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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2018年8月の記事一覧

【嘘】日常のワルツ

ふと、夜道をスキップで駆け抜けたくなった。
幸い誰もいない。童心にかえり全力でスキップしよう。
そう思ったのだが、どうにも上手く出来ない。リズムが変だ。
なんでだろうかと考えてみると、三本目の足が見えた。

ああ、そうだ。一昨日取り付けたんだった。

【嘘】マスク

ここのところ風邪が治らず、ずっとマスクを付けていた。今日、家に帰ると、マスクが顔に貼り付いている。どうしても取れないから無理やり破る。しかし、いくら破いても顔に到達しない。もう顔の半分くらい破いてしまった。

鏡を見ると酷い顔だ。

隠す為に明日もマスクをしなくては。

【嘘】逃亡

ひたすら毎日毎日、上から落ちてくるへんてこで透明な板を、タイミングよく両手でぱしりと挟む事が、この世界で生きる唯一の意味なのだとしたら、俺はもうその両手をほっぺたに当てて挟み、唇を尖らせて、ウニョウニョ言いながら、スキップをして逃げ去りたい。

【嘘】黒兎

姿見から黒兎が飛び出てきた。驚きはしたのだが、その兎の愛らしさが勝って飼うことになった。

三日過ごして解ったのだが、俺、影が無くなってる。

そうか、なるほど。俺の影って可愛かったんだな。

【嘘】編み物

ほつれた毛糸をひっぱると、ぱらぱらぱらと、世界が一気にほどけてしまった。
奥には編み棒を持った先生がいて、にっこりと微笑みかけてくれた。
僕は泣きながら毛糸を両手に持ち、先生のもとに駆け寄った。

また編みますよ、と言う先生は、以前と少しも変わらずに、頭を撫でてくれた。

【嘘】旅先動説

旅行先のオランダで風車を見た。

風により回る大きな大きな羽。空もそれにあわせてゆっくりと回る。夜になると、なんと宇宙も一緒に回っていた。

ここでは風車が世界の中心で、この世のすべてを回しているのだとよく解った。

【嘘】なるほどをリサイクル

ゴミ捨て場で洗濯機が回っていた。ガタゴトと揺れながら何かを洗っていた。

後から聞いた話によると、お地蔵さんを洗っていたそうだ。お地蔵さん用の洗剤とかあるのかな、って思ったけれど、そこがゴミ捨て場だった事を思い出して納得した。

【嘘】観賞用

テレビに手形しか映らなくなった。

そんなに無理やり意思表示をしても、そこからは出さないよ。

【嘘】裸足のヒーロー

風に吹かれて飛んできたのは、片方だけの靴下だった。グレーと白の縞模様。よく見る普通の靴下。
だけど、二度と相方に会えないのだと思った時、その靴下は悲劇のヒロインになった。

俺は、この結末がハッピーエンドだと知っている。
だから今日、左足だけ裸足なのだ。

【嘘】それは違うよ。

二つの台風が近寄って来ている。その真ん中は台風と逆回転の渦を巻き、強烈な上昇気流が巻き起こる。うっかり風船を持つと天に吸い込まれていくだろう。
これをキャトルミューティレーションと呼ぶ。

と友人に話したら、「それはアブダクションだよ」と正された。

【嘘】初めての友達

トマトに指で二つ穴を空けたら、穴の奥から目玉が出てきたので、友達になってもらう事にした。

とても美味しかった。

【嘘】知恵と勇気

横断歩道の白い部分以外がぐいーっと下がり穴になった。落ちたらアウトだ。上手いことジャンプをしていかないと落ちてしまう。だけど俺は今までの人生経験から知っている。こういう連続した穴はダッシュで駆け抜けられる。さぁどこだ。俺のBボタン。

【嘘】親指の進化

親指に想いを書いて、サムズアップでそれを伝える。これがコミュニケーションとして広く利用されるようになり数千年、人類は進化した。伝える感情を書く親指は、六つに増えた。同時に指相撲の戦略性が上がり、オリンピックの競技になった。競技中も「イイネ」や「スキ」が見え隠れ。

【嘘】夜空の海

夜空に海が見えた。この夏は海水浴をしていないことだし、せっかくなので夜空の海を目指してドライブに出ることにした。

その後、車はいつまでもたっても空に飛び出す事がなかった。だけど、たどり着いた海岸には星が映り光り、まるで夜空のようだった。