夢を集めて(大作4)

屋根裏に入り口がある学校の地下室は、共同アトリエ(作業場)になっている。
普段特に大きな作業を要しない私は、L字に曲がった地下室の、曲がった先、奥まった壁側に、長机と椅子を置き居場所にしていた。部屋の雰囲気は、昔見学させてもらったS大学のアトリエに似ている。それよりも夢の中のアトリエの方がもっとシンプルだ。
 アトリエに行くと先客がいた。今はもういない年上の同級生だった。夢の中では、彼がそこにいることに私はなんの疑問ももたない。彼の座っているパイプ椅子の隣に私は腰掛けて、今日は早いねだの、どうしたの?なんで私のスペースに座ってるの?だの世間話をする。いや、お前来るかなと思ってとか、軽く答えながら、いつまでもバックを肩から下ろさず、傘を片手に引っ掛けたまま、彼はニコニコしている。彼はたぶん、最近は大きな布に絵を描いているはず。だから、今は作業を始める前に、少し休憩、なんでもない時間が欲しいだけだろうなと私は察する。そうかと私も彼の横に座って、壁を見るでもなく見ている。
 ちょっと会うとめんどくさい他の同級生が、アトリエに入ってきた音がして、私は彼がいてくれて助かったと思っている。彼はなんだか、ヘラっと、穏やかな顔をしているから、安心した。
 しばらくして、廊下を歩き移動していく。その途中にも何度か彼を見かけた。彼は階段の下に寝そべっていたり、他の人の椅子に座っていたりした。点在する彼はまだ鞄を下ろしてはおらず、傘を手に掛けたままだった。私は、絵を描く気に至らない時もあるよな、ほおうっておこう、私もそんな時はなんとなく点在するし、と思って放置する。
 何かの用事を済ませ、アトリエへの帰路。私は彼の友人にばったりあった。ああそういえばこいつは彼に会いたいと言っていたっけ。先ほどまで彼が座っていた場所で何食わぬ顔で作業をしているそいつに、「さっきまで彼ここにいたよ、そのあとは階段の下にいた、あと今朝は私の机に来た、今頃地下アトリエかもしれない」と言った。そう喋りながら私は、学校に点在していた彼が幽霊だったのかも、と気がついた。そうだ、彼はもう居ないんだった。驚いた目の前の友人は、彼の点在していた場所を詳しく聞くや否や、急いで彼を探しに行った。
 そうこうしているうちに、定時になった。ウォーキングの練習をしなければならない。私は地下アトリエに急いだ。守衛に呼び止められたりしたけれど、なんとか地下のアトリエへ辿り着く。私より先に彼を探しに行った友人は、点在する彼を見つけられなかった様だ。友人は私よりも先にアトリエにつき、奥の方で、五人くらいでつるんで練習を始めている。私はみんなを邪魔しないように、遅れてきた他の知り合いと、地下室のヘリに沿ってあるランウェイを利用して、ランウェイウォーキングの練習を始めた。
 こうして学校の地下室でランウェイウォーキングの練習をするのは数日ぶりで、手足がバラバラに動いてしまい、気持ちが悪い。ランウェイの端まで来て、くるっと回った時、間違えて回りきれずに、壁に向かってポーズをとった。恥ずかしくて、ヘラっと自嘲した顔を作ってしまった私は、こういうところがダメなとこなんだろうなと、本気で思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?