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ゆめいろさがしを始める前の口癖は、友達いない、何もできない、死にたい(加藤理沙インタビュー①)

【プロフィール】
加藤理沙(かとうりさ)
ゆめいろさがしのストーリーを書いている。
1998年生まれ。東京都出身。YFU派遣生としてアメリカ合衆国NH州に留学中、ドナルド・トランプ氏が合衆国大統領に当選。カルチャーショックにより悶々としながら帰国、翌年東京藝術大学に入学。以後対話、多文化共生、全体主義体制を作り出す大衆などに興味を持ち、共同制作過程における対人関係構築について考察している。

1. 東京藝術大学での学生生活

——現在の所属と活動について教えてください。  
東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科という、音楽とその隣接領域について学ぶ新設学科の、文化研究のゼミに所属しています。普段は作曲したり絵を描いたり、パフォーマンス作品を制作したりと色々なことをしています。去年はコロナの影響で発表の機会は減ったんですけど、主にゆめいろさがしの活動をしていました。

——ゆめいろさがし以前の活動について少し詳しく教えてもらえますか? 
藝大の入試では、音楽も言葉も自分で考えて朗読音楽を作りました。入学当初は創作のゼミに所属し、コンテンポラリーダンスをやっている友人と作品を作っていました。学部2年の藝祭のイベントではパフォーマンスの衣装を作りました。あとはその時、10分のポエトリーリーディングの作品を友達と2人で作りました。その年の進級展では、4人で30分の演劇を上演しました。

——普段の制作や研究を通して、何かテーマにしていることはありますか?  
共同制作の過程における対話や場づくりについて、公共哲学や臨床心理、精神分析を参照しながら考えています。

——そうしたことに関心を持ったきっかけはありますか?  
私は元々自己肯定感がすごく低くて。ゆめいろさがしを始める前までは口癖が「友達いない」「何もできない」「死にたい」みたいな(笑)。全然効率的に動けないし、自分でも受け入れられない「大丈夫じゃない自分」みたいなものが元々あったから、そんな中でもどうやって人と関わっていくか、共感されにくい部分をどれだけ大切にできるか、ということを考えるようになりました。

——これまでの大学生活でやってよかったこと、反対にやっておけばよかったことなどがあれば教えてください。  
自分の感情に素直に動いていたことはよかったですね。話したいと思った人には話しに行ったし、観たいと思った展示は観に行ったし。ただ授業を休みたいと思ったら素直に休んだりもしていたので、良くも悪くもという感じですね(笑)。

——作品を作る以外の活動などもしていますか?  
最近はスタートアップ企業でインターンをしたり、他大学の友達と読書会を開いたりしています。

2. 今までに影響を受けた考え方

——今までに影響を受けたアーティストや研究者はいますか?  
核にあるのはハンナ・アーレントですね。20世紀ドイツのユダヤ人で、後にアメリカに亡命した政治哲学者で、主に全体主義体制を生み出す大衆の分析で知られている人です。読めば読むほど新たな発見があって、アーレントを読むためにドイツ語の勉強も始めました。 

——アーレントにたどり着いたのは、最初に話していた「対話」「対人関係」という問題意識が関係しているのでしょうか?  
関係していますね。普段コミュニケーションをとる時、簡単に共感されやすい自分の一側面だけ切り取られて消費されている感覚ってありませんか?私はその感覚が、自分が疎外されているようですごく嫌いだったんです。そうならないためにどうしよう、って考えていたら、結果的にアーレントにたどり着いたという感じがあります。 アーレントは、目的があってなされるものでも、生きるためになされるものでもない行為を「活動」と定義しています。「活動」は対人関係のうちに行われるもので、その前提に、1人ひとりが違うという「複数性」がある、という話がとてもしっくり来て。そこから、 じゃあ「活動」、あるいは厳密には「活動」とは言えなくても近いことをするためにはどうしたらいいか、ということを考えるようになりました。

 あとは『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』という本を書いている東畑開人さんという臨床心理士の方がいます。「ケア」と「セラピー」は2つの違う概念で、ケアというのは日常的で、「安心していられる」ことを保証するものなんです。反対にセラピーというのは、治療者と患者が2人きりで同じ空間に閉じこもって、傷つきに向き合って、それをどう対処するかを考えるというものです。イメージとしては、ケアはぐるぐる回っていて、セラピーは線形的。これらの組み合わせによって精神医療は行われているという話は、対人関係の実践と考察に応用できるなと考えています。

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ゆめいろさがしとは

朗読音楽絵本を制作し、上演する団体です。東京藝術大学の学生が集まり、現代の諸問題を暗示させる動物世界の物語を描いています。

▼ゆめいろさがし公式サイト
https://yumeirosagashi.studio.site
▼ゆめいろさがし公式ショップ
https://yumeirosagashi.booth.pm

インタビュアー・堀江幹
運営・ゆめいろさがし  

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