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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2019年3月の記事一覧

【嘘】紫の月

【嘘】紫の月

沢山の紫色の蛇が、月に向かって泳いでいくのが見えた。
それらはそのまま月を覆い、そして、紫色に光った。

夜空にまん丸と浮かぶそれは、今までも変わらずに、そうやって光っている。

【嘘】まる。

【嘘】まる。

インクが切れた。
ボールペンは跡を残すのみで、少しも色を落とさない。

今日買ったこのボールペンも、目に映るものの名前を全て書き上げる日には耐えきれなかったか。

まる。まる。まる。まる。まる。

跡でよいから、続きを書く。

まる。まる。まる。まる。まる。

【嘘】眠りと時計

【嘘】眠りと時計

眠くなるにつれて、時計がぐるぐると回り始めた。
なるほどあれは、世界の時間を表現してるのではなく、私の人生を表していたのか。

夢では、白兎が時計を手に急いでいた。

【嘘】月の穴

【嘘】月の穴

夜空の写真を現像し、月だけを綺麗に切り取る。
その月の穴を太陽に掲げると写真の空も明るくなる。
こうすることで昼間の星を見る事が出来るのだ。

切り取った月はちゃんと空に返さないと、夜が来なくなるから気をつけて。

【嘘】夜の仕組み

【嘘】夜の仕組み

ペットボトルのコーラを振り続けると、蓋を飛ばし吹き出して、その泡は天まで上る。
真っ黒な液体は空を染め上げ、そして、夜になる。
夜空はシュワシュワと泡立ち、星々は瞬いている。

【嘘】切り取る

【嘘】切り取る

なにとなしに撮った公園での写真が、凄く綺麗に仕上がった。世界はこんなに綺麗なのか、と驚く程だ。

うっとりみとれていると、気が付いたら日が暮れていた。
画像から目を離す。すると景色は写真に負けないくらい綺麗だった。

ああ。これも、写真なんだ。
そう理解した。

【嘘】甘じょっぱいのが食べたいの

【嘘】甘じょっぱいのが食べたいの

ドーナツの穴をくぐると、見たことの無い景色が広がっていた。
チョコレートの山やグミの池、空には飴玉が光ってる。
夢のようなお菓子の世界。

でも、磯辺餅が無いから、帰ってきた。

【嘘】Xゲーム

【嘘】Xゲーム

空間の濃度の差により世界は流れ、あらゆる存在がそれに身を委ねている。
その流れに上手く乗る『空間乗り』というレジャースポーツが生まれた。
そして、あえて危険な流れを選びスリルを楽しむプレイヤーには、ブラックホールが最高のスポットとなった。
事象の地平線を跳び超え、時間の渦を滑り、物理法則と戯れる。

来年のオリンピックのハーフパイプもさぞかし盛り上がることだろう。

【嘘】朝ご飯

【嘘】朝ご飯

朝から食パンに乗って空高くを飛んでいた。
朝ご飯を食べ忘れたので、食パンを少し食べることにした。
美味しいので、少しだけのつもりが食べ過ぎてしまった。

食パンは落ちる。どんどんと高度が下がる。

危ない。
と思ったら、牛乳の池に着水出来た。
食パンがもっと美味しかった。

【嘘】俺座

【嘘】俺座

星々に名前を付けては、夜な夜な語りかけていた。
そして時々、餌を与えたりしていた。

「ペットは飼い主に似るんだってね」
友人がそう言うので、夜空を見上げると、俺にそっくりの星座があった。

もう。可愛いんだから。

【嘘】小さな鯨

【嘘】小さな鯨

あれは、七歳だったか。

その日は強い雨で、小学校からの帰り道が分からなくなったのだ。

気が付くと見知らぬ景色。
怖くて、だから、走った。
傘はもう、ちっとも役割を果たせず、俺はびしょ濡れになった。

そして、小さな鯨に出会う。
小学生の俺と同じ背丈で、びしょ濡れの鯨。