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EP6.環境は人を育てる

当時の僕は安西監督ですら信用できないやさグレっぷりだったと思います。系列店のスタッフ達は僕らの事を野犬と呼んでいたそうです。

本店の環境の悪さはとてつもないものでした。

一階に客席とキッチン(3人でちょうど良い広さの割に熱源の多さと排気の弱さで冷蔵庫が15度とか、すぐ腐る、冷凍庫が10度すぐ溶ける)

2階に客席、ワインカーブ兼野菜貯蔵庫(すぐ腐る)

3階に客席、ストックスペース(無理くり冷蔵庫並べてるので排気熱でサウナ状態、冷蔵庫が15度とかになる、すぐ腐る)

夏場は地獄ですね、朝茹でた野菜が冷蔵庫保存で夜には腐ってた時はタイム風呂敷でも使われたのかと思いました。

キッチン内もめちゃ狭いので、どこにいてもシェフのリーチ圏内ですから、裏拳、キック、皿投げると攻撃の選択肢は豊富です。


営業しだすと暑さと狭さと心ぼそさで、通常のスタッフは泣く人、端っこで震える人とリアクション豊富な愉快な感じになります。

そんな環境なもので、元々はディナーとバータイム(食事ラストオーダー26時)のみで平日ランチはありませんでした。

震災の後チャリティーランチを1000円で、前菜、メイン、デザート、コーヒー付きと破格のメニューで始め、銀座のど真ん中でしたから、列を作るほどの人気に、、客数100名を超える盛況っぷり。(ここのキッチンなら30名ぐらいこなせば立派)

当時社員が3人とヘルプで全員寝れない上に仕込みも間に合わないのでボコボコにされていると聞いていた僕は、絶望感でいっぱいです。(シェフはちゃんと帰ります)

最初の一ヶ月ぐらいは大変ながらも、本店のスタッフよりシェフとの付き合いが長かったので、むしろ他のスタッフがギタギタにされてるのを見せつけられておりました。

一人バックれました。

シェフ「お前なんかしただろ?」

いえいえいえいえいえいえいえいえいえ!!!

なんでそーなるの!?

ここから先何人もバックれるのですが、その度都合悪いことは忘却していくシェフ。(会社に責められますから)

貴重な社員と人柱を失い、ますます地獄深くに進む我々。

再び寝れない日々、休憩も取れず、、新しくくるスタッフもすぐ辞めてしまう、ヘルプにくるスタッフも嫌な気持ちで帰る。見事な悪循環。

すぐに会社で問題になります。管理職のシェフは会議で責められたのでしょう。

ミーテイング後めっちゃ機嫌悪いシェフ。

「お前ら何時に来てんだよ!」

えっ、逆ギレ??笑

「休憩も取れてないって問題になってるから!休憩しろ!」

どういう感情??笑

「明日からランチタイムに一人30分休憩回さなかったら殺すから」

どういう感情???笑笑

次の日、、、

12時のピークタイムが落ち着き、、、、

シェフ「休憩誰からー?」

一同「。。。。。」

知っています、休憩なんて回した日にはディナーの準備も間に合わないし、ランチタイムすら地獄になることを、、

シェフ「休憩しねーのかてめーら!!」

どぉーーーーん!!

作業台をぶん殴るシェフ

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幕の内一歩ばりに良い音させます

僕「休憩頂きます!!!!」

猛ダッシュで休憩に行きました。

30分後、恐る恐る戻ると、、、

先輩がしばかれております。第2のピークが来てます。戻りずらい。。空気悪い。。

この日から我々は休憩をまわすためだけに徹夜を連日するハメに(意味不明)

シェフのフォローをしておきますと、1000円のランチでも一切妥協し無かった結果なんです、出来合いのもの仕入れて、簡単な料理にすれば楽になったものの、その選択はしませんでした。

食材は安価なものしか使えませんが、全てこだわって作ってたので、その時の経験はとても役に立っているので、今ではいい経験と思います。ありきたりな食材を、足し算して美味しくしていく技術がここで養われました。(最近の料理人はこのスキルがない人が多い気がする)

こんな環境でやってると、脳みそフル動員で考えて仕事するようになり、減量中のボクサーの如く研ぎ澄まされて行きます。(段取りめちゃめちゃ考えられるようになる)

ポテンシャル低めな僕もそれなりのファイターに気づいたらなっていました。(細かなエピソードはスターウォーズ並みにありますが割愛)

辛い、どやされる日々もなんとか2年ほど耐え忍び、少し心に余裕も出てきたある日、以前の研修先で知り合った同世代の人から連絡が、、「うちの立ち上げからやってるスタッフが辞めることになったんで石崎さんどうですか??」

心が揺れます



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