見出し画像

11. 37.5

小さな頃は自分の体温が分からなかった。
自分の体温を知ったのは何時だったろう?

「風邪ね」

体温計は37.5を指している。
それでも平気で飛び跳ねて、風邪だといわれてもピンと来なかった。
「大人しく寝てなさい」
そう言われるたび、なぜだろうと思った。
私は平気だ。
何処も悪くなどない。
ただ、体温計が37.5を指してるだけ。
熱がある?どこに?
自分の体温を感じなかった。
いつも通りだと思っていた。
ただ、学校を休めてラッキーな日。
人から心配してもらえて嬉しい日。

何時からだろう?
自分の体温を知ったのは。
体が熱い。頭が重い。
体温計は平熱を指す。
これが体温?
ではこのけだるさは何?
これは、嫌悪感。
風邪ではない。
己の中の未来への拒絶。


《 前へ * 次へ 》


30の遠い記憶 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?