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ブッククラブ〈Language Beyond〉 #26—ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』

こんにちは!次回のブッククラブでは、ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を読みたいと思います。未読でも、一部分のみ読んだだけでも参加OK。思ったことを自由にお話ししましょう。

開催日時 2022年9月25日(日)16:30〜18:00(Jitsi Meetでオンライン開催)
参加費 無料。どなたでもご参加できます。
読む本 ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』[出版社HP
推薦者から一言 翻訳書が話題になることはあまりありませんが、この本はかなり話題にもなり、友人から薦められていつかは読みたいと思っていました。現代の日本(あるいはもっと広く世の中)でこの本のどこが支持されるのか考えてみたいです。

開催メモ(担当:工藤順)

当日は、この本が比較的「分かる」派と「分からない」派で二分され、それぞれの意見が聞けて大変面白かったです。さらっとした読み心地の本なので、読み飛ばすこともできるのですが、意見が異なる人がいると、「どこがいいと思ったのか」「どこが悪いと思ったのか」という話ができて、読みが格段に深まると感じます。

比較的「分かる」派(わたしはこちらです)としては、簡潔な文体や時折挿入される美しい文章、安易にハッピーエンドを導かない書き手の誠実さなどを評価のポイントとして挙げることができるかと思いました。一方で「分からない」派は、特に本で最初の方に置かれた作品の楽しみ方が分からないという意見が聞かれました(作品の配列が年代順なのかははっきり書いてありませんが、本の後半になると、だんだんと文体が成熟してくるとの意見も)。

この作品集の登場人物は失敗した人、善人ではない人ばかりで、描かれる人生にも幸せがありませんが、そうした人生の悲惨が、ある意味で中立的・突き放した・乾いた視線から描かれることが特徴的です。作者の立場として「評価・解釈をしない」という意見がありましたが、これはとても納得できるものです。わたしなら、ある意味で「インスタ的」な描写と言うかもしれません。現実を何らかのフィルターを通してちょっときれいにして(ちょっと距離を置いて)見せている感じです。

現実の悲惨を出発点にする場合、作家の動機として例えば「怒り」のような感情がある作家もあるかもしれませんが、ルシア・ベルリンの場合はそうではありません(例えば本作中の短篇「いいと悪い」は一番わかりやすく作家の立場を表していると思います)。筆致はあくまで淡々としていて、この容易に変えられない現実をどうにかして受け止めようとし、何度でも失敗する姿が描かれます。ベルリンは最近まで忘れられていた作家だそうですが、すこし分かる気はします。バブルの時代にこのような作品は受けなかったでしょうし、東西冷戦の時代にこのような態度はあまり理解されなかったでしょう。いまの日本で広く受けいれられているのは、「どうしようもない現実を生きる悲惨と少しだけの希望を抱えてそれでも生きていく」という感覚が肌で分かるようになったからではないでしょうか。それ自体は良いことでも悪いことでもないと思いますが、ただ、時代を超えて、このように多くの人が自分の心的風景を共有できる作家に出会えることは、文句なしに素晴らしいことだと思えます。

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