ブッククラブ〈Language Beyond〉 #29—フランツ・カフカ『変身』

次回のブッククラブでは、(たぶん)みんな名前だけは知ってるカフカの「変身」を、改めてみなさんと読んでみたいと思います。未読でも、一部分のみ読んだだけでも参加OK。思ったことを自由にお話ししましょう!

○開催日時 2023年5月28日(日)16:30〜18:00(jitsi meetでオンライン開催)
○課題本 フランツ・カフカ「変身」(翻訳はどれでもOKです)
○推薦した理由 以前、ドストエフスキーを取り上げ現代社会へのメッセージ性に盛り上がりましたが、この本も入手しやすく、読みやすく、多様な示唆があるかと思います。(推薦者より)

開催メモ(担当:吉川祐作)

今回取り上げたのは、カフカの「変身」。主人公グレゴール・ザムザがある朝巨大な醜い虫に変わってしまうという強烈なシナリオが有名ですが、同作の読書会を別の場所ですでにされた参加者の方もいて、より深く読むことができました。

多様な解釈を許す作品ほどには、解釈そのものがつかもうとしてもつかめない作品というのは多くないように思います。その解釈の定まらなさは実存主義文学という言葉で表されたりもしますが、カフカの作品の場合、そのふたしかさの薄闇に、ぼんやりと作者の影がゆらめいているようです。

議論では、父親によるカフカへの抑圧が、本作で弱っていくグレゴールと力を取り戻していくその父親の対比に表現されているのではないか、という意見がありました。別の参加者の方からは、本作に限らず、カフカの作品は「入場拒否」(ある世界への参加を拒絶される)の物語である、という意見も。また、この変身が象徴するようなできごとはだれにでも起きうるという意味で、本作は決して寓話ではないのだ、という翻訳者の川島隆さんの発言の引用も印象的でした。

ある状況へ適合しようとする試みが病として現れると考える精神医学の観点から、グレゴールの「変身」は、ひとりの主体性を持った人間として生きたいという彼自身の要請だったのではないか、という意見にも唸らされました。なお、多和田葉子さんは、集英社文庫版の解説で、本作は稼ぎ手として一家を支えていたグレゴールが「汚れた存在になることで、生け贄にされるのを逃れる」話だという読みを提示しています。これらの読みは、家族から拒絶され、グレゴール自身もそのことに納得してしまう結末の過酷さを際立たせるものです。

僕自身は、妹をサプライズで音大に行かせてやろうと考えていたグレゴール自身、家族に稼ぎ手として必要とされる(搾取される)なかによろこびも感じていただろう、と考えています。他者に必要とされるのは素晴らしいことですが、それはある意味で自分の存在意義を他者にあずけて自分をうつろにするということ。それを示すように、グレゴールは自身の変化に対してひどく鈍感で、考えるのは家族のことばかりです。そうであれば、この「変身」は、じつは、グレゴールに依存している状況を脱出したい家族側からの要請が残酷な形を取ったものだったといえるかもしれません。

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