猫の恋の頃3
【 抑制 】
制御しきれないほどの、感情。
押し留めて、押し殺して。
幾重にもかける、抑制。
インターネットが繋がらなくなった。
その場所は私にとって唯一の外だった。
息抜きの出来る場所だった。
ゴールデンウィーク中も、ネットには繋げなかった。
でも、この大型連休がなければ、私はもっと早くやっていたと思う。
休みが終わったある日。
指導者さんに注意を受けた。
履いてきたサンダルは踵で止まるものが良いという事。
その後で入力作業をした。
パソコンが立ち上がる間、小さな紙にイラストを書いていた。
「何してるの?」
後ろから掛けられた声に、私はとっさに紙を隠す。
「まずいところを見られたね」
指導者さんが私の手元を、覗き込みながら笑う。
私はべつにまずい事をしてるなんて思ってなかった。
「私だったから良かったけど、支部長に見られるとまずいよ」
そう言って、隣でパソコンを立ち上げる。
私は何も言わなかった。
そして指導者さんは「学生気分が抜けないのね」と呟いた。
……それだけで済ませるんだ?
そう思うと、悲しかった。
私がイラストを描くのは私の心を保つ為。
少しでも負担を消したかっただけなのに。
何を言っても、言い訳にされるような気がして何も言わなかった。
帰りは指導者さんと一緒だった。
「そう言えば、雑誌に投稿とかしてるって聞いたけど?」
「あ、はい」
私はカバンの中に持っていた雑誌「~趣味の会報~」を取り出す。
「どうして持ってるの?」
そう言いながら、受け取ってぺらぺらとページをめくった。
適当に見て返してくる。
「会社に持ってくるのは、どうかと思うよ。
イラストも家で十分描けるんだし、会社でする事じゃないでしょ」
それは正論だと思う。
私がそれを判ってないと思ってるの?
息が出来なかった。
剥ぎ取られた心のクッション。
必死に保とうとする心が崩れていく。
空気があるのに、息が出来ない。
私はどうしたら、良かったの?
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