町内会の今後について

1.     はじめに

本レポートでは、町内会について、存続論(あるいは文化論)と解体論の二つの立場があることを前提に、どちらの考えを支持するのかについて、私自身の考えを記述する。

結論、私は前者の町内会存続論を支持する。私が町内会は存続するであろうと考える根拠は三つある。第一に、町内会はコミュニティとして重要な役回りをしているということ。第二に、町内会は組織として解体しにくいリクルーティングが行われているということ。第三に、町内会は行政を補填する機能を持ちあわせているということの以上三点である。


2.     町内会存続論を受け入れる根拠

2.1 コミュニティ論から

近代化とは合理化を推し進めるものだった。実際に、人を高密度に集約させることで経済効率を上げ、それらは結果的に都市化につながった。人々の結合を考えてみても相互扶助を基本とした全人格的な結合から、金銭を介したやりとりを基本とする目的合理的な結合へと変容していった。社会保障や金融制度が高度に発達したことでこれらの結合が可能になった。これらには複雑な人間関係から解放されるとのメリットもある一方で、核家族を加速させたるといった弊害ももたらした。これらの文脈の中で町内会は、全近代的として敬遠されてきた背景がある。私の家族も決して例外ではなく、実際に近所付き合いを極力簡素化しようとの母の意向により、町内会に入会しなかった。

「わたしたちが単なる群居を超えた社会的共同生活をもつのは、地域社会での直接的・間接的な関係からの何らかの利益が得られる・得られる見込みがるからである」(森下・義亜 2012:379)としている。社会的な制度やシステムか拡充していく中で、町内会の存在意義が縮小していることも確固たる事実である。とはいえ、解体論に関しては懐疑的な立場を私はとっている。言わずもがな、少子高齢化は現在日本が直面している社会問題の一つである。定年により、会社といった社会(組織)から脱退することになり、個人が社会的な存在であるとの意味付けがしにくくなる。実際に定年後の高齢者の社会的孤立の問題は年々深刻化している。これらを考えたときに、町内会は有効なコミュニティとしての役義を果たすと考えられる。「コミュニティはその連隊の本質・基礎的部分であり、そこから全てが始まり、派生し、私たちに必要不可欠な相互のつながり、帰属、そして意味の感覚を与える。またそれは解放性、包摂制、意義深さを示唆し、温かい語感をもつ」(森下・義亜 2012:376)とのバウマンの主張からも社会的な個人にとってコミュニティがいかに重要であるかが理解できる。したがって、地域コミュニティとして町内会は機能しており、高齢者にとってはそれらが唯一の社会的なコミュニティになりうることが予想されるために町内会は存続すると考えられる。


2.2 町内会のリクルーティング

ただ、町内会が地域コミュニティとして需要があるために存続しうるという論には筆者自身も限界を感じる。本章では、町内会のリクルーティングについて言及する。町内会が解体に向かいにくい理由として役職担当の選出方法に順番制を導入していることが挙げられる。「自発的に役割を担う会員が少ない中、特に班長は順番制で確保され組織は安定する」(小山 2011:73)と小山の主張からもわかるように、町内会の特異なリクルーティングシステムにより少なくとも町内会が解体する事態には陥らないのではないかと考えている。


2.3 行政の補填組織としての町内会

大阪市のHPには、「自治会・町内会は、市民の皆様の身近な存在として、住みよいまちづくりと地域の活性化に向けて様々なコミュニティ活動を展開しています。大阪市にとって、自治会・町内会は市民協働のパートナーとして、大切な存在です。また、自治会・町内会はおおむね小学校区を範囲として形成されている地域活動協議会において中心的な役割を担っています。大阪市ではその活動を応援するための取組を行っています」(大阪府 2022)との記述があり、横浜市中区のHPにも「「元気な地域づくり推進事業」は、日常生活圏において、自治会・町内会などの地域の団体が集まって、話し合いをしながら課題解決を図り、地域のみなさんが、自分たちが望む地域をつくっていく取組を支援する事業です」(横浜市中区 2022)との記述がある。これらから、行政が行き届いていない範囲を補助する役割を担っており、行政の力強い後ろ盾があることがわかる。

また、異なった観点として、先斗町の事例を紹介する。先斗町で先斗町まちづくり協議会が主体となり、まちづくりや町並み保全の取り組みを進めている。この組織の概要を見てみると、立誠自治連合会・立誠まちづくり委員会の下部組織として位置している。また、組織の構成の内訳としては7つの町内会から構成されている。先斗町の日本のまちづくりの中でも優れたまちづくりのひとつと言えるが、町内会はその根幹を担っているのが実情である。


3.     結論

以上述べたように、町内会はコミュニティとしての需要があるということ、順番制により安定した人材の確保が可能であるということ、行政の補填組織として中央の後ろ盾があるということ、まちづくりなど社会的にも重要な役回りをしているということを拠りどころとし、私は町内会の存続論を支持する。(2084字)


参考文献
小山弘美, 2011, 「町内会・自治会の変容とその可能性」『都市社会学研究』71-88.
堀口正, 2020, 「日本における住民組織の役割変化に関する研究」『立命館法学』387/388 308-338.
森下・義亜, 2012, 「コミュニティ論からみた地域社会参加の構造的課題:札幌市の事例から」『北海道大学大学院文学研究科』12:375-289.
大阪市, 2022, 「大阪市は自治会・町内会におけるコミュニティ活動を応援しています」(https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000538944.html, 2022年7月7日にアクセス).
横浜市中区, 2022, 「地域のまちづくり」(https://www.city.yokohama.lg.jp/naka/kurashi/kyodo_manabi/kyodo_shien/02chiiki.html, 2022年7月7日にアクセス).
先斗町まちづくり協議会, 「HISTORY」(https://www.pontocho-kyoto.com/pages/1112362/page_201707061735, 2022年7月7日にアクセス).


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?