月に数回だけ、しかも違うメーカーのタバコが入っている限り、
「丁度いいところに植木鉢があるな」と思って捨てている者が居るのだろう。
人が手をかけて育てているのも知らずに。
その想いが分からないなんて可哀想な人だ、と私はずっと思っていた。
*
大学生になり、私の目の前で友達がポイ捨てをした。
内心、殴りかかろうかと思ったが冷静になり、
私は当たり前のように質問をした。
「そのタバコ、踏んだ後は拾わないの?」
何言ってるんだ?と言う顔で見てきたが、
自分のした行為が恥ずかしかったのか、すぐに彼はゴミとなった平たいタバコを拾い、離れたゴミ箱へ捨てに行った。
「そのまま道路に捨てて笑っていたら、友達やめるところだった」
戻ってきた彼にそう言うと、
そんなに?と驚かれたが、
こちらからしたら、そもそも歩きタバコをしていることすら幼児が危ないと感じているからか、
馬鹿馬鹿しくて仕方なかった。
「この後に貴方が街のボランティアで清掃活動をされるなら、まだ分かるけど、
しないならポイ捨てはやめた方がいいと思う。
拾う立場の人の事を考えて行動したら?」
同い年の異性にそんな事を言う日が来るとは思っていなかったが、
常識を知らないんだなと思うと、
こんな友達だったら要らないなと思えた。
そして、良い人なのに勿体ない人だなとも思えた。
私はタバコを敵対視している訳ではない。
ニコチンが欲しい人は摂取すれば良いと思う。
税金を納めてくれるから、むしろ有難い。
けれど、ルールも知らない人が吸うのは間違っていると思う。
捨てたこともない吸い殻を、手や腰を痛めて、時間を使って、無償でボランティア活動する人が居ることを知らないのだろうか。
タバコをは吸うなとは言っていないが、
携帯灰皿が商品化されている以上、それを使えばいい。
もし無いのなら、踏みつけた後に拾ってゴミ箱に捨てたら良い。
それをしていたら、むしろめちゃくちゃ好印象になる。
*
あのトラック男が理解出来る日は来るのだろうか。
息子の筆箱にタバコの吸い殻が入っていたら怒鳴るのだろうか。
貴方がしている事は同じ事だ、と彼に近しい人が言ってくれるのだろうか。
そうだと良いな。
チョコレートに牛乳
これは短編小説なのか?笑
昨日、たまたまタバコをトラックから捨てていた男性を見かけました。
この世の中でまだやっている人がいた事が驚いでしたが、
その人を怒る人がいない事の方が驚きですね。
まぁ、人は怒られなくなったら終わり、と言いますからね。
携帯灰皿買って下さいね。
ちなみに私は、iQOSですら許せない派です。
そういった人が一人でもいる事を理解して欲しい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?