3話 結婚おめでとう
学校を終えて、仕事で心を病んだ。私が自傷行為をし始めた頃、会長様にも自傷を伝えた。
会長様は「無理かもしれないけど、もう自傷行為をしないで」と止めた。
サークルSNSの個人ページにも愚痴ばかりを吐き出すようになってしまった。
サークル内のチャットでも、会長様と二人きりになると愚痴ばかりになる。
他の会員様だと愚痴だけと言うわけにはいかなかったが、ついつい愚痴っぽい事が出ることもある。
会長様とのメールも私的なものが増えた。
ある日、チャットで会長様を見つけた。
入ろうかと思ったが、先客がいた。何を話していたのかとログを少し辿った。
『某会員様:ちょうどよかった。結婚、おめでとうございます』
その会員様は会長様の身近な人らしいという事を、会報から感じ取れた会員様だった。
けっこん?
会長様は私的な事を一切言わない。仕事は当然だし、趣味もイマイチ何が好きなのか分からない。
なぜ、会報に携わっていたのか、当時の私には分からなかった。
なのに、そのチャットにはとてもプライベートな『結婚』の二文字があった。
『会長様:ここでそれはちょっと……』
『某会員様:え?そうですか?誰も見てないからいいじゃないですか』
『会長様:まぁ。そうだね。後で消しておこう』
『会長様:誰も来ないし、終わり。で、これも消す』
その言葉の通りに、チャットのログは消された。
私はそれをうっかり見た。
消す寸前のそれを。
見てはいけないものを、みてしまった自覚はあった。
会長様は自分の事を一切言わない。
私が見ていた事は誰にも分からない。閲覧者は数字でしか表示されない。
このチャット内容は彼女たち二人の間でしか、かわされていないのだから。
この後ずっと私は、会長様が結婚しているという事を知らないふりをし続けた。
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