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なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか? 第2章 その4

玉乗り、高足駄……。舞台のためなら曲芸も

宝塚はあらゆるテーマにチャレンジします。
あるときはサーカス団の舞台でした。
玉乗りの子ども、高足駄の男……。

本番まで1カ月しかありません。
しかし、なせばなる!
その強い意志を持てる者こそタカラジェンヌなのです。

1カ月で曲芸をマスター

研2(入団2年目)で星組に配属になってすぐのことでした。
『アラベスク』というショーの中にサーカスをテーマにした場面がありました。
各場面ごとに出演者と配役が書かれた一覧表が壁に貼られ、見ると私の役が「高足駄の男」となっていたのです。
「なに? 高足駄って」と思っていると、私だけでなく回りもざわざわとしてきました。
みんな口々に「どうしよう!」といっています。
そこでほかの人の役を見ると、玉乗りの子ども、一輪車の女……。

「え〜! これ一カ月でマスターするの?」

みんな口々に自分の役を見て叫んでいます。
当たり前のことですが、だれも玉乗りなどの経験者はいないわけです。

「できる!」が前提のジェンヌたち

宝塚は本当にいろいろなことができないといけないところですが、まさか玉乗りや一輪車に乗ることになるなんて思いもよりませんでした。
さっそく練習です。
高足駄とは、1メートルぐらいの棒を足につけて歩く、持ち手の無い竹馬のようなものです。
幸運にも私はそれほど苦労せずにトコトコと歩くことができましたが、苦戦していたのは玉乗りと一輪車の人たちです。
今でこそ小学校には一輪車があり、私の娘もあっという間に乗ってスイスイ走っていましたが、おとなになってから、それもそんなに加速するわけにもいかない舞台でです。

稽古場はたちまちサーカスの練習場のようになってしまいました。
玉乗りの人は横のだれかに手をつないでもらいながら、一輪車の人は壁を伝ってトテトテトテと……。

私の高足駄はマスターするのは早かったのですが、足に棒をくくりつけるときが大変。
どこか高いところに座って準備をしないと立ち上がれないのです。
袖に大道具がたくさん用意されているので、その中の高い所を見つけてよじのぼって準備するのですが、衣装のパンツの長さは通常の二倍。それをたくしあげて高いところによじ登ってのスタンバイでした。
転んだらおしまいで、起き上がれなくなるし、まっすぐバタンと倒れてしまうのですから、毎日毎日が恐怖との戦いでした。

舞台奥から玉乗りの人が、一輪車は下手から、高足駄は上手から、と舞台に出てきます。
そんな大混雑の中、音楽に合わせて、もちろんにっこり笑顔で。
何という劇団でしょう。
それがまた、初日には全員ができるようになるのですからすごいですね。

そして、にこやかに舞台をこなす

「なせばなる、なさねばならぬ何事も」
今、思い出すと大変だった舞台でしたが、私たちは「できない」とは全く思っていませんでした。

いつも「できる」を前提にしか考えていなかったのです。

もちろん「なせばなる」ことばかりではありませんが、最初から「できない」と思っていたらできることもできなくなりますから。どんなに困難な舞台も笑顔でこなす集団なのです。

「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」桐生のぼる著書より 
                      つづく・・・・

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