見出し画像

2024 上半期読んだ小説

早いもので2024年も半年が過ぎました。

読んだ本の振り返りはまとめて年末にしようと思っていたのですが、半年も経つと記憶も曖昧になってきた気がするので、備忘録がてら読んだ本を思い出しながら書いていきます。

1.なれのはて(加藤シゲアキ)

加藤シゲアキさんの小説を読むのは、昨年読んだ「オルタネート」に続いて2作目でした。「オルタネート」のザ・青春小説の雰囲気から一変して、少し暗めの雰囲気の作品ですが、過去と現代がリンクしていき、収束していく様は読んでいて清々しいものでした。2作読んだだけですが、テイストが異なる作品を描ける著者の他の作品やエッセイも読んでみたくなりました。 

2.ある閉ざされた雪の山荘で(東野圭吾)

大どんでん返しを期待すると思うほどの期待は超えてこないかもしれませんが、綺麗にまとまった作品で、細部まで作り込まれています。映画は正直突っ込みどころ満載なので、映画を観た方には是非原作も読んで欲しいです。

映像化で言うと、綾辻行人さんの「十角館の殺人」が映像化されたと言うことで観てみたのですが、なるほどこう表現するのかといい意味で驚きました。こちらは再現度も高く、原作を読んだことのある方も読んだことのない方にもおすすめできるので観ていない方は是非観てみてください。

3.名前探しの放課後(辻村深月)

ここ数年個人的にどハマりしている辻村深月さんの比較的初期の作品です。

辻村さんの作品は他の作品とのリンクが多く、特にこの小説を十二分に楽しむには「子どもたちは夜と遊ぶ」、「ぼくのメジャースプーン」と順に読み進め、その次に読むのがおすすめです。あとはできればどこかで「凍りのくじら」も読んでおくとより楽しめます。

本作も含め長編作品が多いのですが、サクサク読めますし、何よりどの作品も読後感が最高なので、間隔を空けずに読んでいただきたい作品達です。

実はそんな憧れの辻村さんに昨日初めてお会いすることができました。まだ余韻が抜けないのですが、人柄も暖かい素敵な方でした。

これからもずっと応援していきます。

4.成瀬は信じた道をいく(宮島未奈)

成瀬シリーズの2作目です。1作目の「成瀬は天下を取りにいく」は少し前に本屋大賞を受賞され話題になっていました。とにかく主人公の成瀬が最高すぎと言うほかないので、何も考えず読んでください。成瀬に会えてよかった。

5.変な絵(雨穴)

変な家の作者の作品で、友人に借りて読みました。小説かと言われると違う気もするのですが、謎解きが好きな人は好きかもしれません。「変な家」の映画の方はB級映画感があってある意味面白かったです。


6.月と六ペンス(サマセット・モーム)

100年以上前に書かれ、大ベストセラーとなった小説です。
原書でどのような表現かは分からないのですが、日本語で読んでいても心理描写や表現が素晴らしく、描かれる情景もありありと浮かんできます。特に最後のシーンの描写が圧倒的で好きでした。著者のエッセイ「サミング・アップ」は毒が効いていておすすめ。

7.SPRING(恩田陸)

天才を描く天才、恩田陸さんの作品で、今作で描かれるのはバレエの天才です。恩田陸さんの描く天才たちは皆魅力的ですが、今回も例に漏れず魅力に溢れた天才が描かれます。天才を取り巻く人々から多角的に描写されており、バレエを知らずとも踊りが見えてきます。天才は比喩の使い方が独特だなと今作を読んで感じました。
恩田陸さんが描く天才については「白の劇場」に収録されている朝井リョウさんのエッセイで分かりやすく書かれているので、こちらも是非。
「SPRING」は単行本自体の仕掛けも面白いので、是非手に取って確かめてみてください。

8.冷たい校舎の時は止まる(辻村深月)

辻村深月さんのデビュー作。
学校における人間関係、SF要素、ミステリなど著者のエッセンスが詰まっています。登場人物が多いのですが、それぞれの過去の話などもあり、感情移入してしまいます。
新川直司さんによってコミカライズもされているようでそちらも気になっています。

9.ロードムービー(辻村深月)

「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフ短編集で、登場人物たちの過去や未来の話が描かれます。彼らにまた会えるのはもちろん嬉しいのですが、ところどころで散りばめられるミステリ要素も堪りません。単独の作品としても楽しめるのですが、やはり「冷たい校舎〜」を読んでから読んだほうが数倍楽しめるので、その順番で読んでください。

10.ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)

動物学者である著者による本屋大賞翻訳部門第一位を獲得した小説です。
ミステリを読みたいと思って手に取った本作ですが、生き物や自然に対する描写が素晴らしく、まるでそこにいるかのような感覚になりました。ミステリとしても最後の最後まで惹きつけられるような構成で、最後の展開にも驚かされました。

映画化もされておりNetflixで配信されています。そちらはまだ観ていないのですが、まずは原作で読んで自然の描写を想像しながら読むのがいいと思います。

11.ジヴェルニーの食卓(原田マハ)

福島で開催されていた印象派の展覧会に行く予習として「モネのあしあと」に続けて読みました。表題作であるジヴェルニーの食卓の他3編が収録された短編集です。著者の作品はこれまでもいくつか読んでいて、アートに関する史実に基づいたフィクション作品が多いのですが、読む度にどこかへ旅した気持ちにさせてくれます。今作は表題作目当てで読んだのですが、マティスとの思い出を回想しながら語る1作目の「うつくしい墓」が特に好きでした。

展覧会に行くともっと背景を知っていたら楽しめるのにと思うことが多いので、アートの歴史も学んでいきたいと思う近頃です。

12.闇祓(辻村深月)

またまた辻村深月さん作品です。
意外にも著者初のホラー長編作品です。辻村さんは学生時代の美しい部分や人によっては暗いと感じる部分をこれでもかと描いたかと思えば、本格的なミステリ、恋愛感や価値観を描く作品まで非常に幅広い範囲で読者を刺してくる印象です。故に、読んでいて温かい気持ちになる白辻村、人間の暗い部分を描いた黒辻村と言う、作品を分類する言葉まで生まれています。
さて、今作は黒辻村作品で、読んでいてしんどくなる場面も多かったですし、かなりゾクゾクとさせてくれるシーンも多くありました。フィクションではあると分かっているものの身近にあるような話で怖さを感じました。

個人的に黒辻村と呼ばれる作品は大好きなので、これからも楽しみにしていきたいと思います。


と言うことで上期に読んだ小説振り返りでした。

作品毎のボリュームの違いはありますが、月2冊ペースでいい具合に読めていたので、下期もこのペースで読んでいけたらなと思います。

上期は辻村深月さんの作品が多かったですが、まだまだ読んでいない本も多いので、下期もいくつか読んでいきたいですね。

この記事が参加している募集

#読書感想文

190,929件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?