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新書「最適脳」の読書感想文・レビュー

「スマホ脳」や「ドーパミン中毒」に続く系統の本。悪く言えばベストセラーに乗じてカバーデザインを合わせました的な本。

スマホ依存からの脱出のために補足書籍として読んでみた。

内容

だが、ほとんどの部分はすでに他の本で書かれていることを自己啓発チックに浅くまとめただけの内容だった。内容が表面的で浅く、あまりに人間というものを単純化し過ぎており、再現性に欠ける気がした。一口で言うといかがわしい。

「天使のカクテル」と「悪魔のカクテル」という言葉が使われているが、まるでプログラミングや料理のように体内ホルモンを生成して、お手軽に幸福を「化合」しよういうかのようなテーマが鼻につく。

本書で繰り返されるのはテクニック、テクニック、ひたすらにテクニックだ。本書は最近の幸福科学のトレンドに乗っているだけで、科学の皮を被ったただの自己啓発書という趣が強い。

ドーパミンという言葉の用法もいまいちで意味が分からないレベルに達している気がした。

だが半分ぐらいは正しい方向を向いているとは思う。それはなるべくジャンクな刺激を避けて、人間の自然な姿に立ち戻り、本来の喜びを取り戻そうという大方針だ。その分だけ「思考法を変えましょう」のような昔ながらの自己啓発書よりはマシだろう。

スロー vs クイック

本書を読んで得られる着想もあった。決して全ての刺激が悪いわけではなくて、ジャンクで即座に得られる刺激や快楽は基本悪とし、すぐには得られないスローな刺激を善としているところだ。(本書では造語で「クイック・ドーパミン」「スロー・ドーパミン」という書き分けがされている)

冷水浴

あとはアメリカでは冷水浴が流行の兆しを見せているらしいことを知った。日本では銭湯ぐらいでしか冷水浴ができる場所がなくて、温度もそこまで冷たいものがないが、もっと気軽に冷水浴ができる環境が整ってくれると良いな。「ドーパミン中毒」にも冷水浴のことが書かれていたし、本書にも書かれていたというのは良い重なりだった。

Awe体験

燦々と輝く夕日に照らされたり、偉大な自然に触れ合う経験を本書ではAwe体験と呼び、人間が経験する体験の中でも最上位のものとして位置付けている。これは納得できる。

自分もかつて瞑想の訓練でマインドフルネス状態が最高に高まった状態で船に乗り、どこまでも果てしなくきらめく水面を目にした時に「自分はこの瞬間のために生まれて来たのかもしれない」とさえ思った。

いまでもふとした瞬間に太陽に照らされたり、映画の中でも広大な海のシーンが出てくると心が洗われる気分になる。

SNSはフェイクの世界

後から思い返すと、この言葉も力強かった。

SNSはフェイクに溢れている。たくさんの「いいね」が通貨のようにやり取りされているが、そんなところに真実の人生はない。

偽りの世界を生きるのをやめて「こちら側」の人生を生き始めようではないか。そんなメッセージだと自分は解釈した。

本来SNSがそこまで悪いものだとも言えないが、スマホ中毒気味、通知依存気味だった自分には効く薬だ。

SNSや通知の中に「真実のもの」は存在しない。それはドーパミンの作用が生み出す幻だ。

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