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スンドゥブチゲ2つ頼んで~カイト④

カイト「お腹空いてる?」
私「んー、そんなに空いてないかも。空いてる?」
カイト「いや、俺もそんなに空いてないかな…。どうしようかな…。」
私「そしたら、お茶にする?」
と言いつつ、
ん?私、横浜からあなたのテリトリーの新宿まで来たんだけど、行きつけのお店とか予約しててくれたわけではないんだね…。と心の中で突っ込む。

カイト「じゃ、高島屋に行こうか、あそこなら何でもあるから」
私「あ、レストラン街ね、はい」
カイト「やっぱり、実物も美人だね~」
私「あ、ありがとう」


と、新宿の雑踏を抜けつつ、高島屋に向かうのだが、私はまだ動揺から抜け出せず、話題が見つからない…。
カイト「電話の時みたいにしゃべってくれないね、緊張してる?」
私「そ、そうね、緊張してるかな…。」

そして、高島屋までの徒歩移動中の会話は弾むことなく、高島屋に入った。
その入り口に5歳ぐらいの男の子が、地べたに座り込んでいた。
それを見て
カイト「あんなのって可哀そうだよな。親のエゴで子ども引きずりまわして。子どもの気持ち考えてみろよな。最悪だよ、あんな親!!
私「え?!」
マジ、ちんぷんかんぷん???ただ、子どもが座っているだけなのに?泣いてもいなかった。だだもこねていなかった…。
私「ただ、子ども座ってただけだよね?その前に何があったか見てないし、まして、親が嫌がる子どもを連れてきたのか、子どもがせがんで親についてきたのか、わからないよね…?」
カイト「…」
カイト「上までエスカレーターで行く?」
私「う、うん」
カイト「じゃ、あっち」とエスカレーターに向かう。
レストラン街って、どこのデパートも、まぁまぁ上階だけど、エレベーターよりエスカレーター派なんだ…と思いながら、カイトに着いていく。

化粧品売り場の横の上りエスカレータに乗った時、おそろいのロリータ衣装を着た若い娘二人が美容部員と話しているところが目に入った。またもや、
カイト「あんなの恥ずかしくないのかな?みっともないよな
え?ロリータファッションを恥ずかしいと?現代において、そんなに珍しくもないだろう…。
地方から出てきた私は、カイトみたいなおじさまがロリータファッションを身にまとってる姿を初めて見た時は目が釘付けにはなったが…。
しかし、カイトは東京生まれの東京育ち、大都会東京の新宿をベースに生活して、いろんなファッションも見ているのではないか?
渡航歴60ヵ国以上、いろんな人を見ているんじゃないか?
多様性の時代と言われる現代…なのに?

私「好きな服着て、おしゃれしてメイクの話して楽しそうだけど…」

この時点で、もう、カイトとは仲良くな・れ・な・い
と、私の全ては感じていたんだと思う。

だからといって、「ここで失礼します」退散という行動はとれず、とりあえず、今日はやり過ごすことを選択した。

エスカレーター、カイトの後ろに続くように上りながら、
カイト「デパートって、よく行く?」
私「最近はあんまり行かないかな…。」
とか、各階上りながら、少々の会話をするが、会話が弾むことはない。
カイト「俺さ、行ってみたい韓国料理店があるんだよ。辛いの好き?」
私は、あんまり食事をする気はなく、コーヒーでいいくらいだった。コーヒーとケーキでいい感じだったが、ま、カイトが韓国料理が食べたいなら、それでもいいかと思い、
私「辛いの好きですよ」
カイト「なんだっけ?辛い鍋?あれ、食べてみたいんだよね」
私「スンドゥブチゲ…」
カイト「あ、それそれ、スンドゥブチゲ
私「自炊するって言ってたけど、外食は週にどれくらい?飲みに行ったりする?」
カイト「外食ほとんどしない。飲みにも行かない…。結構お金使っちゃうでしょ。」
私「そうなんだ…。」

結局、お目当ての韓国料理店は13階。
エスカレーターで上がってきましたよ。
何でもない平日の夜19時のデパートは、そんなに人も多くなく、エレベータも混んでなかったと思うんだが…。
韓国料理店も、店内に5組程度の客がいるくらいだった。

席に案内され、メニューを見る、スンドゥブチゲを指さし
カイト「これこれ」
私「あ、これね、私もこれで」
カイト「すみません」
店員を呼ぶ。
メニューを指さしながら
カイト「このスンドゥブチゲを2つ
店員「スンドゥブチゲをお2つですね。セットのごはんお付けしますか?」
カイト「う~ん、いらない」
と言っったので、
私「いらないです」
と答えて、私はお冷を飲んだ。

。。。しばらく沈黙があった。
また、お冷を飲みながら、私は何と言って交際について断ろうか…。申し訳ないが、合わないもんな~、しかたない!!っと、思ったとき、たぶん私、少し笑みがこぼれてしまったんだと思う。
いや~、この人とは明らかに無理!!にしても、何でこうなったのか?と思うと笑けてきたのだった。

カイトは、そんな私を見てたのかな?
初めの頃に「興味ないと無口になる」的なこと伝えてたし…。
お冷飲みながら、薄ら笑ってる私を見ちゃったのかな…。

とりあえず、ご縁があってスンドゥブチゲを一緒に食べるんだからと思い、頑張ってお話ししようという気持ちになった。
私「韓国料理好きなんですか?」
カイト「いや」
私「韓国に行ったことは?」
カイト「いや」
カイトは、さっきより、明らかにそっけなくなり、ポケットから小銭入れを出し、ジャラジャラ小銭確認したり、スマホ見たり、じっとしてなくて、あわただしくポケットに手を入れたり、トートバッグごそごそしたり、挙句、立ち上がり店員に何か話に行った。

ん???これは???

そして、私たちのテーブルに戻ってきて、布製トートバッグの上のふちを両手でにぎにぎしながら、
カイト「ち、ちょっと、電話してきますね
と言って、布製トートバッグも持って店外に出て行った。


逃げたな…。

数分経っても、戻ってこないカイト…。


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