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慶應JDが港区女子と化すまでのおはなし part.3

※Part1~2からの続きです。順番に読んでね!


6.バグる金銭感覚

クレジットカードの請求額を稼いだらやめる予定だったラウンジ。しかし、予定に反して私のシフトは増えていった。勤務時間も、生活リズムを崩さないために1:30までの早上がりだけにする予定が、気づけば毎回閉店時間の3:00まで働いていた。それまでやっていたバイトは馬鹿馬鹿しくなってシフトを入れなくなっていき、ついに辞めた。大学に通ってサークル活動をしながら、週に3回は西麻布に向かうようになった。ラウンジに出勤するためにあまり夜に友達との予定を入れなくなった。こうして、大学3年生にして一般的な20代会社員の月収を優に超える額を稼ぎ始めた。

ただ、それでも私には決めていたことがある。それは、「フル出勤はしないこと」「他のラウンジ嬢と必要以上に喋らないこと」、「一般のバイト代以上に稼いだお金は浪費せず自己投資に使うこと」である。なぜなら、ナイトワークの生活、そして港区の価値観に染まりたくなかったからだ。

私は、いわゆる港区女子を見下していたのだ。ステータスのある男の人と知り合うことで承認欲求を満たし、不幸な恋話をし、稼いだお金をブランド品に注ぎ込み、それにより自分のステータスが高いと考えている女の子たち。私は、「自分はもっと自立している」「自分はこの人たちとは決定的に違う」と考えていた。(だけど、結局私もただのその1人でしかないのだが。)

だが、当然のことながら、上記の決意も虚しく金銭感覚はじんわりと、ただ確実に狂っていった。

何より一番変わったのはファッションの趣向だ。「ブランドなんかどうでもいい!グッときたかどうかだ!」という哲学を持っていたはずなのに、セレクトショップやヴィンテージショップを巡ってピンと来る一枚を買って帰るような買い物が至高だと思っていたはずなのに、気づけば雑誌を見ていて気になるのはハイブランドの商品ばかりになった。歩いている女の子の高そうなバッグを目で追うようになった。新商品をチェックするようになった。

金持ちが全員グッチとバレンシアガを着ている現象はかねてより謎だったが、その謎はこの身をもって解くことができた。社会的に「良い」ことが保証されているものが購入候補に上がってくると、どうしても欲しくなってしまうのが人間というものらしい。そしてそれを買うとき、通常の買い物とは比較できないほどアドレナリンがドバドバと出るのだ。

さて、こうして私の所持品にはブランドの名前が刻印されるようになった。大学へはバレンシアガのバッグで行くようになった。2000円のランチだって、3万円のワンピースだって、20分の暇を潰すためのカフェ代だって、躊躇しなくなった。「あの子たちみたいに散財はしない」と強く誓っていたし、そこまで派手なお金の使い方はしていなかったはずだ。しかし、気づけば月に30万円すらもすぐに使い果たしてしまうようになった。ちなみに家賃は払っていない。


7.パパ?の出現

さて、ラウンジ嬢としての振る舞いもなんとなく板についてきた頃、あるお客さんが現れる。彼は某有名な会社を経営している山本さん(仮)、人当たりの良い優しいおじさんだ。接待のためにお店を使っていた山本さんだが、隣に座った私の見た目がとてもタイプだったらしい。ありがとうございます。

1、2度指名でお店に来てくれたのち、ご飯の誘いをしてくるようになった。でも、同伴は恥ずかしいからしない主義であるとのこと。(1人でお店を利用することになるので。)ただ正直、時給が発生しないご飯って、こちらにメリットがない。同じ時間使うなら他にやりたいこともたくさんあるし、同じ接客をするなら出勤したほうがいいのだ。なんとか回避するため、「毎日課題で忙しい、空いた時間は全部ラウンジを入れることにしてる、だからプライベートの時間作れないんだごめんね!」という理屈を押し通す。すると、彼からオファーが。

「ご飯にバイト代10万出すよ、それならいいでしょ?」

出ました。これが西麻布です。

え、まじでメシ食うだけでいいんですか、と聞くと、いいよ、とのこと。

いや、そんなこと現実にあっていいのか?うそでしょ?だってお金ってほら、労働の対価じゃないの?10万円って大学生が1ヶ月かなり頑張ってバイトして稼ぐ額だよね?どういうこと?意味わからなくない?

「いいんですか?もちろんです!」

ここから、ご飯を奢ってもらった上で10万円もいただくという西麻布インフレ経済に足を踏み入れることとなる。一度この味をしめると、他にも同じことをしてくれるお客さんを探すようになり、ご飯に行ってお金をもらうことを繰り返すようになった。(本当の本当の本当にご飯だけですよ。)

さて、こうなると、ただの大学生だった私が手にする金額はますます大きくなってくる。金銭感覚はますますアホになっていく。物欲を我慢するという発想はどこかに忘れた。欲しいものは次々とカートに入っていく。サラリーマンより多い月収でさえも十分ではなかった。泡銭はすぐなくなる、という言葉が身にしみる。

港区女子、ここに爆誕せり。


8.だけどさぁ、大学卒業とともに港区卒業するぞ!

こうして夜な夜な爆稼ぎし、(とはいえ私なんて本当に腰掛けのペーペーで、港区では雑魚。ほんまもんの港区強者は沢山おります)私は金に困るという概念を完全に忘却した。そんな生活を1年半ほど送った末、ついに大学卒業の時が来る。

ラウンジ嬢という仕事も、大金をやすやすと得るという経験も、長く続けるべきじゃないことはわかっていた。これは、失ったら取り戻すことのできない「純粋さ」を換金している行為だと知っていた。就職とともにすっぱり辞めようと決意していた。卒業前の1ヶ月間、あらゆる人に別れの挨拶をした。もう西麻布の地をこの足で踏むことはないと思っていた。思っていたのだが…


To Be Continued

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