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#3「気付かぬストレス」

さとゆみさんの連載「今日もコレカラ」を読み、感じたことを書く。引用リプじゃおさまりきらない、グルグル余韻の言語化トレーニング。

20代の頃、会社勤めをしていたときに全頭に7箇所ほどハゲができたことがある。サイズはまちまちで1円から500円サイズまで。ストレスによる円形脱毛症と言われ、ストレスを受けている自覚が全くなかったから驚いた。

白髪と抜け毛とマリー・アントワネット【さとゆみの今日もコレカラ/第192回】


「そんなにつらかったなら、"つらい"って言ってくれれば良かったのにね…」


主を失った机を見ながら、上司がつぶやく。笑顔で元気いっぱいだった彼が、いきなり学校にこなくなって何日経つだろう。


今でこそニュースに取り上げられるようになったけれど、本当に、心を病んでしまう教師は少なくない。


花がしおれていくように、だんだん、だんだん弱っていくのではない。前日まで元気ハツラツに働いていた(ように見えた)人が、いきなり来なくなるパターンが多いように感じる。

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私が経験したうち、最もひどかったのは1年で3人が休職、8人が通院を余儀なくされた学校。子どもの指導にあたる職員は担任・専科・特別支援を合わせて30人ほど。何がつらいって、朝会・夕会・会議といった職員が集まる時間。管理職vs.職員(一部)の構図が仕上がり、怒鳴り声・罵声がとびかう。


じっと目を閉じてうつむき、管理職に浴びせられる暴言を聞く。朝会で"バトル"が始まると、心を無にして「教室で子どもたちと笑い合っている」数十分後の自分を想像する。

実家に帰省したとき、母から「あんた、3つも500円ハゲ(円形脱毛)できとるやん」と指摘された。後頭部だったこともあり、全然、気付かなかった。

驚く私に母は、「よっぽど、大変な状況なんやね」とつぶやく。母の悲しそうな顔を見て、ようやく自分がストレスにさらされている事実に気付いた。

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大学時代、同じ苦学生でなんやかんや励まし合った男友達がいる。社会人になって4年目ぐらいだったか。久しぶりに会った彼が、「実はここ最近、メンタルやられて休職してたんよ」と、鬱になったことを打ち明けてくれた。

彼の話によると、いつも通り働き、いつも通り帰宅し、いつも通りに夕食を食べて寝た。いつも通りだったはずなのに、翌日、いきなり起き上がれなくなったそうだ。

「人間って、想像するよりも格段に弱いと思うで」

ことの経緯を話してくれた彼が、私の目をじっと見て言った言葉が忘れられない。

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いきなり来なくなったあの同僚も、自分では「ストレスを受けている」ことが分からなかったのかもしれない。ストレスを自覚していない人にとって、「早く言ってほしい」との願いは、無茶な要求だろう。

だから、家族や友人、ときには第三者と話すって大切やなぁと思う。あと、"自分は弱い"って思っておいたほうがいいんかも。

無理しない、背伸びしない。つらいときはつらいって言う。泣きたいときは泣く。

「我慢せんくていいからね」

そう言ってくれる夫と結婚し、学校も変わり、いつの間にやらあの大きな500円ハゲは全てなくなった。


▼5月12日の午前7時ごろまで読めます。こちらもぜひ♪



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