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左耳のピアスの理由

彼と知り合ったのは合コンでした。お互い大学三年生で趣味の話や好きな芸能人の話で盛り上がった。注文した唐揚げ全部に勝手にレモンを絞ったのはマイナスだったけど、彼とはとても話が合ってメールを交換した。

顔はタイプじゃなかったけど、彼といたら落ち着く。あの男性陣の中で唯一彼は私をエロい目で見てこなかったし、ホテルに誘ってみたら「また今度な」って笑顔で返された。あの時は彼を試して本当に申し訳なかったなって今となっては大反省してる。

合コンの後もメールでのやり取りが続き二人で夏祭りに行くことになった。たくさんの人混み、気合を入れたメイクも汗でにじんでいた中、子供が泣いている声が聞こえた。大人たちは気にもせず歩みを進めていた。でも彼はその泣いている子の近くに行き名前を聞いた。「お名前を教えてくれる?」「……ひびき」名前を聞いた彼は子供を抱きかかえ、大声で叫んだ。「ひびき君のお母さん、お父さん、ひびき君はここにいます!」その後、その子の母親が駆け付け一件落着だった。そんなことができる彼を好きになるのにたくさんの時間は必要なかった。

私の恋愛経験上、彼の言動を見る限りかなりの脈あり!あとから話を聞いたら合コンの時から私のことは気になっていたらしい。そしてこの流れだと花火が上がっている途中で私に唇を重ねてくるはず!花火が上がる時間から逆算して、かつ、自然な流れでお手洗いに行き化粧を直す。口紅を塗り、最後に香水を3プッシュ。これであとは、花火が上がっている時に告白されて、キスされるのを待つだけという完璧な算段が私の中でついていた。

花火の時間が始まった。序盤は仕掛け花火、ここら辺は普通のリアクションで対応。問題は中盤終わりからクライマックスにかけて。中盤終わりから彼にばれないようにあくびをしておく。こうすることで彼が私を見たとき目に花火が反射したときに、よりキラキラ輝いて見えるらしい。彼は途中、何回か私のことを見ていたけれど結局普通に花火を見ただけだった。そしてそのまま解散。ーおかしい、おかしすぎる!! 理解ができなかった私はその日を空しく終えた。

それからもメールのやり取りは続き、デート?を繰り返していた。どうやら、3回目のデートで告白するのがセオリーらしい。しかし4回目も、5回目も彼は一向に告白する気配がない。我慢できなくなった私は、彼の友人に聞いてみることにした。その結果、彼は私のことを本気で好きなんだと友人に熱弁していたことが分かった。

私は勝利を確信した。そういうことなら私から告白してしまえばいいのよ。大丈夫、裏は取れてるし、彼のかわいい一面も知れてお釣りが来たわ。私は、人生初の告白をすることを決心した。この時から彼との運命の歯車が静かに回っていた。


次回

「ねぇ、私と付き合わない?」

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