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Sakana AIが齎す日本のミライ


1.  Sakana AIとは?

2023年8月に米Googleの著名な2人の元研究者、リオン・ジョーンズ氏とデビッド・ハー氏が、東京を拠点とし設立した新AI企業。

同年8/17にX(旧Twitter)で発表されました。

リオン・ジョーンズ氏(左)とデビッド・ハー氏(右)

1)来歴

リオン・ジョーンズ氏
Googleが2017年に発表した生成AI革命のきっかけとなったと評価されている論文「Attention Is All You Need」(PDF)の8人の著者の1人。この論文では、後にChatGPTなどの製品開発の基礎となった深層学習アーキテクチャー、Transformerを紹介している。ジョーンズ氏は2023年8月に10年以上勤めたGoogleを退社した。

デビット・ハー氏
2016年にGoogle Brain入りし、機械学習などの研究に取り組んだ後、2017年にGoogle Brainが東京チームを設立した際、そのトップとして来日した。2022年にGoogleを辞め、Stability AIの研究トップに迎えられたが、2023年6月に退社した。

2)企業名の由来

企業名のSakanaはもちろん日本語の魚由来だ。「魚の群れが集まり、単純なルールから一貫した存在を形成する」というアイデアを想起することを目指しているという。

 両氏は、現在のAIモデルの限界は、建築物のような脆弱で変更不可能な構造として設計されていることからきていると米Financial Timesに語った。それに比べ、魚群のような自然システムは環境変化に適応し、環境の一部になるという。


2.  なぜ注目されているのか?

来歴でも記述の通り、リオン・ジョーンズ氏がとにかく凄い方なのです。
彼が属するGoogle チームは、2017 年の NeurIPS カンファレンスで発表した論文の中で、その "Transformer "と機械翻訳で記録した精度について論じました。

1)Transformer モデルとは?

Transformer モデルは、この文章に含まれる単語のように、連続したデータの関係を追跡することによって、文脈ひいては意味を学習するニューラルネットワークです。
Transformer モデルは、進化する一連の数学的手法 (アテンションまたはセルフアテンションと呼ばれます) を適用して、同じ系内にある隔たったデータ要素間の微妙な相互影響や相互依存関係を見つけます。

2)Transformer モデルで何ができるのか?

Transformer は、聴覚障害者などの多様な人々が参加する会議や教室で、テキストや音声をほぼリアルタイムで変換しています。また、研究者が DNA の遺伝子鎖、タンパク質やアミノ酸鎖を理解する助けとなり、医薬品設計を加速させるのに役立っています。

Transformer は、トレンドや異常検知、不正行為の防止、製造の合理化、オンライン レコメンデーションの実現、ヘルスケアの改善などに役立てることができます。
一般の人々も、Google や Microsoft Bing で検索するときは必ず Transformer を使用しています。

Transformerの設計は拡張性が高いことから、のちに多くの自然言語処理の大規模言語モデル(LLM)を生み出しました。例えば現時点でよく使われているテキスト系のジェネレーティブAIのGPT、BERT、T5などの基盤にはTransformerが用いられています。

因みにOpenAIが開発したchatGPTと連携したサービスを、ビジネスとして多くの企業や研究者によりさまざまな応用分野で活用されています。

ビジネス活用向けChatGPT連携サービスカオスマップ

chatGPTなどの生成AIをはじめ、ビジネスや生活のあらゆる領域で今後の活用が期待できる技術の根幹に携わっていたわけですから、単純にスゲーお方が日本に会社を立ち上げたってことです。
注目されない理由が見つかりません….


3.  なぜ拠点を東京に?

そこにはいくつか戦略的な理由があるようです。
東京に拠点を定めたのは、
 ①北米での研究者獲得競争を避けるため
 ② 国際的な都市であること。
  AI技術の研究や開発に適した環境が整っている
 ③高度な教育を受けた労働力があり、日本人以外の人材にとっても魅力がある

最先端の技術者が次世代AI開発を日本(東京)でやるというだけでもポジティブな話です。
いや、もうすでに今後の展開を予測する事態が起こり始めています。
それはこの先で説明致します。


4.  Sakana AIのミッション、ビジョン

Sakana AIは、チャットGPTなどとは違う仕組みの新たな対話型AI、云うならば生物の模倣(biomimicry)に基づいた柔軟で適合性の高いAIモデルを開発しようとしています。

もっと分かりやすく、魚や蜂を想像してみましょう。
魚は、群れに合わせて泳ぎ、時には大きな敵を追い払います。
蜂も同様です。全員で巣をつくり、餌を嬢王蜂に運びますが、天敵が来たら一斉攻撃です。
このように自然界にあるシステムは、その状況に合わせ対応します。

Sakana AIは、この考えをAI開発にも取り入れようというのです。
多数の小さなAIモデルを開発し、協力させ、複雑な結果を出力するという新しいアプローチ。
これはまさに、先程の魚や蜂のようです。

さらに面白いのは、このアプローチはものすごくチャレンジフルということ。
話題の大規模AIシステムの構築は、柔軟性もなく、あとから手を加えにくいという理由から、建築物に例えられます。

この本流に逆らうように、企業哲学や技術力を活かし、Sakana AIは、万能な生成AIの開発中。
ちなみに、テキスト、画像、コード、マルチメディアコンテンツの生成を目指していますが、具体的な製品やサービスのリリースはまだとのことです。



5.  事業の進捗

この記事を書き記した2024/2時点で会社設立から約半年が経つが、早くも大手企業とのコラボレーションを知らせるニュースが続々と報道され、元Googleの先端技術者というネームバリューの凄みを見せつけてくれています。

事業提携や資金調達に関する記事を時系列順に紹介します。

1)NTT、元Google研究者が設立のサカナAIと提携

日本電信電話株式会社(以下、NTT)とSakanaAI株式会社は、小型で多様なAI同士が協調するアーキテクチャの研究開発に関して、協力することを定める連携協定を締結した。

NTTとSakanaAIは、これまで培った自然言語処理技術やAIアーキテクチャの設計スキルに基づき、現状の大規模AIモデルの計算量が増大していることの課題に対処するとしている。

2)KDDI Open Innovation Fund 3号、Sakana AIに出資

KDDIは、2024年1月16日に有望なベンチャー企業への出資を目的とし、「KDDI Open Innovation Fund 3号」(運営者:グローバル・ブレイン株式会社、以下 KOIF3号)を通じて、生成AI領域における基盤モデルの研究開発を行うSakana AI株式会社(本社:東京都港区西新橋三丁目24番8号山内ビル3階、代表取締役:David Ha、以下 Sakana AI)に出資しました。

本出資を通じてKDDIは、データなどのアセットの提供を通じて研究開発を支援していきます。

3)AIドリームチーム「Sakana.ai」が45億円調達

グーグルの著名なAI研究者らが2023年に日本で設立したSakana AIは1月17日、シードラウンドで国内外のファンドなどから日本円で45億円(3,000万ドル)を調達したと発表した。

同社は対話型AIの基盤技術である大規模言語モデル(LLM)の開発で、他社が開発した小さなAIをいくつもつないで、巨大AIに匹敵する能力をもつ仮想のAIモデルを構想。この新技術はエージェントモデルと呼ばれ、開発コストを劇的に下げる可能性があり、巨額な資金が求められるAI開発競争に一石を投じる狙いだ。

Sakana AI
調達額:45億円
調達先:khosla ventures / みやこキャピタル / ジャフコグループ / 500 Startups / Basis Set Ventures / Learn Capital / KDDI新規事業育成3号投資事業有限責任組合 / ソニーグループ / NTTドコモ・ベンチャーズ / Lux Capital / Geodesic Capital / July Fund / ALEX WANG / Jeff Dean / Clem Delangue


4)AIクラウド利用に84億円 経産省、国内開発後押し

 経済産業省は2日、国内の生成AI(人工知能)の開発力を強化するため、コア技術となる基盤モデルの開発を支援すると発表した。開発に取り組むスタートアップや大学などを対象に、スーパーコンピューターを含めたクラウドサービスの利用料を補助する。  経産省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募していた「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」で、情報・システム研究機構や東京大学、スタートアップの「Sakana AI」(東京都港区)などの国内7者が採択された。

経産省によると、今回の支援スキームは、国が米グーグルからクラウドサービスを一括で調達し、支援対象に割り当てるという仕組み。  背景には、生成AIを巡る国際的な開発競争の激化がある。経産省は、計算資源の国内整備を待っていると基盤モデルの開発を加速できないという危機感を強めていた。そこで開発に意欲的なスタートアップや中小企業などを支援し、国産生成AIの開発力強化を狙うことにした。

経産省支援対象の一覧

この報道を受けて、5574 ABEJAの株価も急騰しましたよね。
当のABEJA側からは、「決定した事実はない」とコメント。


6.  結び

世界的にみれば、AIに対する規制も多く災いをもたらす存在として扱われ禁止されている国も少なくありません。

一方で、レガシーシステムの脱却に課題がある日本においては、
環境が目まぐるしく変化し、ビジネスなどに対する将来予測が難しいVUCA(ブーカ)の時代では、求められるシステム要件が次々に変わり、システムのアップデートが日々求められます。こうした状況の下でレガシーシステムを使い続けると、臨機応変に更新することができず、ビジネスの遅延を招くかもしれません。また、最新のシステムを導入していないことで互換性が失われ、クライアントなどが取引先を変更するリスクも発生するでしょう

そんな中で、
Sakana AIが開発する”自然からインスピレーションを得たインテリジェンスに基づいた新しいタイプの基礎モデル
どのようなメリットが考えられるでしょうか?

日本語対応で開発された最新AIを先んじて使うことができる
これを各企業、官公庁がうまく使いこなすことができれば、世界に後れをとっていた分野での躍進的な成長を遂げ、AI先進国にのし上がることができる。

「ものは試し」という言葉があるように
最先端のAIが実際に仕事や生活に馴染んでいく過程で「trial and error」を重ねて、やがては欠かせないものに発展すれば素晴らしいですね。
もしかしてどこでもドア~!みたいな未来型ロボットが身近な存在になるのが現実にあるかも!?

そんなSakana AIをはじめとしたスタートアップ企業が、今後の日本経済を盛り上げてくれることを期待したいと思います。


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